クルセイド・ワラキア #5 後編
◇これまでのあらすじ:恐るべき論理聖教会の攻城要塞「XЯuS4deR(クルセイダー)」がネオワラキアの北東へと迫る。南米大陸上空でオムラ社との戦闘ミッションを終えたブラックヘイズも、ネオワラキアの地へと降り立った。カタナ社のエージェントとして、論理聖教会の論理十字軍に参加するために……◇
2019-02-13 21:38:33◆ニンジャスレイヤープラスより【クルセイド・ワラキア】#5 後編◆ pic.twitter.com/YgtSFIsKkT
2019-02-13 21:39:37『コンマ1秒、いや、可能ならばコンマ2秒、論理トリガの反応速度を上げてくれ。俺の望みはそれだけだ。理論上は可能だな?』『可能です。厳密すぎるIF THENに全体的修正を施します』アキナは限られた時間の中、ネット射出リミッタ、および神経接続エメツフレームとの反応速度に調整をかけてゆく。 0
2019-02-13 21:43:29『……待ち時間が惜しい。今回の作戦についてのブリーフィング資料を』『これです』直結中のアキナからブラックヘイズへと、作戦資料と戦略地図がIRC送信されてゆく。 0
2019-02-13 21:43:36論理聖教会は、秩序破壊者たる悪魔の化身、すなわちブラド・ニンジャによって支配されたネオワラキアの地と、その堕落民を徹底浄化するため、今季の十字軍を編成し、またそのために各メガコーポに戦力の供出を求める。各メガコーポとも、これには少なくともニンジャ戦力を1ないし2含むべし。 2
2019-02-13 21:46:29今回の十字軍骨子は以下の通りである: ●使い捨てニンジャ部隊によるドラクル城の直接攻撃(陽動、撹乱) ●エメツ鉱山都市プロイェスティを論理十字軍により制圧 ●デミ太陽球システムの起動による吸血鬼ニンジャの無力化 ●シュマズ社本社社屋の包囲殲滅 3
2019-02-13 21:49:04下劣なる吸血鬼ニンジャどもにKILL-9コマンドめいた正義の鉄槌を振り下ろすべく、カタナ・オブ・リバプール社が論理聖教会のために無償提供した試作型水素プラズマ式デミ太陽球システムを、移動要塞「XЯuS4deR」の切り札として搭載する(カタナ社に論理の祝福あれ)。 4
2019-02-13 21:51:11このデミ太陽球システムがあれば、昼も夜もなく半径数十キロを陽光の如き光で照らすことが可能である。そしてこの光と熱は吸血鬼ニンジャにとって致命的であり、その再生能力を著しく阻害することが、カタナ社施設内で既に実証されている。 5
2019-02-13 21:53:24無論、この規模のデミ太陽球の維持には膨大なエネルギーを要する。論理十字軍はネオワラキアの北東部より秘密裏に侵攻。プロイェスティのエメツ・プラント群を確保し、そのエメツ反応炉ケーブルを「XЯuS4deR」に接続。そこに搭載されたデミ太陽光発生装置の動力源とする。 6
2019-02-13 21:55:32各メガコーポの戦闘部隊は、プロイェスティ防衛網の粉砕と突破を行い、その後はXЯuS4deRの護衛をつとめる。吸血鬼ニンジャ、バイオウルフ、および、プロイェスティの堕落市民からの反撃に備えよ。なおこの作戦においては、ベータ級の市民殺戮許可とデジカルマ免罪符が発行される。 --MORE--(49%) 7
2019-02-13 21:59:09……ニューロンに大量の文字と画像が流れ込んできた。ブラックヘイズは作戦資料と戦略地図を読み進める。『これが最初にアタックする第4エメツ採掘場か。…… 外見はまるでサッカースタジアムか何かだな。懐かしいものだ』『フットボール、お好きですか?』『昔の仕事を思い出した』 9
2019-02-13 22:04:03『スタジアムで仕事を?』『リョウゴク・コロシアムの暴動鎮圧作戦に参加し、無線LANウイルスで頭がイカれたフーリガンを数百名ほど殺し、会場にいたオスモウ・テロ組織の中核セルを押さえた』ブラックヘイズは眉一つ動かさず返した。『リーグのスモトリには傷一つつけなかった。そういう契約でな』10
2019-02-13 22:07:46『さすがは、プロフェッショナルですね。あと1分ほどで、整備終わります』『ム……』追補資料を読みながら、彼は眉根を寄せた。『どうしました?私のハンダゴテが、何か不快な電子ノイズを与えてしまいましたか……?』『使い捨てニンジャ部隊。こいつらは、どういうプロセスで集められている?』 11
2019-02-13 22:10:15『論理聖教会のアイアンフォージド=サンが所属を隠し、ネオブカレストで傭兵たちをかき集めたそうです。ドラクル城の宝物を盗み出すためのアタックチームという名目で……』『プロとは呼べん、傭兵以下の連中か』『アッハイ、そうなりますね』アキナは整備を行いながら、続けた。 12
2019-02-13 22:13:02『どの暗黒メガコーポにも属さないサンシタや、無名のアウトローニンジャ、頭のおかしい社会不適合ニンジャばかりだそうです。ですから、彼らの生死を気遣う必要はありません。ブラックヘイズ=サンの任務は、あくまでもプロイェスティの制圧とXЯuS4deRの護衛だけです』 13
2019-02-13 22:15:16『……そうか』『何か、気になる点がありましたか?』『いや、大したことではない』ブラックヘイズは小さく頷いた。指先とニューロンが、十年前のカラテの熱を帯び、チリチリとひりついた。 14
2019-02-13 22:16:54彼はもう一度、そのファイルを脳内UNIXで確認した。使い捨てニンジャ部隊構成リスト。アイアンフォージド。ソリチュード。スナブノーズ。ツインテイルズ。オー・オー。セルソード。ダイヒョウシャ。スミソニアン。そして……サツバツナイト。 15
2019-02-13 22:17:55放送終了より一時間が経過。IRCネットワーク上には、ネオワラキアの君主ブラド・ツェペシュを讃える声が溢れていた。その洪水めいた文字の流れは、彼のニンジャ動体視力をもってしても追いきれぬほどであった。そして人々の声は、彼自身のカリスマ性にのみ向けられたものではなかった。 17
2019-02-13 22:22:04『スゴイ!』『ネオワラキアの民で良かった!』『私もネオワラキアに亡命したいです!』『ヴァンプゴスを見直した!』……暗黒メガコーポの支配と論理聖教会の抑圧に対して不満をくすぶらせる者は、決して少なくなかったのだ。 18
2019-02-13 22:24:08そして彼ら、抑圧に不満を持つ者たちは、蘇った護国の英雄ブラドとネオワラキアこそが、暗黒電子支配への叛乱の旗手になるのではないかという希望を抱いたのである。「IRC-SNSの力、これほどまでとは……!やはりケイトー・ニンジャ=サンの見立ては確かであった。いや、それ以上の戦果だ……!」 19
2019-02-13 22:25:55「これで、余のネオワラキアに敢えて手を出そうと考える者はいまい……!」ドラクル城、尖塔の頂きにある玉座の間。大理石の広間を歩くブラドの手には、携帯IRC端末が握られていた。彼の眼差しは今、窓から見える領土ではなく、IRC端末に流れる無数の文字列にのみ注がれていた。 20
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