ローズ・ロゼシア・ストロベリー〜推理(物理)で解決しちゃダメですか〜

詩織子 @cyan0401

あれが先生ではないと？「胴体を中心にひどく焼けていた。顔は念入りに焼かれていたしね…。だからこそ聞くよ。あれは先生だった？」先生も同じことを言っていました。本人と断定できないなら、二つ考えろと。一つは、本人。もう一つは、成り済まされた他人。

詩織子 @cyan0401

「少なくとも、今はそう思う」服装も、腕時計も、最後に見た先生のものでした。背丈もおそらくは…。「そうか…」天野さんは難しい顔で黙り込みます。「先生はまだ生きていて、そして彼が殺したと考えているのね」うわあああ！どうしてわたしはオブラートに包んでモノが言えないんですか！

詩織子 @cyan0401

天野さんはギクリとした顔をします。表情が出やすいですね、この人。「…ごめん。そういう可能性もあると思って」「怒ってはない。だけど、先生はそんなことをしない」いくらクズでゲスでお金に汚くて人使いが荒くて殺しにくるような人間が多数いるような、どうしようもない人ですが、人殺しだけは

詩織子 @cyan0401

しないと、堅く信じています。だからこそわたしは先生を信頼し、背中をついていくのです。「僕も失礼なことを言ったね」なんかこのままだとわたしの部屋までついてきそうなので、一度外に出ました。潮の香りがします。はるか下の海上を眺めながらふと思いました。なぜ焼かれたのでしょう？

詩織子 @cyan0401

死体が見つかりたくなければ海に捨てればよかったのに。なぜあんなことを…？このメアリー号は乗客添乗合わせ五千人を乗せられます。ただ一人消えたぐらいではすぐに犯行は発覚しないはず…。理由があったのでしょうか？今のわたしには分かりませんが…。

詩織子 @cyan0401

「君の雇い主は」うわまだ話しかけてくる…。わたしもう疲れました…。「何か、こう、怨みを買うようなことは？」「数えきれないわね」いやマジで。トラブル王選手権あるなら確実に十位には入ります。わたしも何度か頭を下げましたし、何度か東京湾に沈められかけたり、内臓売られかけました。

詩織子 @cyan0401

なんでこいつ先生についていくの？

詩織子 @cyan0401

「…そういう、怨みを持っている人が船に乗っているとかは？」「あなたは五千人もの人を把握できるのかしら」なんで素直に『分からない』と言えないのでしょう。この天野さんという方、鈍いのかぜんぜん態度変えませんけど怒ってもおかしくないですよ。「できないね。それに、調べ上げるツテもない」

詩織子 @cyan0401

早くも詰まったみたいな顔してます。早すぎでは。この船内でも先生は知らぬところでトラブルを起こしてそうですし、まだ辿る道はあります。でもこのまま詰んだ雰囲気にして天野さんと離れられないでしょうか。わたしならやれます、1、2、「ここにいた！」新しい登場人物が！？

詩織子 @cyan0401

やめてください！一度に出て読者が把握できると言われているのは八人、そしてわたしが対応できるのは一人までです！無理！海に落ちたい！「あなたは…先程のスタッフさん」いいぞ！天野さんが応対してください！「女子C客室を担当している、泉原海花(うみか)です。…心配で探しました」「心配？」

詩織子 @cyan0401

「ええ」泉原さんは睨みつけるように天野さんを見ます。「こんなところで、そちらのお嬢さんと何をしているのですか？」「え…お話を…」「どのような？ 先程、探偵と言っていましたが…亡くなられた方のお連れ様に近づく口実ではないかと思ったのです」「……」天野さんは察したようだ。

詩織子 @cyan0401

「えー…と、つまり、傷心した少女に近づくふてえ野郎だと？」まあ事実ですね。「いいえ…あなたが殺人犯でしょう？ そしてお連れ様も口封じで海に落とすつもりだった！」泉原さんは推理ドラマよろしく天野さんを指差し、天野さんは硬直していた。うわ、うわあああああ！！ややこしくなったぁぁ！！

詩織子 @cyan0401

先生ー！先生助けてー！そもそもそれが事実だとしたら犯人vsわたし・泉原さんになり、ステージはこのデッキ！口封じで仲良く海にドボンです！それ考えているんですか！？考えてないですよね！目がマジだもん！先生ー！！生き返ってください！

詩織子 @cyan0401

そもそも海は好きではないんです。ヤのつく自由業の人たちにより海外に出荷されかかったことがあるので、先生の世話をしている間は良かったのですが今になってじわじわとトラウマが蘇りました。吐きたい。でもなんとかしなければ…！「待ちなさい」わたしは言います。

詩織子 @cyan0401

「天野さんとわたしは、ここに来るまで何人かの目に触れている。そこでわたしが消えたら真っ先に疑われるのは彼よ。人の目を気にするそぶりはなかった。だから、わたしを殺す気はないと信じる」日常でも先生以外は信用してませんが、それはそれとして。泉原さんはへなへなと腕を下ろしました。

詩織子 @cyan0401

「では、その人は犯人でないと？」「それは分からないわ」「違うよ！？」知らないフリして先生焼いたかもしれないし。「…先生は？」「…はい。ひとまず、安置できる場所へ。それで、花園様を探してたのです。柏尾様のご同行者ですので」「何の用？」「船長から、お話が…」……。えっ、何それこわい。

詩織子 @cyan0401

続く？

詩織子 @cyan0401

極度の口下手かつ他者恐怖症のノバラちゃん＋極度の無神経かつパーソナルスペース激狭の天野くん＋極度の正義感を持つ泉原さんの三人のすっとこどっこいな話ですかね……極度のクズの先生の死の真相をめぐる……

詩織子 @cyan0401

無理無理むーりー！！なんでみんなわたしをそっとしてくれないんですか！死者を悼む時間ぐらいください！とは言えず、引きずられるように応接室に連れていかれました。そこには暗い顔をしたおじさまたちが四名。うわ怖。「突然のお呼び出し、申し訳ありません。…その男性は？」不審げに天野さんを

詩織子 @cyan0401

みやります。まあそうでしょうね。「知り合い。同席を許してもらえる？」許してもらえなかったら帰りますけど。知らない人だらけで混乱したわたしは、多少会話をした人でも連れて行くぐらい気が動転していました。無理でしょこんなの。

詩織子 @cyan0401

「まあ、良いでしょう…」ここまで付いて来て帰れとは言えないのか、おじさま方は早々に折れました。というか、天野さんに構ってられる余裕がないのではないかと思います。わたしたちはソファに座ります。ふわふわです。「さて、話なのですが…」あ、多分このヒゲモジャさんが船長ですね。

詩織子 @cyan0401

「陸に着くまで…いえ、この旅が終わるまで、柏尾様が亡くなられたこと…黙っていてくださいませんか？」「…は？」「…えっ」わたしと天野さんは同時に疑問を口にしました。「どういうつもり？」「その…このメアリー号のオーナー様に奇妙な指令を出されていまして…」なんとも歯切れが悪いですね。

詩織子 @cyan0401

「『この船で起きる事件は、陸に着くまで隠匿しろ』と」「……」先生はどのような依頼を受けたかを思い出します。『この船で起きる事件を解決してほしい』。…つまり、どういうことですか？オーナーは殺人事件が起きることを想定していた？

詩織子 @cyan0401

わたし達はいくつか会話を交わしましたが、よく覚えていません。気づいたらふらふらと船上プールの場所まで来ていました。女子C客室からだいぶ離れてしまいしたね…。「どういうことだろう」まだいたのこの人！？「ノバラさんはどう思う？」いや…わたしは帰りたいですけど。

詩織子 @cyan0401

「愉快な気持ちではないわね。わたしは恩人の死をこの素敵なクルーズが終わるまで隠さなければならない」しかも知らない人達の中で、ひとりで。陸に戻ったところで知り合いはいないんですけど。「だけどあの人たち、こうは言ってなかったーー犯人を捜す、とは」「…まあ警察じゃないからねえ」