ローズ・ロゼシア・ストロベリー〜推理(物理)で解決しちゃダメですか〜

詩織子 @cyan0401

「他の客が同じ目にあうかもしれないのに？ そしてこうも言ったわーー手荒な手段は避けてくださいと」あ、割と覚えていますねわたし。「まるで『この事件をわたしたちに解決して欲しがっている』みたい」「……」わたしは孤立無援です。ならば、この青年を利用してでも犯人を暴きます。

詩織子 @cyan0401

わたしから先生を奪う罪の重さを、分からせなければならないのです。身をもって。「先生は、乗船前に奇妙なことを口にしていた」おそらくは、オーナーはわたしたちーーいえ、「彼ら」であそぶつもりなのです。「『同業者が多い』」「同業者…？」そう、ファンタジーのような扱いの職種。

詩織子 @cyan0401

「……探偵が、この船に集められている」 収集つかないんですけど続く？

詩織子 @cyan0401

わたしたちは今、交流ルームと呼ばれる広い部屋に来ています。いわば、ドリンクバー付きのネカフェみたいなものです。夢も希望もないですね。わたし早く部屋に帰って先生との思い出に涙しながら眠りたいのですが、うまくいきませんでした。隅の方のテーブルで、わたし、天野さん、泉原さんが座って

詩織子 @cyan0401

います。うわぁぁぁ合流してきているぅぅぅぅ！！なんで！？泉原さん仕事は！？「私、午後から休みなので」永遠に仕事してください！などとは言えず、わたしはひきつる顔を全力で隠しながら頷きます。「その探偵が集められたというのは、今はどうでもよくないですか？」無神経！泉原さん無神経！

詩織子 @cyan0401

「そうですね、柏尾さん殺しの犯人について考えなければ」待って、天野さんも無神経！被害者の身内の前やぞ！えっ、皆さん船内に渦巻く陰謀とか気にならないんですか？…殺人事件の方が比重としては重いですね。本題とは離れた場所が気になるのがわたしなので…。わたしはただ黙ったままです。

詩織子 @cyan0401

「柏尾さんは、誰かに恨まれていたなどは？」「それがかなりあるようで」天野さんが勝手に話してくれるのは有り難いですね。「なるほど…。歓迎パーティーが昨日ありましたよね。出港以後、最初に船客たちが集まる時ですその際には？」あら…。泉原さん、かなり優秀です。そうでした。

詩織子 @cyan0401

昨日の夜は歓迎パーティーがありました。先生は燕尾服、わたしは灰色のパーティードレスを着ました。『暖色を着ればいいのに』と散々先生に言われましたが、わたしは目立ちたくなかったのです。その際に、なにか…。なにか……。先生にしては珍しくトラブルを起こさなかったなあ…。

詩織子 @cyan0401

あっ。でもなぁ〜、これはなぁ〜。「何か思い出しましたか、ノバラさん」そういうところは過敏ですね、天野さん。はぐらかそうとしましたが、わたしにはそんなスキルはありませんでした。先生ー！助けてー！「…お酒をわたしから奪い取って呑んだのよ…」おいしそうなお酒だったのに。

詩織子 @cyan0401

「えっ！？待って、ノバラさん成人！？」「嘘！私、高校生だと思ってました！ごめんなさい！」おっと、ここで第二の殺人事件ですかね？我を失うまえに素数を数えませんと。1、3、なんだっけ。わたしは眉間にしわを寄せながら続けます。「あれがまさか発火作用のあるお酒とは思えないけど」

詩織子 @cyan0401

「どんなお酒でした？」「苺のお酒よ。ピンク色で、果実がグラスの縁にあったの」可愛かったんですけどね、あれ。「ピンク色のお酒…？」天野さんが首をひねります。「僕もカクテルを飲んだけど、見た覚えがないな」「私も、裏方にいましたけど…用意されたリキュールに苺はなかったような？」

詩織子 @cyan0401

えっ、なにそれこわい。「いえ、ストロベリーリキュールぐらいはあるんじゃないの…？ 現に、デザートに苺のショートケーキもあったわ」「そういう見えやすいものはいいんですが、一見して分かりにくい苺のものはないはずです」「なぜ？」「オーナー様がアレルギーなので」

詩織子 @cyan0401

ははぁ、アレルギー。オーナーが乗っているということでしょうか？ しかもA客室ならともかくB、C客室も集う歓迎パーティーに？ 大金持ちなのは分かりますが、そんな殿上人が庶民クラスの人たちに混じってお酒を飲んだりするんですかね。考えたとて、わたしには関係なさそうですが。

詩織子 @cyan0401

「配膳に友人がいるので聞いてみましょう」苺のお酒を出したら大変な騒ぎになってきました…。これ、先生の死の真相に関わるのでしょうか。しかし溺れるものは藁をも掴む、些細な情報も欲しいです。いやでもなぁ、お酒があってもなくても、どちらにしろ泉原さんは話しかけてくるのは……嫌だなぁ。

詩織子 @cyan0401

わたしの苦手なタイプといいますか、大胆不敵に正義を振り回す感じがちょっと苦手なんですよね。悪い人ではないと思いますけど。「そのお酒を飲んで、柏尾さんは様子が変わったとかは？」天野さんが言います。ちなみに、柏尾というのは先生の今回の偽名なのでちょっと反応が遅れますね。

詩織子 @cyan0401

わたしは先生の行動を思い出します。そういえば…。「口から何か出して、ハンカチに包んでいた」「何かって、何？」知りませんよわたしも。でも、先生はたしかにハンカチに何かを吐き出していました。苺のショートケーキと、苺のお酒。それぞれ口に入れた後に。…あら？だいぶ真相に近いのでは？

詩織子 @cyan0401

わたしはしばらく考えこみます。先生の部屋か、先生自身にハンカチがあるはずです。部屋は封鎖されてそうですが……その時はまた考えましょう。苺に入っていたもの、それが先生の殺された理由になるならば自ずと犯人も絞り込めるはずです。ならばすることは一つ。わたしは立ち上がります。

詩織子 @cyan0401

天野さんは驚いてわたしを見上げます。「どうしたんですか？」「探し物」足早に交流ルームを去ります。後ろから慌てて二人がついてきました。これ、わたしが解散といったら解散してくれるのでしょうか……試してみます。「解散する、ついてくるな」あっ〜！意味深な態度取ってますがなにも意味はない

詩織子 @cyan0401

んです！案の定、ふたりは顔を曇らせます。「そんなことできません。私はお客様をお守りすることも業務の一つです」ほんとに？「人は多い方がいいよ、ノバラさん」わたしは！少ない方が！いいんですけど！とにかく説得は失敗しました。説得なのかコレ。いつ終わるのですか、このパーティー…。

詩織子 @cyan0401

わたしはげんなりしながら先生の部屋へ向かいます。オートロック、カードキー。…わたしは先生から預かっていたスペアキーで開けます。先生はなんだか、こんなことが起きることを予感していた気がしてなりません。A船室は個室です。清掃され、空気は換気されてますがさすがに、焼けた後までは

詩織子 @cyan0401

消えていませんでした。冷静に観察サ直すと不思議な点が見えてきました。…暴れた痕跡がないのです。普通、焼死はかなり苦しく暴れ回るらしいのですが。先生だって外道のクズのろくでなしですが、人並みの痛覚はあります。黙って焼け死ぬのを待つタイプでもありませんし。

詩織子 @cyan0401

なら、死んだ後燃やされましたね…。部屋の中を漁りますが、ハンカチはありませんでした。なら、先生のポケットにあるかもしれません。「…あれ？ ノバラさんは、客室どこ？」どこ住み？今なにしてる？てかラインやってる？みたいなノリで聞いてきましたね、この人。デリカシーがないのでしょうか。

詩織子 @cyan0401

「……」ほらー、泉原さんがすっごい顔で天野さん見てるー。フォローしたくないんですよ、わたしも…。「C客室よ。それが何か？」「いや…柏尾さんはAなのに、君はCなんだなって」「わたしは付いてきただけ。部屋があるだけマシね」強がりを言いましたが、わたしはここに来たくなかったです。

詩織子 @cyan0401

C客室は四人部屋です。プライベート空間に他人がいる苦痛。おかげで乗船してから寝不足で、日中は先生の部屋でうたた寝していました。それもあって来たくなかったのに…。しかも先生が死にましたからね。わたしのメンタルはもう0ですよ、0。世界はもう少しわたしに優しくあるべきでは？

詩織子 @cyan0401

「そうなんだ…」これ以上個人的なことが追求される前に、次の行動に移ります。「先生の遺体に案内して」「え…。大丈夫ですか？」私は頷きました。犯人を捜すと決めたなら、どんな手でも使うつもりです。わたしの心などあってないようなもの、真相に近づくためには全ての情動は無視します。