『シュリ』の制作の出発点は、きっと「ハリウッドに負けないアクション映画をオレらで作ろうぜ!」という中学生的に無邪気なものだったことでしょう
さて1999年の韓国映画『シュリ』をめぐるお話を始めます。 長くなりそうです。たぶん数日間またぎます。 間の部分は「このスレッドを表示」をクリックして読んでくださいね~。 pic.twitter.com/HwhmmwLXAt
2019-04-08 20:33:12『シュリ』と言えば、まずはトッパチから度肝を抜く、北朝鮮特殊部隊のこの世の地獄みたいな特訓シーンよなぁ。まだ馴染みの薄い異国の映画界の、予想だにしないアベレージのヴァイオレンス描写に、まずは震撼させられるわけです。コンクリの壁面にドタマ叩きつけて粉砕するシーンには腰が抜けました。 pic.twitter.com/r7oPK32YfP
2019-04-08 20:33:12こんな『あずみ』の卒業試験(仲間同士で殺し合わせて半数に絞る)みたいな訓練を毎日やってて、候補生がどんだけ居ても足りるかい!ってのは有りますが、この振り切ったハード・ヴァイオレンスで「こ、ここまでやる覚悟の映画か!」と観客の背筋を正す効果は充分でした。特に日本の観客には。
2019-04-08 20:37:21あと、このシーンはイ・ドンジュン氏の楽曲力も大きかったですな。「泥臭いハンス・ジマー」的な感じですが、「僕らの好きなジマー」を本家以上にコピーしててガン上がりましたねえ。特にこのバラード・パートの時点で、もうグショ泣きしてました。本物じゃないけど、よいジマーです。 pic.twitter.com/V28aXo2U1B
2019-04-08 20:41:53本作を初めて観た時の「やった…コイツら、やってくれやがった!」という胸のすくような興奮は忘れ難いですねえ。ハリウッドに負けない本格派のアクション・エンタテインメントが、ついにアジアで実現したという快挙への大興奮です。あたしゃ当時、これを本当に待望してたんです。
2019-04-08 20:49:25コレとほぼ同時期に、大いに期待して初日に駆けつけた日本映画『ホワイトアウト』の悪夢のような出来栄えに、ガックリうなだれていた反動も大きかったんですよね。我が国の映画界がこんな体たらくの状況で、思いもかけぬ国の伏兵が雪辱を果たしてくれた!という快哉と、何よりも悔しさね。(^^; pic.twitter.com/GHFV09V20P
2019-04-08 20:54:07『シュリ』の制作の出発点は、きっと「ハリウッドに負けないアクション映画をオレらで作ろうぜ!」という中学生的に無邪気なものだったことでしょう。ナンも整ってない状況で、イチからの見よう見まね(ここ重要)で、「アメリカ映画でいっぱい観た、あのカッコいいやつ」を再現しようと頑張ったのです
2019-04-08 21:00:14監督のカン・ジェギュも主演もハン・ソッキュもメロドラマ畑の人だし、ほとんどノウハウのないイチからの無謀な挑戦ではあったんですよね。しかし尋常でない熱量と勢いは有った。アメリカとは比べ物にならぬ予算と技術で、とりあえず今できる事は全部やってやる!と本気(ここ重要)で頑張った。
2019-04-08 21:07:22その成果が、もちろんショボい所やダサい所は数有れど、「とりあえず、ここまでやれたぜ!」と胸を張って誇れる、堂々のアクション・エンタメとして仕上がったのです。ほんと快挙だと思う。最初に頑張ったヤツが一番えらい!
2019-04-08 21:09:41もちろん日本では「かかか韓国とんでもねえ!」と激震を引き起こし、それまではほとんど公開されなかった韓国映画がバンバン輸入される起爆剤になりましたし、本国の映画製作状況のアベレージをドンとジャンプアップさせた事も明白であります。この1本がもたらした様々な効果の大きさは計り知れません
2019-04-08 21:14:06『シュリ』と『ホワイトアウト』という同時期の2本の映画の、どこに決定的な差が有ったのか、って、つねづね考えるんですよねえ。同じアクション・エンタメ後進国でも、なぜ韓国に出来て、日本では「あんな」事になったのか。
2019-04-08 21:20:56● 南北緊張という身近で現実的なテーマ ● 政府が助成金を出して積極的に取り組んでいた映画製作状況 ● 血の気の多い国民性(←おいおい大丈夫かw) という有利な条件は揃っていたとはいえ、何よりも長期的展望も含めた「本気」の度合いに、決定的な差が有ったように思うのであります。
2019-04-08 21:23:27『シュリ』は単発の打ち上げ花火のような作品ではなく、これから韓国映画界を世界に誇れるクォリティに底上げして行こうぜ!という国をあげてのプロジェクトの、その尖兵としての企画だったように思うんですよね。そこで当時のアメリカ娯楽映画の華の、大スケールなアクションをいきなり選んだのです。
2019-04-08 21:28:16「ま、このテのジャンルはアメリカさんには到底敵わないしー」と敬遠しそうなところを、いきなり目標点に置いて「現時点でどこまで出来るか、やるだけやってやろうや!」と果敢にチャレンジしてのけたんですね。もちろん見よう見まねでパクり放題なれど、それはとても見上げた志の「実験」でした。
2019-04-08 21:33:41あと、南北分断という重いテーマを扱っていながら、恋愛模様なども絡め、とてもポップでスタイリッシュな純娯楽映画に仕上げていたのも大きなポイントでしてな。七面倒臭い社会派ゴリゴリ映画でなく、誰もが楽しめる華やかなエンタメとして、最初から世界マーケットを照準に入れていたのが伺えます。
2019-04-08 22:40:23これの国内外を問わぬ大ヒットを契機にしての、韓国映画界のそれこそ世界照準の大躍進については、イマサラ語るまでもないですな。娯楽アクションのみならず、人間ドラマ、アート作、ロマンス、コメディ、SFに至るまで高水準の作品を連打して、アジア随一の映画大国に成長したのはご承知の通り。
2019-04-08 22:44:462013年の『ベルリン・ファイル』に至って、もう真の意味で世界中どこに出しても恥ずかしくない、緻密で重厚なポリティカル・アクションをモノにしてみせたもんなぁ。 pic.twitter.com/pbUgxTlU1f
2019-04-08 22:48:28『シュリ』のハン・ソッキュが久々に顔を見せていたのは、「兄貴、オレらここまで来ましたよ!」と胸を張って先駆者を迎える意味も有ったのではと思うと胸アツです。
2019-04-08 22:48:28これはまだ黎明期の2002年作だけど、『ロスト・メモリーズ』ってのが結構好きです。「もしも伊藤博文が暗殺されてなくて、韓国が日本に支配されたままだったら?」という、かの国の人々には悪夢のような「if」を描いてみせた意欲作でした。本当にこんなの作っちゃう思い切りとフットワークがまず凄い。 pic.twitter.com/2iMXYBz64D
2019-04-08 22:52:08この映画では仲村トオルが大変良かったですねえ。いちおう仇役ながら非常に魅力的な日本人像で、ともすれば「国辱映画」になりがちな題材に、大きなクサビを打ち込んでくれました。 pic.twitter.com/XKUHAJ1ZY2
2019-04-08 23:00:27それにひきかえ、我が日本映画界の体たらくと来た日にゃあ… 『ホワイトアウト』に立ち返りますぞ。 まず、テロリストに、おろしたてのピカピカなレザーのコートを着せてるという絶望的なセンスな。佐藤浩市は抑えた演技で頑張ってたけど、こんなコスプレではカタナシです。 pic.twitter.com/geWBpbGW8c
2019-04-08 23:25:13中村嘉葎雄さんに地図の上にコーヒーをビシャッとぶちまけさせるのが、ハリウッド的に気の利いた演出だと、何やら小鼻膨らませてそうな、意識が遠のきそうなクッソダサさな。大ベテランの名優が、気のふれたオヤジにしか見えません。 pic.twitter.com/5ZQ0iNSXb9
2019-04-08 23:28:42極めつけは松嶋菜々子の、驚異の棒立ち無反動AK掃射! …何も付け加えません。ただただ脱力して頂きましょう。 pic.twitter.com/BPbibfirHq
2019-04-08 23:30:28問題はね、「こんなんでいいや」とタカをくくっている適当さではなく「これがいい」と確信している手に負えなさに有ると思うのです。TV的な大仰なくせに薄い演出に慣らされた観客層に向き合った、極めて正確なマーケティングによる演出なのです。「これがいい」と信じてる人達が向上するハズもなし。
2019-04-08 23:38:37この悪夢的な『ホワイトアウト』を撮った若松節朗監督が、新作『空母いぶき』に抜擢されてて目眩がしたのですが、予告編を観たら十年一日のクッソ大仰で劇画じみた演出に終始してて、意識がホワイトアウトしそうになりました。あれから19年、一体何をやっとったのか。(暗澹) pic.twitter.com/fEnjAGYPvA
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