「わっくん」って呼ぶ声を惑は聞いた。 地平線の向こうで、たった一人でいるケイは今でも惑を呼んでる。 駄目だ、と惑は思う。『それ』は駄目だ、って。 失くした記憶の向こうにいる自分がそう叫んでた。『それ』が危険な行為だと
2019-04-12 19:04:56そんな時。敵国が攻め込んできた、と知らせが入った。 ケイを捕らえた敵国がこの国に進軍してきたと。 その知らせを聞いて嫌な予感がしたわっくんは真っ先に飛び出した。 頭の中で鳴り響く警報。酷く焦りながらわっくんは空を飛んだ。真っ直ぐにケイがいる所に。
2019-04-12 19:06:35ケイのいる所はすぐわかった。 漏れる黒い闇が大地を侵食していて、どろどろと溶かしていっているから。 その中にケイがいて、その様子にわっくんは泣きそうになった。 だから『それ』はいけないんだ、とあれほど言ったのにって
2019-04-12 19:07:45僅かに残された記述に記されたケイは、魔の遣いとされていた。 けれど、本当はそうじゃない。人が彼を闇に落とした。 与えられる絶望と悲しみ。彼はそれを力に変えて放出してるだけ。 今もたった独り、傷付けられる苦しみと、取り残された悲しみに泣いているだけ。
2019-04-12 19:09:39だから言ったんだ、ってわっくんはぼやいた。 あれを闇に変えたのはお前達じゃないか。あれに破滅の翼を与えたのはお前達じゃないか 遠い遠い昔、民衆に叫んだ言葉が蘇る。それが伝承に記された本当の事。
2019-04-12 19:11:11起こさないでくれって言ったじゃないか、って。二人で眠られてくれればそれで良かったのに、ってケイを見ながらわっくんは叫んでた。 たった独り残されても、それでも惑を探して彷徨うその姿が悲しくて、真っ直ぐに彼の所に飛んで行った。俺は此処にいるよって
2019-04-12 19:12:34もう惑しか覚えてない昔。ケイの翼は白かった。惑と一緒にいて、幸せそうに笑ってた時、彼は闇の力なんて持ち合わせていなかった。 けれど不安定な彼を人は突き落とし、闇に染めた。破滅を願う者たちがケイに絶望を与えた。 それをわっくんは止められなかった。気付くのが遅かったから
2019-04-12 19:14:24そうして、ケイの所に降りたわっくんは彼を抱きしめて、ちゃんと此処にいるよって教えてあげるのです。 中途半端だった覚醒はもう完全に戻っていて、惑の呼び声にケイもまたちゃんと目を覚ました。 わっくん、どこ行ってたの?って泣きながら縋るケイをあやしながらまた二人は遺跡に帰って行くのです
2019-04-12 19:16:31今度こそ二度と起こされないようにと願って。起こさないでくれ、ともう一度人々に頼んで。 二人でいさせてほしいって願うわけです。誰も不幸にしない為に。そして、自分達の幸せの為に。 そんなお話でした。
2019-04-12 19:17:45別に二人で眠っている間は二人だけの世界にいるんだよね。 自分達の力を狙う人もいなくて。それを利用しようとする人達もいなくて。 わっくんだけなら跳ね除ける事も出来るけれど、ケイは力が不安定なせいで人の策略に飲み込まれてしまう。 それを守る為にもわっくんは一緒に眠ってたわけです
2019-04-12 19:19:27ケイ自身の力は闇にも光にもなる。ブレ幅が大きいというか。 幸せだと、嬉しいと感じる気持ちが光になる。わっくんを好きだと思う気持ちも。 でも。絶望に気持ちが浸ってしまうと闇に落ちてしまう。遠い昔、人はそれを狙ってケイを陥れたわけです。
2019-04-12 19:21:01今まではわっくんがケイの力を調節してた。というか安定するように支えてたというか。 でも、わっくんの知らない所でケイの心を傷付けられ闇に落とされて。 何を守るか、で惑が最終的に選んだのがケイの心で、その為に民衆を切り捨て二人で眠りについた。
2019-04-12 19:22:37「起こさないでくれって言ったじゃないか…!」って叫んだわっくんが凄く印象的でね。 すべて丸く収めるにはそれが一番いい方法だったんだよ。誰も苦しまない。誰も傷付かない方法がそれだったから。 ある意味メリバっぽい感じなお話だった
2019-04-12 19:24:18