『ズッコケ三人組』シリーズ全50作感想

2018年はシリーズ第1作『それいけズッコケ三人組』が刊行されて40周年にあたるアニバーサリーイヤー。ふと思い立ち、小学生の頃に愛読していた『ズッコケ三人組』シリーズ全50作を再読(一部初読)。その私的感想をまとめたもの。
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よどるふ💫🐚🚓🐾 @yodorufu

『花のズッコケ児童会長』:面白いのは、学校が認める選挙活動期間ではなく、「選挙の事前運動に抵触しないように行う後援活動」に物語の尺を割いているところだろう。いつもの三人組より頭数が多い人数での組織活動が描かれるが、そこで起こるのが組織内ならではのトラブルであるのが非常に上手い。

2018-09-16 09:28:24
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『花のズッコケ児童会長』:選挙の話なので、当然争うべき相手が用意されているのだが、この相手が一筋縄ではいかない人物で、自分にとって必要なものと不必要なものを分別しており、必要なものだけで世界を形造ることに一切のためらいも感じられない。人物造形の恐ろしさで言えばシリーズ随一だろう。

2018-09-16 09:28:53
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那須正幹『ズッコケ宇宙大旅行』再読了。シリーズ第12作はファーストコンタクトSFもの。自分が「第三種接近遭遇」という言葉を初めて覚えたのはこの作品からだった。宇宙という物理的なスケール感と相反してゲストキャラクターは1人、後半の活劇も限定された空間での戦いというミニマムな一作。

2018-09-16 22:41:33
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『ズッコケ宇宙大旅行』:宇宙船との遭遇から宇宙人との対話までは実にスムーズに話が進み、やや物足りなさもあるのだが、母船を襲った恐るべき「敵」の正体という得体の知れなさからの“日常”への接続の落差には独特の味わいがある。シリーズとしては珍しい実験的なエピローグも印象的。

2018-09-16 22:41:56
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那須正幹『うわさのズッコケ株式会社』再読了。先の「ズッコケ50巻総選挙」において堂々の1位を獲得したシリーズ第13作は、資金を集めて会社を設立し、事業拡大を図るため株券を発行し、最後には株主へ配当配当を行う、「株式会社」という仕組みの基礎を知るには格好の一冊となっている作品だ。

2018-09-22 20:16:22
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『うわさのズッコケ株式会社』:商売の規模は大人のいまの目から見るとささやかなものだが、その「ささやかさ」を相対化させるキャラクターと展開が仕込まれているのがポイント。ここは、子供の頃に一度読み、大人になってから再読すると読み味が変わってくるところだろう。

2018-09-22 20:16:49
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『うわさのズッコケ株式会社』:後半はやや都合の良い展開ではあると思うが、商売が上手くいき調子に乗って事業を拡大した矢先のトラブルの描き方と、その後の株主総会での追及でのハカセの口の達者ぶり、経営難を乗り越えるための奔走と周囲の人間からのあたたかい支援など、印象的な場面は数多い。

2018-09-22 20:17:24
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『うわさのズッコケ株式会社』:あと三人組のクラスメイトで「水本ゆかり」というキャラクターが登場していたのに反応してしまった。

2018-09-22 20:40:05
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那須正幹『ズッコケ恐怖体験』再読了。このシリーズには、三人組のいずれかの親戚の家に遊びに行くところから物語の幕が上がる作品群(『探検隊』や『財宝調査隊』など)があり、シリーズ第14作の本作もその例に当てはまる。一体の幽霊を出すための背景の書き込みに多大な労力が注ぎ込まれた作品だ。

2018-09-28 22:42:13
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『ズッコケ恐怖体験』:冒頭のゲストキャラクター描写は、「読者を物語に引き込むインパクト」の最良のお手本。その後に続く三人組が閑散とした町で過ごすゆったりとした筋運びも好み。メインの幽霊譚は、その土地の郷土史から話が組み立てられるロジカルさと、冷や水を浴びさせられる恐怖が味わえる。

2018-09-28 22:42:46
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『ズッコケ恐怖体験』:シリーズ第1作『それいけズッコケ三人組』にも幽霊が出てくるエピソードがあるが、幽霊の由来をきちんと描くことに関しては、今作とも共通している。シリーズ全般に言えることでもあるが、物事の因果関係をしっかりさせる作風が好きなタイプの人間にはたまらない作品である。

2018-09-28 22:43:26
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那須正幹『ズッコケ結婚相談所』再読了。今作に至るまでに何度か言及されているとおり、モーちゃん(奥田三吉)の両親は離婚しており、母親と姉との3人暮らしである。モーちゃんの母親に再婚話が持ち上がるシリーズ第15作は、奥田一家の過去をめぐる話であり、家族のありかたについての話でもある。

2018-10-01 21:00:20
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『ズッコケ結婚相談所』:過去を訪ねて判明する、自分の家庭の中で、かつて起こった“らしい”こと。真実はひとつだが、それを見通すには時間というフィルターが邪魔をしている。理想の家族像、あるべき家庭環境。未来のことを考えるときには、そんな「正解」に近づいていく思考が無意識に働いている。

2018-10-01 21:00:44
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『ズッコケ結婚相談所』:モーちゃんはハチベエとハカセに相談をすることから始まり、ゆっくりと時間をかけて、自分の気持ちに嘘がないように、母親の再婚に対する「答え」を出す。この「答え」とハチベエの「反論」、ハカセの「『答え』の整理」からなる会話シーンは、シリーズでも屈指の名場面だ。

2018-10-01 21:01:13
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『ズッコケ結婚相談所』:三人組による「子ども電話相談室」設立からのモーちゃんの匿名(になってない)相談。ハカセとタエ子姉さんの会話。過去を確かめに行った、そのついでの東京観光。そしてラスト付近のモーちゃんとモーちゃんの母親の会話。すべてが素晴らしい。シリーズでも五指に入る傑作。

2018-10-01 21:01:41
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那須正幹『謎のズッコケ海賊島』再読了。冒頭、モーちゃんがハゼ釣りをしている穏やかなシーンの読み心地の良さで、作品への好感度が高まってしまうシリーズ第16作は、暗号(古文)+宝探し+活劇の冒険もの。この手の冒険ものに必要な要素が過不足なく備わっていて、“正統派”の冠が似合う作品だ。

2018-10-05 22:52:25
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『謎のズッコケ海賊島』:今作での三人組の行動原理である宝探しには“前任者”がいるというところが特徴で、この“前任者”の影を追うかたちになっていることがラストの余韻をより効果的にしている。終盤の三人組のチームプレイっぷりは、『ズッコケ探険隊』での経験が生きているようにも感じられた。

2018-10-05 22:52:48
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那須正幹『ズッコケ文化祭事件』再読了。三人組は小学6年生、つまり小学校生活最後の1年間を過ごしているわけで、その最中に参加する学校行事には“小学生最後の”がつくことになる。シリーズ第17作は、小学生最後の文化祭へ向けて、三人組の属するクラスメイトたちが一致団結する青春ものである。

2018-10-14 20:43:34
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『ズッコケ文化祭事件』:しかし今作は、「文化祭へ向けてみんなで頑張るの青春もの」としては話が少々込み入っている。ハチベエが文化祭で上映する劇の脚本を地元の童話作家に頼むのだが、完成した脚本に「内容が幼稚過ぎる」とクラス内で反発が出て、作家に無断で内容を大幅に書き換えることになる。

2018-10-14 20:43:57
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『ズッコケ文化祭事件』:クラスメイトのひとりによって書き換えられた脚本(地上げ屋と諍いを起こして誘拐された父親を取り戻すべく三姉妹がヤクザを相手に暴れまわる話)はクラス内で絶賛され、この改変版の脚本に沿った配役と役割分担が決められ、クラス全員で劇の成功へ向けて準備を進めていく。

2018-10-14 20:44:38
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『ズッコケ文化祭事件』:そして迎えた文化祭本番。クラス全員の創意工夫が発揮された劇のシーンは初読時にもっとも印象に残ったシーンだったが、今回再読して驚いたのは、今作の肝とも言える「文化祭が終わった後の話」をまったく覚えていなかったことだ。これほどの名シーンを忘れていたとは。

2018-10-14 20:45:15
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『ズッコケ文化祭事件』:文化祭を終えて語らう三人組。ここでハカセが童話作家によるオリジナル脚本に対し「ある指摘」をするシーン。そして、三人組のクラスの担任(今シリーズには第1作から出ているタクワンこと宅和先生)が、脚本を断りなく改変したことを謝罪しに作家の家へと赴くシーンがある。

2018-10-14 20:45:51
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『ズッコケ文化祭事件』:ここで交わされる会話の内容は、著者が読者、というよりも自分自身を含めた「誰かへ向けて創作活動をしている人たち」全員へ向けたメッセージであり、それが押し付けにならないよう、慎重にバランスが取られている。そしてエピローグにおける“あの趣向”。最後まで隙がない。

2018-10-14 20:46:29
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『ズッコケ文化祭事件』:その他にも、脚本を改変する際にポリティカル・コレクトネスに配慮して配役の男女比を調整するくだりや、文化祭の準備と並行して描かれるクラスの一部の人たちの中学校受験に重ねられるハカセの中学校受験断念のエピソードなど、細かいところにも語るべき要素が多い。傑作。

2018-10-14 20:48:12
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那須正幹『驚異のズッコケ大時震』再読了。前作の『文化祭事件』は卒業式を間近に控えた時期のできごとだったが、シリーズ第18作である今作は4月の始業式の日から幕を開ける。今回初めてシリーズを刊行順に再読しているのだが、この作品でシリーズのリスタートを宣言しているようにも思えた。

2018-10-17 21:31:29
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