『ズッコケ三人組』シリーズ全50作感想

よどるふ💫🐚🚓🐾 @yodorufu

那須正幹『それいけズッコケ三人組』読了。久々に再読する記念すべきシリーズ第1作目でありシリーズ唯一の短編集は、非常に本格ミステリー趣味に溢れている一冊である。困難を切り抜けるための奇策、他人を欺くためのトリック、現在進行形の謎が過去を起点として解き明かされるプロットなどなど。

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『それいけズッコケ三人組』：ハチベエ、ハカセ、モーちゃんという個性の違う三人組の掛け合いは、いま読んでも抜群に楽しい。今作では本格ミステリー趣味を見いだしはしたけれども、ホラー調の話や戦争の影が色濃い話、道徳心がテーマの話など色とりどりの味が楽しめるシリーズ入門に最適な短編集だ。

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那須正幹『ぼくらはズッコケ探偵団』再読了。シリーズ第2作は三人組が殺人事件に遭遇し、その犯人探しに乗り出すという直球ど真ん中の本格ミステリー。「野球の練習中に消えたボールの行方」というひとつの状況を中心に、謎解きものとしての醍醐味がスマートに備わっているプロットが素晴らしい。

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『ぼくらはズッコケ探偵団』：小学生が殺人事件へ関わることとなる発端とその動機付け。事件当時の「ある不可解な状況」を解き明かす論理の糸口。ありえない可能性を除外していくプロセスと、犯行に使われたトリックの伏線の張り方。本格ミステリーとしての骨格がしっかりとした、堂々たる一作である。

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那須正幹『ズッコケ㊙︎大作戦』再読了。冒頭、スキー場の点描から、おなじみ三人組の人物紹介。そこで起きた出会いと偶然の再会。北里真智子というキャラクターを魅力的に造形していくことと、その周囲の感情描写。そして中盤の反転と幕切れの哀切。読み返して驚いた。こんなにも傑作だったとは。

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『ズッコケ㊙︎大作戦』：転校生の北里真智子が学校のクラスというコミュニティーに属する始まりと過程、そしてその終焉が描かれる。真智子の魅力に惹かれていく周囲の人たち。その具体的なエピソード描写と、学校という場において人物の魅力とはどう伝播していくかのプロセスの描写は特筆ものである。

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那須正幹『あやうしズッコケ探険隊』再読了。シリーズ第4作は三人組の孤島サバイバルものである。このシリーズはあらゆる題材、シチュエーションにおける三人組の「チームプレイ」が描かれる作品だ。島に漂着した三人は互いに励まし合い、それぞれの役割を担ってサバイバル生活をこなしていく。

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『あやうしズッコケ探険隊』：単に「孤島サバイバル生活」という困難な状況が描かれるのではなく、ある特殊な状況を用意し、三人組が立ち向かうべき困難に難易度調整が加えられている。その結果として「それぞれが別々の理由で社会から遠ざかったものたち」の邂逅が描かれることとなった作品である。

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那須正幹『ズッコケ心霊学入門』再読了。魅力的なタイトルをもつシリーズ第5作は、雑誌に投稿する心霊写真を撮るために訪れた屋敷で起こる怪奇現象の謎で幕を開ける。作中に散りばめられているオカルト用語の数々は、初読時の自分にとっては確実に「心霊学入門」としての機能を果たしていたと思う。

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『ズッコケ心霊学入門』：作中で起こる出来事の原因となる核が存在するのだが、それを隠すために逆算してプロットを構築していることが分かる。その結果として「心霊学入門」としての性質を帯び、謎解きものの構造をもつ一作になっている。この題材にしては周囲の大人たちの対応力が高いのも印象的だ。

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那須正幹『ズッコケ時間漂流記』再読了。シリーズ第6作は、現代からタイムスリップした三人組の時代劇。初読時には気づかなかったが、「ピアノの音が聞こえてくる音楽室に入ると誰もおらず、隣の音楽準備室にも人の気配はない」というシチュエーションは『時をかける少女』のオマージュになっている。

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『ズッコケ時間漂流記』：未来の知識を過去に持ち込むとその後の歴史はどうなるのか、というシミュレーション的な部分には踏み込まず、あくまで時間旅行という状況の設定の作り込みにアイデアを注ぎ込んでいる。平賀源内という題材選定も面白く、いまでも平賀源内と聞くと真っ先にこの作品を想起する。

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那須正幹『とびだせズッコケ事件記者』再読了。シリーズを順番に読んでいくと、三人組の仲の良さは最初から自明のこととして描かれているので、今作のように「学校のクラスのはみ出し者」として三人組を描くのは、シリーズ第1作で三人組が「ズッコケ」の自覚を持ったのとは別の輪郭線が引かれた印象。

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『とびだせズッコケ事件記者』：しかし今作、三人組の「チームプレイ」の話ではないのだ。それぞれ自らが所属する班の事件記者として、学校新聞のための特ダネ探しをする。そこに至るまでの話運びが実に見事なのである。ユーモアの筆致がノリにノっており、一気呵成の読み心地。素晴らしい作品だ。

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『とびだせズッコケ事件記者』：消化不良の反対はなんと呼べばいいのだろう？ この題材設定に加え、コメディリリーフ配役の上手さ、三人組を別行動させるプロットには、さらなる材料を加えても十分に消化させることができる、消化力過多とも呼ぶべきポテンシャルがある。そういう意味では惜しい作品。

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『とびだせズッコケ事件記者』：序盤では間違いを犯すハチベエが最後に手に入れるものは、本作に沿った言葉で言えば「記者魂」。つまり「目の前にある事実をありのまま、捻じ曲げずに記事にする信念」だ。世界がいかに「分かりやすくできていない」かが分かること、その重要性を描いた傑作である。

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那須正幹『こちらズッコケ探偵事務所』再読了。シリーズ第8作は『探偵団』と同じく、本格ミステリージャンルに属する一作だ。今作のトリック、海外の某シリーズ短編○○○○○○○○○○○○○○が元ネタではあるが、もちろん単なる流用ではない。 fse.tw/NNP8e#all

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『こちらズッコケ探偵事務所』：トリックを見破るための手がかりはさりげなく埋め込まれているし、推理パートでの手がかりのたどり方が小学生の身分でも可能である範囲内に設定してあるのがポイント。そしてもちろん最大の見どころは、最後の最後での大逆転劇！ 快感度ではシリーズでも一、二を争う。

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那須正幹『ズッコケ財宝調査隊』再読了。人類の進化史を導入に、太平洋戦争時に北京原人の骨が紛失した事件を綿密な筆致で描くプロローグで幕を開けるシリーズ第9作は、史実を元にした戦争の挿話を描く歴史ものであり、モーちゃんの伯父の不可解な死の真相を探るミステリーでもある異色の一作である。

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『ズッコケ財宝調査隊』：「不可解な転落事件」を調べるために三人組が関係者の証言を集めるシンプルなプロットなのだが、史実とフィクションを結びつけるための技法が存分に発揮された綿密な書き込みでとにかく読み応えがある。サプライズの演出が大仰すぎないのはこのシリーズ全体に言える美点だ。

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那須正幹『ズッコケ山賊修業中』再読了。三人組とハチベエの近所に住む大学生がドライブの帰り道に迷い込んだ山中で謎の集団に拉致され、“土ぐも様”を信仰する共同体での生活を送ることになる伝奇的な味わいの強いシリーズ第10作。うすら寒い余韻を残すラストはシリーズでも屈指の出来である。

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『ズッコケ山賊修業中』：人びとの不幸の原因を一身に引き受ける“土ぐも様”を中心とした信仰のシステムを神事を通して描き、その人びとが暮らす地形の設定も作り込むことで、「俗世間と離れてはいるがどこか地続きにある場所」というフィクションに一定の説得力を持たせる工夫も見どころだ。

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『ズッコケ山賊修業中』：今作は、1999年に放送されたテレビドラマ版の最終エピソードにも採用されていて、『山賊修業中』ラストの「ある人物の選択」を際立たせるためにシリーズ全体を通してオリジナルの要素を盛り込んである。結果的に原作の唐突さをなくすことにも成功している良い改変だった。

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那須正幹『花のズッコケ児童会長』再読了。今シリーズは主人公たちが小学生であるため、学校行事が題材に選ばれる作品がいくつかある。三人組の通う花山第二小学校の児童会長選挙戦が描かれたシリーズ第11作である今作もその系統に属する一作であり、エンターテイメント小説のお手本のような傑作だ。

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『花のズッコケ児童会長』：ズッコケ三人組シリーズを再読していく中で実感するのは、このシリーズが自分にとってミステリーやSFといった「ジャンルへの入門」的役割を果たしてくれたことと、なによりエンターテイメントとして様式の勘所がきっちりと押さえられている作品群だということ。