さよならリレー140

平成の終わり、青春に散る花。
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チャラチャラのチャンピョン @knstkino

傘を持って出たのに傘は差さなかった。肩がだんだん白シャツから透けた。ドーナツの穴はどうして空いているの、気の利いた答えは出来なかった。多分、今も。君は珈琲に砂糖を一つ、僕はミルクをたっぷり。正反対だね、と笑ったあの頃に戻る術を失くした。きっと戻れても戻らないけど。 #relay140

2019-04-30 20:01:04
sodaame【#140字小説】 @sodaame140

希乃さんの作品には実況の代わりに、主催企画への作品を一つ贈ることにしました。伝えたいことや書くべきことは多くあるのですが、この度は企画へ参加して頂きありがとうございました。#relay140 (感謝)

2019-04-30 21:55:36
@a_ma_ga_e_ru_

空の歌がやむ。幕間はすぐに。覚えているだろうか。永遠なんてないと嘯くくせに裏と表を行ったり来たり、いつだってそれに憧れた。覗いた穴の向こう頬張る幸福は我が儘の味。流れるのはカップの中で、くるくるり。見下ろした水たまりに写るのは向日葵と、あの夏の。夢の終わりが、君で滲む。 #relay140

2019-04-30 22:29:56
sodaame【#140字小説】 @sodaame140

晴さんのアイコンは希乃さんが描いたもので、コロポックルの妖精は僕らにはシャーマンキング (漫画) が印象深いかも知れません。彼女が描いた絵を今でも大切にアイコンにされている方を見かけます。その様な縁で、今回はバトンを優先的に受け取って頂くことにしました。#relay140 (実況)

2019-04-30 23:15:33
デカい愛 @deka__i

忘れられない後ろ姿がある。海に浮かぶ月の道を真っ直ぐに進む、遠くなる、今ならまだ手が届く、腕を伸ばせない、伸ばさない、夢。羨望の眼差しはコーヒーの底で砂糖とともに沈殿しました、啼いた背骨と指の隙間から溢れ落ちた永遠。幸せは終わらない、2番目の引き出しに隠しておいたから。 #relay140

2019-04-30 23:07:04

回想

「We destroy the things we fear」と人妻は言った。
「なんだって?」と僕はフェラをする彼女を見つめた。捕食する熊みたいに頬張る彼女の中の魚は、次第に何かを追うように上流へ泳ぐ。脂が乗ったように滑り気が増した彼女の口内で、僕は射精した。

真昼のベッドで芝生に眠るピクニックみたいに転がる僕の横で、彼女が Instagram を見せてきた。そこには Daniel Saint とあった。

「私たちは恐れているものを壊す。- 時々、私たちの中のある人は愛を恐れ、傷付きやすく、晒され、開かれたものがあることを恐れ、自身を壊すかもしれないことを恐れ、だからこそむしろ壊す。」

そんな言葉を夢で見たような気がした。あるいはそれは夢ではなかったかもしれない。どちらにせよ、僕はその一節を心の引き出しにしまった。記憶はすぐに忘れてしまうけれど、覚えておきたいことはそうやって、心の引き出しの中のいくつかを点検して、ここにしまおうと心に決めて、納めておく。

夢から覚めると、機械的なアラーム音が僕の部屋を占拠した。まるで今すぐ出て行けと追い立てるみたいに。学生闘争はとうの昔に終わった。そんな風に僕を追い立てないでくれ。やれやれと鐘を止め、キッチンに行き、冷蔵庫を開けると、サンドイッチを作ることに決めた。レタスを切り揃え、卵を割り、フライパンに白身が広がった。コーヒーを淹れると、新聞を読みながら、春の風が木々を揺らすみたいにニュースが脳を駆け巡って行く。三時について思いを馳せた。そしてため息を付いた。ドーナツを買いに行く時間だ。

回想〆

@haru__soda

カップを手に取り口に含むとその甘さに思わず苦笑した いつも話に夢中になる君の分の珈琲に砂糖をひとつ入れてかき混ぜるのは僕の役目だった 僕はミルクしか入れない 君がいたはずの席にそれを置くと ちょうどドーナツを届けに来た店主にもうひとつ珈琲を注文した 雨はまだ止みそうにない #relay140

2019-05-01 06:35:13

第二幕 旅立ち

カーステレオからは旅立ちのラブソングが桜吹雪みたいに宙を舞っている。彼は旅に出る。いつか愛した街を去る。故郷はより感情的に、かつての学校はレコードから流れるビートルズみたいに、僕の琴線を震わせる。

紅音アキ@無自覚な四月馬鹿 @RedTombo6_main

今思いついた。僕は明日、この世界を旅立とう。君の元へ旅立とう。だからね。ドーナツの穴を覗いたら、まるで僕の心みたいだった。せめて最期だけは、笑っていたいな、なんて。引き出しにしまったおいた幸せを取り出すのは、きっと今だ。そうだよね、それでいいよね?君はまだ、雨を流して。#relay140

2019-05-01 07:24:14

ブラックバードは永延と空を眺めている。「夜の死の中で歌う黒い鳥。壊れた羽を手に、飛ぶことを覚えた」暗い昏い夜の底に、泳ぐみたいに飛んでいた黒い鳥。光は電柱に輝く電灯しか知らない。ここは暗闇に沈んだ街。いつか雨に濡れて、行き先も分からなくなったブラックバードさ。

空寝ひつじ🐏通販BOOTHにて @sorane_sheep

旅へ出たら、どうしよう。穴の空いたドーナツとインスタント珈琲、それに、少しの幸せ。君がいなくても僕はやっていけるよ。そう言ったけれど、もう世界が終わってしまうことを忘れていたよ。だから、全部ぜんぶ宝箱に入れて何も持たずに旅に出る。 飛び立とう、雨が止まないうちに… #reply140

2019-05-01 08:39:08

そしてブラックバードは夜を彷徨う。ここは真夜中の遊園地、死に溢れた亡霊たちが踊る楽園みたいに、どこまでも静けさが充満した街。「黒い鳥は飛ぶ、暗い黒い夜の光を目印にして」羽ばたくブラックバード、夜の街を行く。

あずさ/模様屋Fragment @fragment_draw

大丈夫。君を忘れるわけじゃない。君が好きな洋楽は、確かに僕も好きだった。けれど好きなのはそれだけじゃないから、僕は歩き出すよ。終わったなら、始まるだけ。あの時ちぎれた言葉の続きを歌うために、さぁ、どこへ行こう。君の好きな洋楽が終わらないうちに。雨が止まないうちに。 #relay140

2019-05-01 10:39:05

カタカタと笑うレコードを留めるみたいにして、耳鳴りのビートルズは鳴りを潜めた。カーステレオからは名も知らない歌手がまだ旅立ちのラブソングを続けている。伝えたい言葉があると多くの歌手は言う。それなら僕に伝えたいことはない。伝えたくないことだけが、街に降り積もるばかりだ。

清澄 ⋆̩☂︎*̣̩⋆ @umenohana0314

改札を出ると雨はやんでいた。桜も散ったというのに少し肌寒い。指先が冷たくてそっと息を吹きかける。無意識な所作に生きていることを痛感した。 水溜りを避け校門を抜けると懐かしい砂埃の匂いがした。静まり返った校舎に響く足音。 君と出会った場所。 確かに君は、ここにいたのに。#relay140

2019-05-01 12:34:13

忘れられないことばかりが、街に降り積もるばかりだ。だからこれは。

第三幕 雨と落雷

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