カレリアの泣き歌の世界〜2冊の民俗学書『トゥオネラの悲しい唄』『トゥオネラの花嫁』より

ロシアとフィンランドの国境地域カレリアに伝わる民俗儀礼「泣き歌(号泣)」に関する2冊の本について。(ウネルマ・コンカ著・山口涼子訳『トゥオネラの悲しい唄』『トゥオネラの花嫁』群像社)
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①『トゥオネラの悲しい歌』(ウネルマ・コンカ著/山口涼子訳・群像社)

座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

TLで見かけた時から何となく気になっていた本。北ロシア・カレリア地方の死に際する習俗「泣き歌」文化を考察した一冊「トゥオネラの悲しい歌」(ウネルマ・コンカ著/山口涼子訳)群像社刊。ジュンク堂吉祥寺店にて購入。 pic.twitter.com/lWR9y1s8Kh

2014-11-29 18:00:19
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(書名訂正)「悲しい歌」→「悲しい唄」

2014-11-30 21:02:51
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「トゥオネラの悲しい唄」(ウネルマ・コンカ著/山口涼子訳・群像社)。横書きの小さな本だが、民俗学の専門書。ロシア北方のカレリア地方に伝わる「泣き歌」文化を研究した原著「悲しみのポエジー〜カレリアの儀礼的号泣」のうち「葬礼」に関する部分の出版化。「婚礼」についても別途訳出中との由。

2014-11-30 21:19:36
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「トゥオネラの悲しい唄」。トゥオネラとは北欧に於ける死者の国。愛しき者が亡くなると、女たちは、葬礼の定められた場面毎に「泣き歌」(号泣)で死者に呼びかけ、悼んだ。それは伝統的なルールに基づいていながら即興的であり、メタファーと言い換えに満ちた、「儀礼が支配する叙事詩」であると云う

2014-11-30 22:05:00
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「トゥオネラの悲しい唄」。カレリア地方の儀礼文化「泣き歌」。その背後にある、死を巡る習俗や死生観も数多く語られる。彼の地でも死者は白い衣を着せられ、葬儀後も6週間は生者の許に留まり、追善供養の後死者の国へ行く。死者の魂は白鳥や小鳥となり、再び生者を訪れると云う

2014-11-30 23:01:26
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「トゥオネラの悲しい唄」。著者は70年代に原著の元となる博士論文を完成させたが、ソビエトのアカデミズムからの、共産党の方針に添うた修正要求に応じることを是とせず、大学を去った。原著は1985年にフィンランドで出版された後、1992年になって漸くロシア語版が刊行されたと云う

2014-11-30 23:43:17
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ウネルマ・コンカ 「トゥオネラの悲しい唄」(群像社)。何故この本のテーマ、カレリア地方の泣き歌にふと惹かれたのかを、漸く思い出した。増野亜子「声の世界を旅する」(音楽之友社)が、冒頭でこの泣き歌に触れていたのだ。前者は民俗学の本だが、後者は書名通り世界の声と歌声の文化を巡る本。

2014-12-13 22:13:07
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因みにカレリアは「トゥオネラ…」ではロシア、「声の世界…」ではフィンランドと云うことになっているが、要は両者の国境付近の、森と湖沼に満ちた北方地域。かつてはその帰属を巡り争われたが現在は大部分がロシアにありカレリア共和国となる。ja.wikipedia.org/wiki/%e3%82%ab…

2014-12-13 23:04:32

②『トゥオネラの花嫁』(ウネルマ・コンカ著/山口涼子訳・群像社)

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もう一冊購入した新刊は、ウネルマ・コンカ著/山口涼子訳『トゥオネラの花嫁』(群像社)。「花嫁は、なぜ涙で送り出されるのか。…北ロシア・カレリア地方に伝わる婚姻と別離の民俗学 」。前編にあたる、葬送儀礼の泣き歌を研究した『トゥオネラの悲しい唄』を読んで以来、刊行を待っていた一冊 pic.twitter.com/YZHT7lkvKh

2017-07-12 08:07:50
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『風呂とペチカ』はロシアの風呂の歴史・文化から風呂小屋の精霊バーンニクまで網羅するが、「ヴォログダの婚姻儀礼における風呂」他を分量の関係で割愛。場所は異なるが、カレリアの婚姻儀礼と風呂の関係について詳しい記述があるのが、ウネルマ・コンカ/山口涼子訳『トゥオネラの花嫁』(群像社)。

2019-03-04 00:50:29
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ウネルマ・コンカ著/山口涼子訳『トゥオネラの花嫁』(2017年・群像社)。ロシアとフィンランドの国境地域・カレリア地方の婚礼の民俗学。前著『トゥオネラの悲しい唄』で扱われた葬礼に続き、婚姻儀礼に伴う「泣き歌」に立ち現れる、独特の比喩や象徴表現に、不思議な感覚を覚える本。 pic.twitter.com/WPs38btBKx

2019-03-05 23:38:13
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『トゥオネラの花嫁』。ロシア文化圏では蒸し風呂に呪術的・民俗的な重要性があるようだが、カレリアの婚礼でも、蒸し風呂は重要な位置を占めた。婚姻の前日、花嫁は蒸し風呂で女友達によって身体を洗われ、乙女の自由(ヴォーリャ)の象徴である髪を解かれ梳かれ、リボンを外し、悲嘆する。

2019-03-05 23:51:18
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『トゥオネラの花嫁』。伝統儀礼としての婚姻は、花嫁が肉親と別離し、夫の家に入ることを「悲劇」として、順序正しく執り行われる。それぞれの場面で、花嫁をコオリガモに例えるなどの比喩を多用し、別れを悲しみ、乙女性の喪失を嘆く「泣き歌」が、花嫁の内面を代弁する「泣き女」によって歌われた。

2019-03-06 00:19:44
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

『トゥオネラの花嫁』。悲劇として進行する婚礼は、葬祭の儀礼と類似の要素が多く、同じく必ず「泣き歌」が添えられる。そこに著者は、豊穣や繁栄に繋がる、象徴的な「危機(死)と再生」を見ているようだ。それ故に、泣き歌(号泣)は、見えない死者達へのメッセージであり、不可欠な要素となる。

2019-03-06 00:56:46