茂木健一郎さんの語る「自由意志」

脳科学者・茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの5月12日の連続ツイート。 東大でfree willの講義を聞いて考えたことをツイートされてます。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

自由(1)ウィリアム・ジェームズは、「意識の流れ」(stream of consciousness)を論じた。その中で、私たちは常に自由意志を感じている。自由意志こそが、意識を持つことの理由なのだ。

2011-05-12 06:53:48
茂木健一郎 @kenichiromogi

自由(2)自分がどれくらい自由に未来を決定できるかという感覚は、あたかもメーターがあるように上下する。残り時間、自分の技量、関係性、ポケットの中のお金、健康状態などの因子によって、「自由」な感覚は上下していくのだ。

2011-05-12 06:54:46
茂木健一郎 @kenichiromogi

自由(3)ダニエル・デネットがかつて論じたように、自由は「進化」する。インターネットのような新しい技術の登場によって、自由は新しい様相を見せる。自分がどれくらい「自由」と感じているかということが、メタ認知における重要なポイントとなるのだ。

2011-05-12 06:55:50
茂木健一郎 @kenichiromogi

自由(4)「自由意志の感覚」(feeling of free will)は、一つのクオリアであり、自分の脳の感覚運動連関がどれくらい健全に働き、流れているかということの内部観測である。脳の健全性のパラメータとして、自由意志の感覚があるのだ。

2011-05-12 06:57:02
茂木健一郎 @kenichiromogi

自由(5)現代の認知神経科学、及び心の哲学においては、因果的決定論と自由意志は両立するという「両立説」が有力である。すなわち、自由意志のクオリアは、一つの「幻想」(illusion)だということになる。

2011-05-12 06:57:56
茂木健一郎 @kenichiromogi

自由(6)自由意志そのものは、一つの幻想であるかもしれない。しかし、自由意志のクオリアをメタ認知で持ちうるような状態に脳があるということが、健全性の証しになる。そして、その背後に、流麗に働く感覚運動連関の実態がある。

2011-05-12 06:58:52
茂木健一郎 @kenichiromogi

自由(7)自由の起源として、量子力学が持ち出されることがある。しかし、その場合は自由はランダムなものとなり、アンサンブル決定となり、私たちが直観的に抱く「自由」の観念とは離れる。「自由」とは、むしろ、拘束条件を見いだすことなのだ。

2011-05-12 07:00:34
茂木健一郎 @kenichiromogi

自由(8)自由意志の感覚に段階や質があること、そしてそれを高めることが、脳の進化/意識の進化の目的であったこと、そして、一人ひとりの生涯、生活においても、より「自由」になることが、成長を導く規範であるということ。

2011-05-12 07:01:44
茂木健一郎 @kenichiromogi

自由(9)たとえ、いつかは死ぬと判っている存在であって、生きている限り、できるだけ高い、良質の「自由意志」を持っていたい。「自由」を、空気のように吸っていたい。そのために努力する。環境を整える。技術を発達させる。

2011-05-12 07:02:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、昨日の東京大学でのfree willについての授業を受けて(授業自体はよりテクニカルなものでしたが)、「自由意志」についての連続ツイートでした。そして、現代は、「リヴァイアサン」の時代になりつつある。

2011-05-12 07:03:25