乙武洋匡さんのお父さんのお話

乙武洋匡さんのお父さんのお話
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乙武 洋匡@小説『ヒゲとナプキン』発売中 @h_ototake

今日は、父の命日。ちょうど十年前、父は亡くなった。建築家だった。バブル期の建設業界。帰りはいつだって遅く、平日は朝しか顔を合わせることがなかった。それでも、入学式や卒業式、運動会や授業参観――いつも休みを取って来てくれた。いまなら、わかるよ。それが、すごく大変なことだって。(続)

2011-05-11 21:32:59
乙武 洋匡@小説『ヒゲとナプキン』発売中 @h_ototake

愛を伝えるのが上手な人だった。ある年の母の誕生日、入院中だった父はこっそり病院から外泊許可をもらって、家の前でピンポーン――何も知らない母が玄関の扉を開けたら、薔薇の花束を抱えた父が立っていたなんてこともあったっけ。母にも、僕にも、いつだって「愛してるよ!」と言ってくれた。(続)

2011-05-11 21:37:28
乙武 洋匡@小説『ヒゲとナプキン』発売中 @h_ototake

小学5年のとき、成績が下がった通知表を暗い気持ちで持ち帰った。父が、そっと開く。「やっぱり、おまえはすごいなあ」え?「オレなんて、アヒル(「2」のこと)ばっかりだったよ」きっと、そんなはずはない。でも、あえて自分を低く見せてでも僕の自尊心を重んじてくれる、そんな父だった。(続)

2011-05-11 21:45:18
乙武 洋匡@小説『ヒゲとナプキン』発売中 @h_ototake

亡くなってしばらくは、父の存在をよく感じていた。僕が誤った判断や行動をしたとき、父は必ず僕の前に現れて、「それでいいのか」と問いかけた。妻への感謝を欠いたときも、いつも気づかせてくれた。もう、ここ何年も現れてくれないけど、元気にしてる?僕は、すこぶる元気です。母も、元気だよ。続

2011-05-11 21:51:15
乙武 洋匡@小説『ヒゲとナプキン』発売中 @h_ototake

「お母さまが素晴らしいですね」――『五体不満足』を読んでくださった方は、必ずそう言ってくださる。でも、母はよく言ってたよね。「私が心おだやかに頑張れたのは、賢二がいてくれたから」。あれ、聞いてないの?照れくさいから、本人には言わなかったのかな。じゃあ、俺から聞いたの、内緒だよ。続

2011-05-11 21:55:37
乙武 洋匡@小説『ヒゲとナプキン』発売中 @h_ototake

「オレ、いつかおまえに怒鳴られる日が来るんじゃないかと思ってた。『なんで、こんな体に生んだんだ』って」――これまでね、ただの一度だって、そんなこと思った日はないよ。感謝の言葉しか出てこない。長くなったので、このへんで。僕は、だいじょうぶ。ふたりの孫を、どうか見守っていてください。

2011-05-11 22:03:43

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