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【服部〜SPRINGMAN】山口順平氏(@hanamogera20)によるユニコーンほぼ全曲レヴュー・前編【#全UC】

祝・ユニコーン100周年! 80年代音楽エンタメコミュニティ「Re:minder - リマインダー」のカタリベ 山口順平氏(@hanamogera20)によるユニコーンほぼ全曲レヴュー「#全UC」をまとめました。※まとめご快諾ありがとうございます
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山口順平 @hanamogera20

【4、ケダモノの嵐】作詞は川西、作曲とボーカルは民生。序盤からEBIがバネのようなベースラインで先導し、中盤でテッシーが発火したようなギターソロをかませば、終盤には阿部がオルガンソロで応戦。川西のフィルも民生のカッティングも隙がなく、まさに5人の職人芸が集約された屈指の必殺曲である。 pic.twitter.com/WY8z2iITob

2019-05-02 22:22:18
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山口順平 @hanamogera20

【5、エレジー】民生作品。一部阿部も歌う。主人公は下心を滲み出しながら女を家に誘う(犯罪の匂いもする)男。台詞は民生、ホラーテイストのト書きは阿部で、一言だけある女の台詞は渡辺満里奈が担当している。曲調は“余白”だらけの静かなR&B。手数も声量も自慢できるバンドによる敢えての“引き算”だ。 pic.twitter.com/TxBnKWEKCg

2019-05-03 00:21:23
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山口順平 @hanamogera20

【6、自転車泥棒】テッシー作品で、ボーカルは民生。“遠い昔ふた月前の夏の日に”や“膝をすりむいて泣いた振りをして逃げた”等々、幻想性と照れ隠しが入り混じった恋愛描写が秀逸なXTC風バラッド。精神年齢が若いというより早くに老成した大人だからこそ到達できた少年目線が、テッシーの真骨頂である。 pic.twitter.com/hGGhNQhcyK

2019-05-03 08:08:02
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山口順平 @hanamogera20

【7、富士】阿部作品。共に民生も歌う。男女の巡り逢いを崇高な山景と重ねる3拍子のバラッド。坂道を滑り降りていく前曲に続き、坂道を登りつめていく本曲という流れは狙いだろうか。昔も今も囁き声のときの2人は一卵性双生児のようであり、小生にはまだどちらが歌っていると断言できない箇所がある。 pic.twitter.com/jSaNsujAPo

2019-05-03 08:19:44
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山口順平 @hanamogera20

【8、リンジューマーチ】民生作品。Stax風のR&Bにのせ幽霊の男を歌う。平成版「帰ってきたヨッパライ」の趣だが“僕の姿は君に見えないからさらに便利”等々、男のダメさはフォーク・クルセダーズの上をいく。終盤のイテテイテテはHarry Belafonteのパロディだろう。車に轢かれたからイテテなのである。 pic.twitter.com/HSqFKdvwIj

2019-05-03 09:31:29
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【9、スライム プリーズ】EBI作品。Princeを彷彿とさせる密室ファンクにのせ、女の部屋に忍び込んだ怪物を歌う(変質者の比喩かは不明)。「ウルトラセブン」のテーマ等ジャンルレスなサンプリング音源が闇鍋状態に。バンドの遊び心を誘発する音楽性であるのは確かだが、彼だけは作家的傾向が読めない。 pic.twitter.com/fhiulDpDNs

2019-05-03 09:48:02
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【10、CSA】阿部作品。世界一珍妙なヘヴィメタ。CSアーティスツ(当時)の住所と電話番号を丸ごと入れた歌で演奏時間は1分にも満たない。ヘヴィメタはロックの中でも高度な技術や身体適性を求められる分野のはずだが、それを箸休め程度の曲でシレッとやってのけるバンドというのも考えてみたら稀である。 pic.twitter.com/ujVZGn1RNL

2019-05-03 12:30:26
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山口順平 @hanamogera20

【11、いかんともしがたい男】民生作品。「I Am The Walrus」を彷彿とさせるサイケ調にのせ無断欠勤した男を歌う。詞中のト書きは“電話は切れてる”だけなのに連絡先の上司に呆れられた光景を映像化できるセンスが見事だ。終始不気味に聞こえるカウントは「Revolution No.9」から得たアイディアだろう。 pic.twitter.com/0caGD79FZQ

2019-05-03 12:42:35
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山口順平 @hanamogera20

【12、夜明け前】阿部作品。朝には別れる恋人の寝顔を男が見つめているというBob Dylanの「Don't Think Twice, It's All Right」を連想させる物語。クラシックの素養が知れるバラッドで冒頭から暫くはアカペラのため、本作中唯一の緊張感が漂う。最も暴れ、最も繊細。阿部はいつもバンドの両極に居る。 pic.twitter.com/0v3LXTG9mz

2019-05-03 19:50:47
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山口順平 @hanamogera20

【13、働く男】民生作品。“忙しくて会えない”に悩む男の日常劇で、いわば「大迷惑」「ヒゲとボイン」と並ぶ3大サラリーマンロックの1つ。Bメロの編曲は「Strawberry Fields Forever」間奏のコーラスは「ジンギスカン」が基と思われるが、曲全体は何々調などと言えない異端なポップセンスを放つ。天才。 pic.twitter.com/L1TJNCNCgu

2019-05-03 20:26:26
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山口順平 @hanamogera20

【14、スターな男】作詞は阿部、作曲とボーカルは民生。ロッカーの素行の悪さを自虐する歌はサザンにもRCにも有るが、家庭設定まで混ぜる点はUCならでは。曲調は降下するBメロのベースラインに50s色が表れるネオロカビリー。ただし終盤のソロ合戦は「The End」を意識したものだろう。これにて大団円。 pic.twitter.com/IYdT60bciF

2019-05-03 20:50:47
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山口順平 @hanamogera20

おどる亀ヤプシ (1990) 子供人気も獲得するにはどんな音楽を作ればよいかという大喜利への珍回答集。演奏が全曲外注で5人はろくに揃わないが、非ロック圏の楽器やチープな打ち込み音がおとす“余白”はいつしか耐久性抜群のグルーヴへと変貌し、天邪鬼たちのやっつけ仕事ではないことを示している。#全UC pic.twitter.com/Suka1Vi77Z

2019-05-03 21:40:46
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山口順平 @hanamogera20

【1、初恋】EBI作品。アフリカ~インドネシア方面の民族音楽をざっくり踏襲した曲調で、おやつも喉を通らない少年の恋心を歌う。有機音と無機音が共存するリズムは、デモかと思うほど“余白”が広い。Prince『Parade』との親和性がなくもないのだが、一方で考察しても意味がないと確信させる曲でもある。 pic.twitter.com/PqyYIrTo7w

2019-05-04 00:19:49
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山口順平 @hanamogera20

【2、ママと寝る人】阿部作品。悪酔い・いびき・日曜ゴルフ等、中年然とした父親を幼い息子が軽蔑視している意味合いの歌。子供目線というと再結成以降にも彼は「ぶたぶた」を書いているが、愚直なまでの愛嬌を振りまくボーカルは初期ならでは。スウィングジャズに日本語をのせる実験性も有している。 pic.twitter.com/OBuWpjfkTi

2019-05-04 07:26:44
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山口順平 @hanamogera20

【3、12才】テッシー作品で、ボーカルは民生。親の期待を背負い学業に苦しむ少年の物語で “かすんで揺れるテキストに蛍光灯の虫の影”等、テッシーの詞才が殊に冴え渡った1曲。一方、大正レトロ+ヴォードヴィルにBrian May風のギターソロと編曲も緻密だ。強引に高いキーで歌う民生の声が少年と重なる。 pic.twitter.com/5XTFiuHLAm

2019-05-04 07:47:54
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山口順平 @hanamogera20

【4、ボサノバ父さん】民生作品。「初恋」同様、生楽器と打ち込みが融合したミニマルなリズムが終始心地良い似非エキゾチックミュージック。年頃の娘が母親とだけ共有している恋愛事情を密かに悟る父親の、孤独とも余裕ともとれる心境を歌う。限られた言葉数でそれ以上の世界をみせるのが彼の流儀だ。 pic.twitter.com/7mbAlarjTU

2019-05-04 07:57:45
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山口順平 @hanamogera20

【5、PTA】民生と阿部の共作曲。近年2人は「OH! MY RADIO」を初のツインボーカルと公言し「PTA」は数に入れていない。妙に歯切れの良い歌唱法も含め完全なるTMNのパロディであるからもはや自分たちではないという認識か、ただ単に忘れているかだ。編曲では、近くて遠い存在の小西康陽と邂逅している。 pic.twitter.com/ohLXJInbyP

2019-05-04 08:17:47
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山口順平 @hanamogera20

【6、俺の走り】阿部作品。様々な和打楽器が導入されているが、カンフー映画のサントラを彷彿とさせる曲調。一輪車で帰宅する少女に想いを寄せ、足で追いかける無謀な少年を歌う。ほぼ軽歌劇である。終わってみれば、6曲中2.5曲が阿部。やがてバンドリーダーと目される彼の飛躍の記録でもあったのだ。 pic.twitter.com/GxiZZOlx67

2019-05-04 08:23:31
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山口順平 @hanamogera20

ハヴァナイスデー (1990) 初の海外録音盤。『おどる亀ヤプシ』では参加率が低かった川西のドラミングが醍醐味にあたる揺り戻し作品。アタックの臨場感がいかにも米国的だが、これについてはスタジオ以上に志向の変化によるところが大きいのだと後の国内録音盤『SPRINGMAN』の時点で明らかになる。#全UC pic.twitter.com/s38RLXNAsM

2019-05-04 09:37:18
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【1、ハヴァナイスデー】民生作品。当初からストレートなロックンロールという題目があったアルバムの幕開けに相応しい表題曲。Elvis Presleyよりも宇崎竜童に近い歌唱法で旧態然としたスターを演じており「スターな男」の姉妹作ともいえる。この芸風は阿部からのバトンで、後年EBIも引き継ぐことに。 pic.twitter.com/3QihXPfTee

2019-05-04 12:33:46
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山口順平 @hanamogera20

【2、魚の脳を持つ男】民生作品。バンドマンならば一度は手をつけるストーンズマナーのルーズなロックンロール。大概このての曲調には素行の悪い(ストーンズっぽい)一人称が結びつくものだが。UCの場合はだいぶ可愛いらしく、面識はあるけど思い出せない相手に調子のいい挨拶をしている男の歌である。 pic.twitter.com/aXLk8V9lV9

2019-05-04 12:44:12
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山口順平 @hanamogera20

【3、鼻から牛乳】EBI作品で、ボーカルは民生。不気味に湾曲するベースリフ1発で世界観が完成したニューウェイヴファンク。曲名は悪ふざけで無意味なものに違いないが、一方通行の愛が語られるストーカーソングであることを踏まえれば、その野卑な不条理さが一人称の人物像と合致しているともいえる。 pic.twitter.com/CEmZ0d301h

2019-05-04 12:48:09
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山口順平 @hanamogera20

【4、レベル】川西作品で、ボーカルは民生。川西は、結成当初から一貫してノベルティソングを書いてきたメンバー。高齢者、土方、素浪人等しばしば歌謡史上稀な人物描写で才能を発揮してきたが、今では物語性から逸脱し、グルーヴに寄り添う右脳的な言葉選びに邁進している。本曲はその最初期作品だ。 pic.twitter.com/thk5syZZRd

2019-05-04 17:09:48
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山口順平 @hanamogera20

【5、$2000ならOKよ】阿部作品。現地女性コーラス隊が加わったアカペラのドゥーワップ。NYだから思いついたのだろう、これも黎明期ロックンロールの1形態である。山下達郎のような完成度を端から目指していない滑稽なハーモニーで「抱けるあの娘」や「命果てるまで」等と同様そっち方面を歌っている。 pic.twitter.com/3iQdVjyww4

2019-05-04 17:52:00
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山口順平 @hanamogera20

【6、東京ブギウギ】UC唯一のカバー。海外遠征の反動によるジャポニスムだろう。延いては、次作『ヒゲとボイン』では現代日本の生活圏描写がより追求され『SPRINGMAN』ではロックにおける欧米コンプレックスがトータリティに関わっており『ハヴァナイスデー』が彼らにもたらしたものは大きいと分かる。 pic.twitter.com/RdUEKyEapl

2019-05-04 18:04:18
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