治安悪化キャンペーンの行き着く先とは?「厳罰化と人権-刑務所は福祉の最後の砦」

中日新聞の編集局人権委員会で行われた龍谷大教授の浜井浩一教授による講演です。テーマは「厳罰化と人権 -刑務所は福祉の最後の砦」。浜井浩一教授は以前より「体感治安悪化」という、警察の治安悪化キャンペーンに異議を唱えている方です。 ※記事と違いメモをざっと書いた文章ですので、その点ご留意下さい。 参考リンク: 浜井浩一教授講演「治安の悪化は本当か?――つくられたモラルパニック」http://p.tl/DE3R 続きを読む
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中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委1】本日は編集局人権委員会が社内で開かれました。龍谷大教授の浜井浩一さんを招いた勉強会です。テーマは「厳罰化と人権 -刑務所は福祉の最後の砦」。名古屋本社の各部のデスクや、各地方でデスクをしている現役記者たちが参加。興味深い内容だったので、内容をつぶやきたいと思います。

2011-05-11 19:35:24
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委2】浜井さんは法務省出身で刑務所や少年院、少年鑑別所で勤めたこともあり、現場をよく知っています。まずお話されたのは「犯罪はそれほど増えていない」こと。戦後の統計を駆使し時間をかけて説明してくれました。殺人などの凶悪犯罪も増加しておらず、治安が悪化していることはない、と。

2011-05-11 19:42:24
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委3】犯罪をめぐる行政が大きく変わったのが、2000年ごろ。犯罪被害に対する警察の対応が批判され、被害届をすべて受理するようになった。それまでは現場での裁量があった。認知件数が一挙に増加したことがグラフからも読み取れました。同時に検挙率は低下。検挙率向上が至上命題に。

2011-05-11 19:50:36
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委4】警察が軽微な犯罪でも身柄を抑えて送検するようになったのと同時に検察も厳罰化の傾向が。20年ほど前は70歳以上なら起訴しなかったが、今は起訴する。年齢性別にかかわらずより平等になったとも言えるが、高齢者には厳しい社会になった。こうして刑務所は過剰収容の状態になった。

2011-05-11 19:55:47
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委5】過剰収容が問題になったころ、浜井さんは刑務所に勤務。ところが刑務所内で普通に働ける受刑者は少なかった。高齢者、知的障害者、病気がある人、外国人ら社会的弱者で占められていたから。浜井さんが問題意識を抱いたのは、この時期の刑務所に勤務した経験があったからだそうです。

2011-05-11 19:59:52
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委6】犯罪が減っている理由は、最も犯罪を犯しやすい25歳以下の人口が減っているから。しかし、高齢者の受刑者は逆に増え、60代以上が20%を超えた。高齢者が増加しているのは先進国で日本だけの現象で、背景には厳罰化と、刑事司法システムに問題がある。勝ち抜けゲームになっている。

2011-05-11 20:10:04
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委7】日本の司法では、被害弁償をすれば起訴猶予になりやすい。裁判になっても実刑になりにくい。ところが軽微な犯罪でも繰り返すと即刑務所となる。最近は窃盗と覚醒剤と無銭飲食が多い。ある意味効率よく処分しているが、知的障害者ら社会的弱者をばんばん刑務所に送り込んでいるのが実態だ。

2011-05-11 20:15:01
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委8】ゲームに勝つために必要な条件は一定レベルの財力、家族などの引受人、謝罪や反省を示せるコミュニケーション能力だ。いわゆるKYは勝ち抜けられない。2円で刑務所に行く人もいるし、5億円で執行猶予になる人もいる。犯罪が増えたから刑務所が過剰収容になっているわけでは決してない。

2011-05-11 20:19:15
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委9】検察官や裁判官が厳罰化した背景は。実は、再犯をする人は全体の3割だけ。7割は更正する。しかし、犯罪の約6割は3割の再犯者が犯す。すると、検察や裁判官は再犯者ばかり見る。一種の職業病だ。同じ人たちばかり見ているから。ほとんどが更正するのに、更正していく姿を見ない。

2011-05-11 20:26:48
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委10】厳罰化を求める「ポピュリズム」も背景。マスコミが劇場的な犯罪報道として繰り返すことが、世論を厳罰化に持って行く。ニュージーランドでは犯罪被害者団体の行動が厳罰化の流れを作った。政治家も巻き込んで政策に影響を持つようになり、司法官僚らの専門家が刑事政策の実権を失った。

2011-05-11 20:39:56
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委11】知的障害者が刑務所に多い理由。厚生労働省の統計では全国の知的障害者の数は約55万人。しかし知的障害があるのは人口の2%ぐらいと言われ、250万人という計算になる。必要な支援を受けていない可能性があり、家族の支えがある人は良いが、ない人は社会的孤立の状態と思われる。

2011-05-11 20:50:08
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委12】この20年間で高齢者の受刑者が倍になった。高齢者で満期釈放された人は再犯しやすく2、3年で再び入る人が多い。満期釈放になるのは引受人がいないため。そもそも、万引きをしてしまうのも、お金がないというよりは社会的に孤立をしているから。最終的な福祉施設として刑務所が機能。

2011-05-11 21:00:46
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委13】ノルウェーで日本の刑務所の現状を話したら「何のことを言っているのか分からない」という反応。ノルウェーでは49歳以上で犯罪する人がいない。加齢とともに安定した地位を得て生活も安定するから。日本で高齢者が刑務所に入る現状について「お金がかかって仕方ないでしょう」と。

2011-05-11 21:05:29
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委14】ノルウェーにあって日本にないものは何か。まずは最低保障年金制度。次に、地方行政による高齢者の住宅対策が徹底していること。日本の生活保護窓口のようにたらい回しができない制度になっている。日本の場合、引受人がいないお年寄りを刑務所から福祉につなげていないところが問題。

2011-05-11 21:11:35
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委15】退所後に福祉サービスにつなぐ機関として都道府県が整備する「地域生活定着支援センター」の制度ができた。愛知はまだなく、この地域では三重と岐阜にある。社会システムの中で、刑事司法や刑罰をどう運用していくのか。対策を考えていかないと刑務所の問題は解決できない。

2011-05-11 21:16:53
中日新聞生活部・くん太 @chunichi_kunta

【人権委16】講演録はここまで。地方支局で警察発表を受け「なぜこんな微罪で逮捕までするのか?」と疑問を持つ場面が少なからずありました。背景が理解できました。社会部記者も浜井さんと名刺交換して話し込んでいました。今回の勉強会が報道に生かされることを願っています。長々と失礼しました!

2011-05-11 21:21:38