[メモ]「使える」科学哲学:アブダクション

.@fiddler_K 「使える」科学哲学のつぶやきをまとめました。
0
Kawai_Yusuke @fiddler_K

前回( http://togetter.com/li/133148 )に続き、夜中の連投。使える科学哲学:アブダクション。

2011-05-14 03:59:54
Kawai_Yusuke @fiddler_K

「アブダクション=最善の説明への推論」は(反証可能性でだした)演繹法などとは違い、仮説の真偽ではなく良否を問う。真偽は1or0。白か黒といった強い主張。一方、アブダクションは1と0の間には少数が、白と黒の間には灰色のグラデーションがあり、その程度を比べるという弱い主張。

2011-05-14 04:01:40
Kawai_Yusuke @fiddler_K

現在の観察の中でもっとも支持される仮説は何かを考えるのである。

2011-05-14 04:02:00
Kawai_Yusuke @fiddler_K

自分の中でのアブダクションは「系統樹思考の世界」につきるのだけれど、あえてそこから離れてまとめれないか考えてみる。(本の感想は http://bit.ly/im13Tj )

2011-05-14 04:02:44
Kawai_Yusuke @fiddler_K

「シャーロック・ホームズの記号論」に倣い、ホームズからアブダクションを視る。ホームズの有名なセリフ「不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる」。これはJSミルの消去法と類似しているらしいが、アブダクションともとれる。

2011-05-14 04:03:28
Kawai_Yusuke @fiddler_K

つまり、ホームズは考えられる仮説の中で最善の説明を選んでいるのだ。(「真実となる」という主張は先の自分の説明と矛盾する気もするが…)

2011-05-14 04:03:59
Kawai_Yusuke @fiddler_K

ホームズのモデルはジョセフ・ベルという医師である。ポーのデュパンと比較されるホームズだけれど、ドイルはホームズのより実践的な面を重視しているらしい。つまり思索家であることよりも「医者」としてのホームズを意識しているらしい。

2011-05-14 04:04:49
Kawai_Yusuke @fiddler_K

医者でいえば、"Dr.House"というアメリカドラマがまさにアブダクションの実例集だと思う。Dr. Houseが依頼を受ける患者は診断が困難なものばかり。いくつもの病気を併発していたりする。そこでの部下とHouse医師とのやりとりはまさにアブダクション。

2011-05-14 04:05:29
Kawai_Yusuke @fiddler_K

症状をホワイトボードに書き出し、症状を説明するもっとも最善の診断を考える。Houseの診断に部下が百万分の一の確率ですよ。と突っ込めば、他の診断は千万分の一だと返す。

2011-05-14 04:05:59
Kawai_Yusuke @fiddler_K

ここにアブダクションの「弱い主張である」という利点と欠点(欠点と捉えるならば)がある。アブダクションは仮説の良否という比較のみを行っているのである。(尤度原理)

2011-05-14 04:07:27
Kawai_Yusuke @fiddler_K

アブダクションによって選ばれる仮説は現時点で他の仮説よりも尤もらしい(尤度が高い)。しかし決して十分に尤もらしい訳ではない。(というかアブダクションはそういう主張に関与しない)

2011-05-14 04:07:57
Kawai_Yusuke @fiddler_K

系統推定を行ってブートストラップ値を見たことがある人は実感できると思う。分子生物学の例で言えば、「薬の投与後、ある遺伝子のmRNA発現量が上昇した」という観察をした段階で、そのタンパク質の増減について三つの仮説を立てる。

2011-05-14 04:09:21
Kawai_Yusuke @fiddler_K

A「薬の投与後、タンパク質量も増加している」B「タンパク質の増減はない」C「タンパク質量は減少している」この三つの中で選ばれるのは、仮説Aである。しかしこの仮説の尤度は低い。mRNAと翻訳されるタンパク質の関係は必ずしも一致しないからだ。

2011-05-14 04:09:55
Kawai_Yusuke @fiddler_K

o0( だんだん収拾がつかなくなってきた)

2011-05-14 04:11:07
Kawai_Yusuke @fiddler_K

仮説の評価は二つの段階がある。第一段階:正しく仮説が選ばれているか(最善・最良の仮説が選ばれているか)。第二段階:その仮説の尤度は十分か。

2011-05-14 04:11:32
Kawai_Yusuke @fiddler_K

ホームズは「黄色い顔」で第二段階の間違いを犯した。現地で十分な観察を行う前に仮説を選択してしまったのである。Dr. Houseは診断がつかないときは、新たな病状を待っている。分子生物学者は尤度が十分でないときは新たな実験を計画し仮説の尤度を上げる。

2011-05-14 04:12:09
Kawai_Yusuke @fiddler_K

ソーバーは「(例え他より尤度が高い仮説が存在しても)信憑性のある説明はいまのところ存在しない、ということを認めてもよいのである(進化論の射程, p.111)」と述べている。

2011-05-14 04:12:44
Kawai_Yusuke @fiddler_K

おそらく意識しなくてもだいたいの生物学者はこういう議論をしている。仮説選択の段階で間違えたのではないかという指摘と、信憑するには尤度が足りてないという指摘(こっちの方が指摘は激しい印象がある)。

2011-05-14 04:13:34
Kawai_Yusuke @fiddler_K

「科学哲学が科学者にとって役立つ程度は、鳥類学が鳥たちにとって役に立つ程度と同じくらいである。」かもしれないけれど、自分にとっては頭が整理されたと思う。相手の仮説のどこを攻めるか。また攻められたとき、どこを攻められているのか意識できるのは違うんじゃないだろうか。

2011-05-14 04:15:39
Kawai_Yusuke @fiddler_K

…素直に「系統樹思考」をベースにすればよかった。ホームズやらDr. Houseやら変に出すからまとまらないのだ。というかつぶやくレベルで無かったです。ごめんなさい。もうしません。

2011-05-14 04:18:21