エンター・ザ・ランド・オブ・ニンジャ #7

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガシャン……。外扉の湿った開閉音の後、巨躯の影が鉄格子の外に現れた。囚人の笑みが深まった。彼は巨躯のニンジャの後ろに立つ、包帯姿のクセツを見ていた。「おや！アンタが来たという事は！無罪放免と理解してよかろうな？いや良かった！あと一日も経てば私は不条理に耐え兼ね死んでいた」　22

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何の罪も赦されはせん」クセツは否定した。囚人は落胆し、笑った。「クィ、キ、キキ……では執行猶予かね？なんと窮屈な話だ。ネザーキョウには民主主義は無いのか？」「無い。くだらんからだ」「おお嫌だ！私は偉大なるタイクーンの御役に立ちたい一心で献策申し上げたというのに！」　23

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やれ」クセツは巨躯の牢番ニンジャに顎で示した。牢番は錠を外し、囚人を解放した。「ヤッタ！まずはこのケチな獄をオサラバ！いやシツレイ。さらばヤモリ君！クェーケケケ！」騒ぎながら鉄格子を出た彼は拘束されたままの両手をクセツに示す。「さあ、執行猶予なので、外してくれないか」24

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それはまだだ」「ほう？」「今後の貴様のはたらき次第と言ったところだな」「クセツ＝サン、それはないィ……」「タイクーンはギンカクなどどうでもよいとお考えだ」「ほう！では貴公は？」「……タイクーンは貴様の処分は私に任せると仰せだ」「おやおや……」囚人は目を細めて笑った。　25

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

風が吹き抜け、モミジが散るなか、動きやすいカンフー・ウェアを着たコトブキとニンジャスレイヤーは向かい合い、アイサツした。顔を上げ、二人は互いに拳を前に出し、それを逸らし、また拳を繰り出す動作を始めた。円を描くように足を運びながら、彼らは互いを木人めいて、打ち合う。　27

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

神秘的なカラテ・プロトコルに従い、二者は組み手を継続する。お互いの目を見据え、淡々と打ち合う。その相互の動きはマイめいてもいる。チョップを受け、側面を取り、掌打をゆっくり向け、躱し、身を沈め、飛び越え、打ち合い、離れ、近づく。　28

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはゼンを高めてゆく。生き残った村人達が墓前にセンコを備える光景がニューロンにフラッシュバックする。村はずれではコトブキが村人とハグをした。勇敢な老人は重傷を押して二人の見送りに加わった。彼らの今後の暮らしは過酷であろう。しかし彼らは恨み言をもはや言わなかった。29

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネザーキョウはブリティッシュコロンビアのみならず、その東、彼らが与り知らぬ範囲まで、広大な支配領域をもつ。だがその実、点在する要塞都市の外は、この村のように、ニンジャの巡回とネングの取り立てによる管理である。北西へ旅し、国境を越えたい。村人の誰かが言った。　30

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

徘徊カラテビースト。あるいは別の巡回のニンジャ。五重塔の監視。領土からの脱出を阻む存在はあまりに多く、その提案にその場で頷く者はいなかった。恐らくまた会議が行われ……何らかの言い逃れを考えて、メイプル・ネングを納める安住の暮らしを継続するか、賭けに出るかが、選ばれるだろう。　31

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

しかしそれはニンジャスレイヤーとコトブキが見届けるべき事ではなかった。二人はシグルーンに間に合わせのメンテナンスを施し、再び、移動を開始した。フィルギアが指定した「待ち合わせ地点」を目的地に。　32

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイッ！ハイッ！ハイヤーッ！」コトブキの連続打撃をニンジャスレイヤーは右へ、左へ捌いてゆく。踏みしめる足、動かす両手の重みとバランスを確かめながら、彼はカラテを高めてゆく。やがて組み手プロトコルが一巡し、二者の動きは調和的に静止した。「やっていきましょう」コトブキが言った。　33

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S3第1話【エンター・ザ・ランド・オブ・ニンジャ】終わり　第2話に続く