- hachisu716
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フラン「知ってる。犬って、上下関係なんでしょ。力の強い私に屈服してるだけ。私に服従しても、ご飯はあげないよ。だって無いし、作れないから」 って言ってるのにクンクン濡れた鼻をフランにつけて匂いを嗅いで、あろうことか小さな舌先でちろちろ舐めてくるわんこ。 フラン「ひえっ」
2019-07-06 17:30:46フラン「なんで? メリット無いって言ってるじゃない……うひえあ」 今度は前肢のせて立ち上がって顔まで舐めてくるから尻もちつくフラン。 フラン「な、な、な、なんで……なんで? なんで舐め……きもちわる……うひえ」 思わず伸ばした手がたまたまわんこの頭に触れて、撫でるような形になる
2019-07-06 17:40:31撫でられたわんこが尻尾振ってもっと寄りかかって舐めてくる。 フラン「ひえ…………なんで…………」 懐いてくるわんこに戸惑うフラン。 フラン「わけ分かんな……やめてよ……慣れてないんだから」 一途に興味を示されて顔赤くしながら困った顔で視線そらすフランみたいな
2019-07-06 18:01:12わんこが囲うように寝そべって、フランの金髪に鼻先を近づけてふごふごして構う。もう、やめてよ。って嬉しそうにくすくす笑うフランみたいな。
2019-07-06 21:45:20で、わんこは散歩に行かなきゃだから、外に出るようにもなって。たまに外に出るとしても飛んで移動するばかりだったし、土の上を歩く、ってことをするようになったフラン。
2019-07-06 21:48:49歩くと、色んな感触がする。 土は柔らかい。 草はふさふさ。 石畳はかたい。 木板の上はすべすべ。 靴の裏の色んな感触を愉しむようになったフラン。 やがて犬が嬉しそうに歩く足元を見ながら、少し考え込んで、自分も靴を脱いでみる。
2019-07-06 21:54:29土は、湿って温かい。 草の上は柔らかくて青くさい。 石畳の上はざらざらする。 木板の上は冷たいけれど、なんだか肌に馴染む。 フラン「お前も、こんな風に足に地面が触れるのが愉しいの?」 しゃがんで、膝をついて、犬のふさふさの毛を撫でてやりながら、そっと語りかけるフラン。
2019-07-06 21:56:16フラン「晴れて乾いた土も、雨上がりの土も、石の多い土も、ほこほこした畑の土も。同じ土でも、歩くと違うのね。……お前も同じ?」 お利口に尻尾をぱたぱたさせながらフランの言葉にじっと耳をすませてる様子のわんこ。
2019-07-06 21:59:34フラン「……歩くの愉しいね」 ぎゅ、とわんこの首に腕をまわすフラン。あたたかな体温をしばらく感じている内に、ふと考える。 ――同じ土でも、歩いて踏みしめれば違うもの。 フラン「……みんなも、同じなのかな」 人間も、妖怪も。
2019-07-06 22:08:08同じ人間でも、実際に触れて、話せば異なるのかもしれない。 魔理沙と霊夢と、それから咲夜も違うものなのかもしれない。 同じ吸血鬼でも、自分と姉は違うものなのかもしれない。 乾いた土には乾いた土の、湿った土には湿った土の特徴がある。 同じ土でもそれは別物だ。
2019-07-06 22:10:44すっと猫のような瞳孔の覗く目蓋を小さく開けるフラン。 まったく性質の違うものなら、「なんで分かってくれないんだろう」なんて思うのは、そもそも違うのかもしれない。 フラン「……私とあいつは、……同じだけど別のもの」
2019-07-06 22:14:00同じ土だけれど、別の土だ。 全部乾いた土ではつまらないし、湿った土だけでは足が濡れすぎる。 少しずつ違うから、散歩は愉しい。 ……なら。……ならば。 フラン「……なら、私も、違っていいのかな」 姉のようにはなれなかった。 寛容に、鷹揚に、全てを愛し、受け入れる姉には。
2019-07-06 22:17:22自分は逆だ。 色んなものが、細かな違いまで気になる。 あまりにも違うものを、同じようには愛せない。 眼前に存在するすべてのもの。 それはあらゆる音、あらゆる光のノイズのようで、あまりにも無数で、うじゃうじゃとすだき、蠢く虫のようで、わずらわしい。
2019-07-06 22:21:45細部まで目につき、違いが見えるくせに、それらをすべて同じように厭い、見ないよう、聞かぬよう、蓋をしていた。 姉が全て受け入れるなら、自分は全てを拒絶する。 そんな風にしか自分の周りのものを見られないこの自分すら、厭わしかった。
2019-07-06 22:25:23姉と同じになれない自分が疎ましかった。 妖怪として、吸血鬼として何かがどうしようもなく劣っていて、狂っているのだろうとそう思ってきた。 ……だけどそんな自分も、ひとつの土であるのなら。 フラン「……私は、姉さんと違った私でもいいのかな」
2019-07-06 22:30:08いっぬを抱きしめて顔をうずめるフラン。 いっぬは理解しているのか分からないけれど、じっと大人しくフランに抱きしめられて、鼻先で首筋あたりの髪を避けている。 まるで、人が優しく指で髪を梳くように。
2019-07-06 22:36:34フラン「……それでいいって、云ってくれてるの? 優しい子だね、お前は」 尻尾をぱたぱた振ってるいっぬ。 フラン「……うん。ちょっと元気が出てきた。ありがと」 行こっか。と声をかけて立ち上がる。犬も素直に立ち上がって、フランの前を歩く。
2019-07-06 22:42:56でもいつか犬が老いたときに、ずっと犬のそばにいながら、何故? と掠れた声で呟くフラン。 フラン「……どうして? お前はこんなに大きいのに。お前はこんなに強いのに」 優しいのに。賢いのに。 あたたかで、いつも太陽の下の麦のような、いい匂いがするのに。
2019-07-06 22:55:51