- hachisu716
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美「咲夜さんは、来ないでください。そして、誰か、呼んできてください……出来れば、お嬢様を」 咲「私がそっちに行ったらだめなの?」 美「駄目です。危険ですから。……時を止めたりしても、駄目ですよ。あなたがわたしに触れれば、その移った匂いでどうなるか、分かりません」
2020-03-09 01:04:55美「……わたしから、離れて。早く」 咲「……美鈴」 美「……今は名前を、呼んでは駄目です。……早く」 咲「どうしてお嬢様なの?」 美「……力ずくでわたしが暴れても、どうしたってわたしがかなわないのが、レミリア・スカーレット様ですから」
2020-03-09 01:08:04媚薬ってスルッと飲めておいしいといいな。その人にとって受け入れやすい味に感じられるようになっていたりして。 たとえばミント水だったり。たとえばオレンジティーだったり。たとえばキャラメルラテだったり。
2020-03-09 02:03:40フランは引きこもってるから知識は豊富だけれど、実際の自分たち吸血鬼の知識には疎かったりして。 ほら、人間がいついつに二次性徴期が来て……っていうような知識を知らないようなもん。
2020-03-09 02:10:27で、ね? 人間や吸血鬼以外の妖怪は平気でも、吸血鬼が口にしたらまずいものがあるって知らなくて、簡単にそれを口にしちゃったりして。 魔理沙にもらった○○ってお菓子が美味しかった、って機嫌よくフランが報告したら、レミリアの顔色がサッと変わったりして。
2020-03-09 02:16:45フランを促して地下の部屋に黙って連れて行って、コウモリを飛ばして合図を出すから、自分が許すまで絶対にここに近づかないように、って咲夜に厳命するレミリア。
2020-03-09 02:34:28なに? 急にここに来て。今までこの部屋にふたりでなんて、400年ちょっと間、一度も…… って云いかけて、フラリと膝から力が抜けて崩れ落ちるフラン。 レミリア「ここは私が作った運命の牢獄。お前に必要がないものは来られない。お前が必要としないものは届かない」
2020-03-09 02:44:46レミ「私がここに来られるのは、今お前に私が必要だからさ。ここは、いわばフィルター。お前にとって、良い運命を引き寄せるものしか、この部屋は通すことを許さない」 フラ「な、に……云ってる、の」 レミ「お前には今、私が必要なんだ……ということさ」 両手を広げるレミリア。
2020-03-09 02:49:15レミ「ごめん、吸血鬼の発情期について、お前にはそろそろ教えておくべきだった。まさかそんなものを食べる機会なんてないって思ったんだ。お前はいつも安全なここにいたから。……でも、友達が増えたなら、一緒におやつを食べる機会だってあったんだな」
2020-03-09 02:52:31レミ「吸血鬼の発情期は、獰猛な八つ当たりだ。わたしも初めてのときは難儀した。だけど、少しずつ我慢して、コントロールできるようになった。お前はわたしよりずっと力が強いから、普段なら問題なくコントロール出来ていたんだ。だけど、その時期にアレを食べてしまうと、我々は駄目なんだよ」
2020-03-09 02:56:05ああ…………そうか。 シーツを干すのに没頭する、白いエプロンが眩しく揺れる後ろ姿を見ながら、紅美鈴は長い時間を経て、この日このとき、ようやく思い至った。 長年の間、中にあるものを封じ込めていた重々しい錠前が、突然ふとしたきっかけで解除されるように。
2020-03-13 07:41:41まるで、固く結ばれていた結び目が、たった一本の紐を抜いたことで、ぱらりとほどけてしまうように。 長い間辿り着けなかった答えが、どうして今まで気付けなかったのかと不思議に思うくらいに、目の前に、確かに存在していた。
2020-03-13 07:44:17わたしは、この人を愛している。 美鈴は、おのれの胸にせり上がり、溢れてくる、ひどく切ないものに耐えかねて、両手でゆっくりと顔を覆った。 わたしは、十六夜咲夜に──恋をしている。
2020-03-13 07:50:28美鈴って紅魔館の妖怪に比べたら長い時間を生きていて(という勝手な設定)、力も弱くて人間と近い環境で生きてきた(という根も葉もない妄想)ぶん、人間との出会いと別れを繰り返すうちに、人間に対する執着=恋を封じてしまったんじゃないかな、という妄想。
2020-03-13 08:02:12だから、笑顔で人当たりがよくて、物腰は柔らかだけど、あまり誰に対しても執着しない。“笑顔と親切”で、たいらかに同じ態度を取ることで、情を入れ込むのを避けてきた。 何百年もの間、そうして誰かに、人間に、恋をすることをずっと避けてきたのかもしれないのに。
2020-03-13 08:06:26自分ですら、封じ込めていることにすら気付けないくらい、それが自然な自分になってしまっていて、恋をするという感情すら忘れてしまっていたくらいだったのに、 なのに咲夜さんが愛おしくて、その封印が解けて、恋をしている自分に気付いてしまった。
2020-03-13 08:09:00何度も身を切るような別れを繰り返して、縁を切ったはずの感情だったのに。 また人間とかかわるという地獄の蓋を開けてしまった、という長寿妖怪美鈴、という妄想をした。
2020-03-13 08:10:08⑩触れ合う時間 美鈴は呆然と宙を見つめていた。 今まで手を繋いでいたものが、がくりと膝をつき、人の形のまま、全身が灰に透けていった。 風にあおられて、溶けて、崩れ、ふわりと漂う花びらようになって、暖炉の中の大きめな灰のように、ふわり、ふわりと宙空を漂っては、溶けて消えてゆく。
2020-03-14 10:16:11その、ふわふわと逆しまに降る雪のように消えていく灰の花びらを、フランドールもまた見ていた。 スノードームでも見るように、ただ、日常にある、綺麗なものを見る目で。 灰の一片まで溶けて消えるのを見つめていた美鈴は、時間を置いて、ゆっくりとフランドールを振り返った。
2020-03-14 10:19:35「……話してた?」 フランは、まるでお喋りを遮ってごめん、というような気軽さで、こちらへ歩いてくる。 云いながら、小さな指の中でくしゃりと最後に握りつぶしたそれは、半透明に透けた、小さな紅い薔薇。 美鈴が、つい今まで話していた妖精メイドの、その命だった。
2020-03-14 10:22:35