きみがいない

すの【二次創作垢】 @kr_sbbfr

少し仕事が立て込んでいるみたいなんだ、と言ったソロモンの口が不自然に震えていた辺りでなんとなく「嘘」であることは予期していたので、新聞を片っ端から読みあさり最近執行された処刑の数が酷く少ないことをしっても驚愕ではなくちっぽけな確信だけが鉛の様に胸に沈む。

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猫のような気まぐれさもなく、犬のような愛嬌もない。ただ自分の隣が空いていればフェニックスは自然にそこに座るので、最初の頃こそ「隣、空いてますか」の一言はあったが最近は何も言わず無音で座ってパンを千切っているので心臓に悪かった。久々に続く空席に落ち着きをなくす自分が情けない。

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フェニックスを見なかったかい？　と尋ねてきたサタナキアの、その台詞を理解するのに少し時間がかかったがソロモンはなんとか取り繕って「最近忙しいみたいなんだ」と答えた。「ふぅん、」と返事を返したサタナキアの目が残酷な好奇に輝くのが、野営に焚いた炎の様に似ているのが気に入らない。

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主亡き部屋が、こんなにも残酷に時を止めるということをソロモンは知らなかったし、知りたくもなかったと、返しそびれた本を彼の本棚に戻しながら静かに泣いた。

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【フェニックスくん】○○○○○○○○○の○○には○○○○○○○○○○○したが、彼との○○○○○○○○○○○○○○○、ただただ淡々と、事務的で無機質な時間だけが沈んでいた。 fse.tw/MMWDJ#all

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【フェニックスくん】○○○○○という名の少年は○○○○○○○であって、○○○○○○○○の中に彼を○○○○○○として見ていた者は果たしてどれだけいたことか。 fse.tw/HJL5t#all

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【フェニックスくん】○○○○○は本当に優秀な処刑人だった。彼の仕事ぶり、その実力、ここに居る誰もが分かっている。その一方で、○○○○○が何を好み、何を夢見て、何を愛していたか。ここに居る者には分からない。 fse.tw/UnZNA#all

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主がいなくなった部屋に迷い込んだ蛾がランプに向かって飛び込みそうになったのでソロモンは懸命にその虫を守らねばならなかった。ナイーブになっているという自覚はあったが、この部屋に何かしらの生命が息づいていてほしかったのかもしれないし、彼のの部屋で死を直視したくなかったのかもしれない。

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天気、曇り後雨。随分と前にフェニックスから「貴方と食事を共にする夢を見ました」と報告を受けたのが切っ掛けで時々食事を共にすることがあったが、最近は忙しいのか姿すら見かけない。――ソロモンが何かを隠しているような気がするのだが、気のせいであってほしいと願うのは逃避なのだろうか？

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ドアを開ける。部屋の壁に飾られていたバースデーカードにしばし目を止めたフォカロルは、来年はこんな小さなカードではなくて大量の色紙にアリと同じくらいの大きさの文字でびっしりと説教をかます必要があるな、という決心をしてフェニックスの居ない部屋を去って行った。

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そういえばフェニックスを見ないなぁと思ったサタナキアはソロモンに彼の居所を尋ねようかと思ったが、今彼にその話題をけしかけた場合顔に拳がねじ込まれてもおかしくないような気がしたので少し迷って、一人静かにレモンティーを口にした。

すの【二次創作垢】 @kr_sbbfr

やたらいびつなリンゴに包丁を入れたフォカロルはこれでは等分にならないと口を尖らせたが、今リンゴを待っているのはサレオスただ一人だけなので、特に問題はなかった。しかしリンゴの等分よりも大きな問題は既にこのアジトに重くのしかかっている。