中学男子の指導法

shinshinohara @ShinShinohara

高校一年生のとき、従弟の受験で面倒を見ることに。従弟は私より成績もよく、スポーツも万能、男前で、私に負けてるのは一つもない。なのに勉強の面倒をみてもらうことになり、不服そう。 父は、私に、「ただひたすら、後ろで一緒に勉強してろ。それだけでいい」と言った。

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学校から帰ってきて、四時から六時の二時間、晩御飯を食べて、夜八時から十時までの二時間、毎日一緒に勉強することに。従弟は壁に向かって勉強。私は後ろで勉強。一切教えない。ただひたすら、同じ部屋で勉強。 すると不思議なことが。「意地になって集中」しあう形に。

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なにしろ同じ部屋に二人、勉強してるだけ。教科書やノートをめくる音、鉛筆を走らせる音しかしない。相手の動静が音を通じてすべて分かる。身じろぎすれば、それだけで集中できていないことがバレる。従弟は負けず嫌いだったので、私が身じろぎもせずに勉強してると、従弟も恐るべき集中力を見せた。

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従弟は私と違って、勉強しなくても成績が良かったタイプ。けれど、受験はそれだとうまくいかない。テストすると七割取れるけど、どれができてどれができないか、本人も把握できてない。教科書をめくったことがないから、中学三年でどれだけの量を学んだのか、全体感さえつかめていなかった。

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私と父は、従弟に「ひたすら教科書を繰り返し読み返せ。数学は教科書の練習問題をすべて解け。英語は教科書の英文も和訳も全部暗記しろ」と指示。やるべきことだけ示して、後は本人任せ。ひたすら、私は後ろで勉強してるだけ。

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あぐらを二時間、全く物音たてずに続けるのはなかなかの苦痛。脇目も振らず、集中して勉強するのも、なかなか大変。しかし、あと二週間で受験する従弟のために、「集中するとはこういうことだ」というのを、意地になって示した。そしたら、従弟も意地っ張りだから、同じように物音立てずに集中した。

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その結果、驚くべきスピードで教科書を繰り返し読み返すことに。三年間かけて学んだ内容を、わずか二週間で二十回くらい繰り返すと、かなり頭に入る。いざ受験。本番では、事前の模試では予想できなかったほどの高得点となった（自己採点による)。見事合格。

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男の子は、「環境」に影響されやすい。かつ、意地っ張り。だから、単純で効果が高い指導法は、「同じ部屋で一緒に集中して勉強する」こと。 一、二学年上の子どもがいたら、その子に頼むとよい。「一切教えなくていい。ただひたすら、『集中して勉強するとはこういうことだ』という見本を見せてくれ」

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同性の、一、二年上のお兄ちゃん、あるいはお姉ちゃんは、子どもにとって存在感が大きい。その人が脇目もふらず集中して勉強していると、だんだん、集中できていない自分が恥ずかしくなってくる。部屋に響く物音が、自分の落ち着かない動作からくるものばかりなのに気がつくから。

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勉強しろなんて言う必要はない。集中しろなんて言う必要はない。集中して勉強するというのはこういうことだ、というのを、身を持って示してくれる人が一人、そばにいるだけでよい。すると、自然に集中して勉強するようになる。