オバマ大統領の中東・北アフリカに関する外交方針演説について

5/20のオバマ大統領の中東・北アフリカに関する外交方針演説(http://1.usa.gov/ifwPC2)のインパクトは大きかった。ポイントは①中東・北アフリカ地域の政治的・経済的改革と民主主義への移行を支持することが米国のトップ・プライオリティであること、②エジプトに対して最大10億ドルの負債救済を含む総額20億ドルの支援を行うこと。③イスラエル・パレスチナ間の中東和平について、その国境が相互に合意された土地の交換を伴う形での1967年の境界線に基づいて設定されるべきであるとしたこと、の三点だが、特に①と③は米国の外交方針の大転換を意味するものである。
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fj197099 @fj197099

昨夜のオバマ大統領の中東・北アフリカに関する外交方針演説(http://1.usa.gov/ifwPC2)の衝撃はかなり大きい。演説のポイントは大別すれば三点だ。①中東・北アフリカ地域の政治的・経済的改革と民主主義への移行を支持することが米国のトップ・プライオリティであること。

2011-05-20 12:14:48
fj197099 @fj197099

②エジプトに対して最大10億ドルの負債救済を含む総額20億ドルの支援を行うこと。③イスラエル・パレスチナ間の中東和平について、その国境が相互に合意された土地の交換を伴う形での1967年の境界線に基づいて設定されるべきであるとしたこと。どれも重要だが、③はとりわけ重大である。

2011-05-20 12:16:44
fj197099 @fj197099

とりあえず①の話だが、オバマ政権としてはリビア、シリアの事態には厳しく接しつつも、サウジアラビアやバーレーンの事態に対しては(長年の米国の同盟国であることから)厳しく接することはできないというジレンマを二重基準であるとして非難されていた。その非難に答える必要からのものであろう。

2011-05-20 12:25:34
fj197099 @fj197099

オバマ大統領は米国は普遍的な権利を支持するとし中東及び北アフリカにおける政治的・経済的改革を支持するとした。この発言は英国学派的に言えば「秩序」と「正義」のうちで後者を選択したということだ。すなわち米国はたとえそれが地域の「秩序」を損なうとしても民主化という「正義」を選んだのだ。

2011-05-20 12:27:58
fj197099 @fj197099

無論、この演説でもリビアについてはカダフィ排除を強調し、シリアにおいてはアサド大統領への制裁と民主化への移行を要求する一方で、バーレーンについては反体制運動の背後にイランの存在があることを指摘し対話に基づく解決を求め、サウジアラビアについてはそもそも言及がないなど、濃淡は残る。

2011-05-20 12:30:44
fj197099 @fj197099

しかしオバマ政権が中東・北アフリカ地域において政治的・経済的改革を支持することこそが米国のトッププライオリティであると明言したことはそれなりの意味を持っているだろう。それは結局、米国は今後はこの地域で独裁体制を公に支持することが困難になることを意味するからである。

2011-05-20 12:34:35
fj197099 @fj197099

ハマスとファタハの仲介を行ったエジプトの事例で明らかなように、中東の民主化勢力は往々にして米国の利益とは異なる行動を採ることが多いしほぼ100%近くが反ユダヤ、反イスラエルである。米国が民主化を支持することは米国自身の国益を損なう結果になってもそれを目指すことを意味するのである。

2011-05-20 12:36:34
fj197099 @fj197099

②についてはエジプトへの経済支援の話でこれも重要な話ではあるがこれ自体で何か大きく問題を生じるという話ではない。ただ、米国は関係各国・国際機関にも同様の行動を求めるであろうから、例えば日本等もエジプト・チュニジアへの債務免除などの支援を求められる可能性があるとは言えるだろう。

2011-05-20 12:38:26
fj197099 @fj197099

それより何よりこの演説の最大の焦点は③である。米国がパレスチナにイスラエルの生存権を認めさせるとしながらも、イスラエルにも1967年の境界線を国境として受け入れることを求めたのは、正に中東政治における驚天動地であると言えるだろう。イスラエルにとっては大ショックの話である。

2011-05-20 12:40:06
fj197099 @fj197099

というのは、イスラエルは1967年以降も主にヨルダン川西岸自治区において入植地を拡大し続けているからで、同時に近年はそれらをテロリストから守るために長大な壁を築いて防衛体制を堅固にしてもいるからである。今更1967年の境界に戻れと言うのはイスラエルにとっては防衛上、受け入れ難い。

2011-05-20 12:46:15
fj197099 @fj197099

つまりこのオバマ演説は米イスラエル関係に(これまでも緊張関係はあったが)中東和平を巡りかなり深刻な亀裂が生じることを示唆するものなのである。米国は入植地からの撤退などイスラエルが国内世論上、到底受け入れられない解決策を求める路線に転換したとイスラエルでは受け止められるであろう。

2011-05-20 12:49:10
fj197099 @fj197099

このオバマ政権の厳しい対イスラエル姿勢はイスラエルの地域における更なる孤立化を招く可能性が高いと思われる。それはイスラエルの態度をより一層強固なものとして、単独主義的な軍事行動を誘発する可能性が高いものでもあるが、中東和平に力を入れるオバマ政権としてはこれは一つの賭である。

2011-05-20 12:50:45
fj197099 @fj197099

米国が中東において親イスラエル(少なくとも反イスラエルではない)の権威主義国との関係を重視する路線から完全に転換したことは、この地域において真に地政学的な変化を生み出すように感じられる。米国も民主化を支援することでむしろ挑戦に直面するが、イスラエルは更に孤立化を深めるだろう。

2011-05-20 12:53:37
fj197099 @fj197099

こうした転換の代償として米国が何を得ることができるかが今後は問われるようになろう。すなわちオバマ大統領としては地域の民主化・経済発展を支援することでイスラム教徒からの支持という「ソフト・パワー」を得たいのだと思われる。だがその代償は地域の不安定化とイスラエルを「見捨てる」ことだ。

2011-05-20 12:55:21
fj197099 @fj197099

他方でこれほど広範な民主化運動が広がった事から言えば単純な現状維持ももはや不可能であり、これは一種の賭である。いずれの道を選んでも将来の不確実性は大きいであろう。オバマ政権は中東・北アフリカにおいて海図のない航海に乗り出そうとしているようだ。その行く先はまだ見えない。

2011-05-20 12:56:46
fj197099 @fj197099

ところでこれを米国内政の観点から見ると、イスラエルに厳しい中東和平の方針を打ち出したことは、大統領再選を目指すオバマ大統領にとっては負の影響を及ぼすかもしれない。言うまでもなく米国内における親ユダヤ勢力の影響は強いが、彼らがこの演説にどういう反応を示すかも今後の注目点である。

2011-05-20 12:58:06