Togetter/min.tを安心してお使い頂くためのガイドラインを公開しました。
編集可能

マカロニの神様

マカロニウエスタンの神はどうやら伊勢神宮におわすらしい。
10
蔵臼 金助 @klaus_kinske

マカロニの神様の話をしましょう。昼食時に知り合いのガンマンから連絡があって、「フィルムノワールに魂を売ったのか? マカロニのことも書け。次は1時間後に取りに行く」と仰るので、専門のマカロニウエスタンの話です。

2011-05-21 14:12:22
蔵臼 金助 @klaus_kinske

生まれて初めて両親に映画館へ連れてって貰ったのは、小学校4年生の時。横須賀の名画座で二本立てを観たのです。メインは『サンダーバード』。格好良かったですよお。メカもいいけど、小さい頃から正義の味方より怪獣や宇宙人の方を好んでた私は、国際救助隊より火星の怪獣ガンジャに御機嫌でしたね。

2011-05-21 14:19:46
蔵臼 金助 @klaus_kinske

『サンダーバード』の併映は、初めて観る西部劇でした。何だか赤茶けた画面で埃っぽく、男の人が馬に引きずられるシーンが怖くて、父に聞いたものです。「お父さん、何であの人は馬に引きずられているの?」父は私に言いました。「それはね、あの男の人は悪いことをしたからだよ」

2011-05-21 14:30:47
蔵臼 金助 @klaus_kinske

併映の西部劇は『怒りの荒野』でした。今でも何が正しく何が正しくないかを考える時、父がその時言った言葉を思い出します。金塊強奪仲間のワイルドにリンチされたタルビー。確かにタルビーは悪ですが、彼のした「悪いこと」とは何なのか、今でも判りません。マカロニに正義の味方は登場しないのです。

2011-05-21 14:49:30
蔵臼 金助 @klaus_kinske

最初に観たマカロニはその後すっかり忘れてしまい、翌年に『夕陽のガンマン』ですっかりイタリア製西部劇にはまった私は、あの時、『サンダーバード』と一緒にやっていた映画が何だったのか、とても気になり始めました。

2011-05-21 14:56:38
蔵臼 金助 @klaus_kinske

それから男が馬で引きずられるシーンを観ると、記憶と照らし合わせる習慣がついてしまったのですが、『ワイルドバンチ』始め、どの映画を観ても思い出せません。やがて『怒りの荒野』をTVで観る機会を得られた時も、記憶とは違う感じがしました。

2011-05-21 14:58:58
蔵臼 金助 @klaus_kinske

あの時観た映画が『怒りの荒野』だと確信したのは、それから34年後。DVD発売時のプロモ上映、東京都写真美術館で35㎜上映を行った時のことです。家のTVで観た時は白黒でぴんとこなかったのですが、スクリーンに映し出された赤茶けたアルメリアの荒野を観た時、小学生の時の記憶が蘇りました。

2011-05-21 15:06:58
蔵臼 金助 @klaus_kinske

ああ、自分があの時観た西部劇は、やっぱり『怒りの荒野』だったんだあ。スクリーンで観る『怒りの荒野』は、白黒TVやDVDで観た時と違い、臨場感に満ち溢れていたのです。翌週、母を亡くしたばかりで横須賀に独りで住む父を呼び寄せ、一緒に『怒りの荒野』を観ることにしました。

2011-05-21 15:11:05
蔵臼 金助 @klaus_kinske

とても忙しい時期でしたが、どうしてもその時、父と『怒りの荒野』を観なければならないと思ったのです。写真美術館で父と観た、『怒りの荒野』。私はその時のことを一生忘れません。上映後、父に「昔、最初にお父さんに連れられて行ったのがこの映画だったんだよ」と私は父に言いました。

2011-05-21 15:16:19
蔵臼 金助 @klaus_kinske

父は笑いながら「忘れちゃったよ」と言いました。翌週、父は急死してしまったので、私が父親と最初に観た映画も、最後に観た映画も『怒りの荒野』になってしまったのです。

2011-05-21 15:19:08
蔵臼 金助 @klaus_kinske

『DUST』で助監督を担当したダリオ・チオーニも、マカロニウエスタンが大好きでした。彼に「いちばん好きなマカロニは何?」と聞いたら、「『怒りの荒野』」と即答していましたよ。「何で?」と聞くと、「初めて父に連れられて観た映画だから」と言うのです。

2011-05-21 15:25:53
蔵臼 金助 @klaus_kinske

「実は私も初めて父と観た映画は『怒りの荒野』。いちばん好きなマカロニは『殺しが静かにやって来る』だけどね」と言ったら、彼は『ダスト』に使われた小道具をプレゼントしてくれました。

2011-05-21 15:27:26
蔵臼 金助 @klaus_kinske

それは、よく見るとチャチい感じのする、小振りの金貨です。アルミの鋳造で、映画の中では冷蔵庫に隠してある大量の金貨がこぼれ落ちる所で使われました。その一枚をダリオからプレゼントされて、今でもそれは私の大切な宝物です。

2011-05-21 15:29:13
蔵臼 金助 @klaus_kinske

ダリオとローマのレストランで語り明かした時、私は出来るだけ多くのマカロニウエスタンをDVD化しようと決意したのです。現時点で企画・制作したもの、監修したもの、何らかの形で関わったものを数えると84タイトルになりますので、最低、後16タイトルは出したいですね。

2011-05-21 15:35:01
蔵臼 金助 @klaus_kinske

で、やっとマカロニの神様の話です。1999年だったかな。当時私はDVDとは関係の無いセクションで仕事をしていたのですが、ある日、渋谷でクマブッチさん始めマカロニ好きが集まる会がありました。その時にクマブッチさんが「『殺しが静かにやって来る』の権利が空いたらしいよ」と言ったのです。

2011-05-21 15:41:52
蔵臼 金助 @klaus_kinske

皆で、自主制作でDVDを作るには幾らかかって、どうやって売ればいいかを話し合いました。翌日、会社のDVDチームの担当に製作予算、制作のプロセスを聞いて、その話を皆にフィードバック。「みんなで金を集めて、『殺しが静かにやって来る』DVDを作ろうぜ」と言うことになったのです。

2011-05-21 15:44:35
蔵臼 金助 @klaus_kinske

その翌月でしょうか。突然私は辞令を言い渡され、DVD担当チームへの異動が伝えられました。でも、いきなりマカロニを作るには、未だ無理があります。DVDの作り方も仕組みも何も知らないのですから。

2011-05-21 15:46:33
蔵臼 金助 @klaus_kinske

勉強をしよう、そう思っていたら、異動の翌週に八丁堀からエージェントがやって来ました。「新しい担当に挨拶をしたい」とのことでしたが、実際には売り込みでした。『ミート・ザ・フィーブルズ』DVDの打ち合わせを終えて、彼はいきなり私に話しかけます。「マカロニウエスタンって知ってます?」

2011-05-21 15:50:47
蔵臼 金助 @klaus_kinske

一瞬私は彼が何を言っているのか理解出来ませんでしたが、数秒後には、彼が葱で、鴨を背負ってきたことが判りました。「『殺しが静かにやって来る』他、10本の権利が空いているんですよ」と続けて言われた途端に、理性も吹き飛び、そのリストをひったくる様にして、目を通しました。

2011-05-21 15:53:52
蔵臼 金助 @klaus_kinske

「『殺しが…』『ミネソタ』『1ドル銀貨』はいいけど、『続・荒野のドラゴン』『新・脱獄の用心棒』は要りません。その代わり、『怒りの荒野』と『バンディドス』を探して下さい」 今度は彼が訳判らなくなっていました。

2011-05-21 15:57:20
蔵臼 金助 @klaus_kinske

そんなこんなで翌月、今度は制作に精通した男が、グループ会社から私を訪ねてやって来ました。「何かおもしろい映画無い?」制作に関するプロを捜していた私には、偶然とは言え、あまりのタイミングの良さです。私は彼に、「マカロニウエスタンは面白いし売れますよ」と唆します。

2011-05-21 15:59:49
蔵臼 金助 @klaus_kinske

自主制作を検討してから1ヶ月の間に、『殺しが静かに…』を含むマカロニ20作品の企画が具体化しました。私は神も仏も信じていませんが、この時、マカロニの神様はいるな…と思いました。

2011-05-21 16:01:45
蔵臼 金助 @klaus_kinske

その後、販売会社に売り込みをかけましたが、どこもいい顔をしません。「知らない」「売れない」と言われ続け、ひとつだけ、興味を示してくれた会社が、SPOです。担当は若い男性でした。「面白そうですね」彼だけが即答。その後独立した彼とは、今でも一緒に仕事をする時があります。

2011-05-21 16:04:08
蔵臼 金助 @klaus_kinske

ちなみに、制作を担当したプロデューサーもその後、独立。ドキュメンタリー『死なない子供、荒川修作』を監督した山岡さんが、その人です。

2011-05-21 16:08:41
蔵臼 金助 @klaus_kinske

マカロニDVDはビジネスとしても成功し、その後SPOからは追加で33タイトルがリリース、現在ではリイッシューを含む20タイトルが販売中です。最初の20タイトル制作中は平均睡眠時間が3~4時間の毎日を送っていましたが、ふと、3日の休日を取れることになりました。

2011-05-21 16:12:53
残りを読む(5)

コメント

コメントがまだありません。感想を最初に伝えてみませんか?