- hardboiledski45
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さすがに新海印、見事な画の連続で、しみじみ感心いたしました。しかし、あまりに全てがまばゆく輝いていて、わたしはやはり絶叫とともに灰になりました。『君の名は。』を観たときと同じ悲劇がわたしを見舞ったのでした
2019-08-28 18:23:03賛否両論あるだのないだの、そんなことを考える前に、わたしは画面を直視できぬ事実に向き合わねばなりませんでした。なんというまぶしさ。おお。わたしはあの世界に入っていけない人間なのだという確信が一秒ごとに深まります。逃げ場はありません。
2019-08-28 18:26:20穂高くんも陽菜ちゃんもまっすぐです。ねじ曲がったわたしは自問自答します。どこでわたしは道を誤ったか? 答えはありません。二人のまっすぐさはもはや暴力です。わたしは金床の上に置かれたくず鉄のように打ち据えられます。悲鳴が聞こえます。わたしの悲鳴です
2019-08-28 18:29:30日差しが眩しい。降りしきる雨はわたしには清すぎる。煌びやかな東京はわたしの居場所ではない。さりとて路上は──新海監督が描いたように──あらゆるものを疎外する非情の空間です。わたしにいく場所はない。死が訪れます。薄暗く微笑みながら……
2019-08-28 18:35:05まさに臨死。臨死体験です。救いはマカロフPMです。あの、くたびれたソ連製自動拳銃だけが、わたしとあの世界をつなぐたったひとつのよすがです。マカロフよ、助けてくれ。お前だけが救いだ。わたしは目をつむります。内なる大藪ヒーローを召喚します。耐えねばなりません。このときに。
2019-08-28 18:37:56長くはもちません。防衛ラインは脆くも崩壊します。わたしはまばゆさのただ中に放り出されます。こうなることはわかっていたのに。なぜ。なぜわたしはチケットを買ったのか? おお、愚かなわたしよ。お前には燃え尽きる運命が似合いなのだ。灰になるがよい。
2019-08-28 18:41:00RADWIMPSの歌声が襲いかかってきます。耳にまぶたはありません。彼らの歌声を防ぐことはできません。愛にできることはまだあるかい。ありません。少なくともわたしについては。わたしは暗黒の中で安らぎたい。
2019-08-28 18:45:20小栗旬の声にすがるようにして視聴を継続します。小栗旬の声がわたしにとっての現実の基準線です。小栗旬のいるところが現実の色彩を帯びます。小栗旬がこれほどありがたいと思えたことはかつてありません。なんということでしょう
2019-08-28 18:49:30わたしはよれよれです。穂高くんが泣いています。陽菜ちゃんも泣いています。恋人たちの涙は美しい。わたしは美しくない。なぜそんなわたしにそんな美しいものを見せつけるのか。当てつけか。誰か助けてくれ。映画館という小さな宇宙の中、わたしの悲鳴は誰にも届きません。誰にも。
2019-08-28 18:53:01それだけに、まさに彼岸として立ち現れる、青い空の向こう、雲の上の異界の風景は、まさにわたしにとって、正しくやすらぎをもたらすものでした。美しいが、恐ろしい。その恐ろしさがわたしを癒します。癒しをもたらすものは、人によって様々です。
2019-08-28 18:57:22しかし、それも、世界の全てを合わせたよりもなお熱くお互いを求めて燃える二人のまばゆい輝きの前には気休めに過ぎない! 最大瞬間風速の暴力がわたしを襲いました。逃げ場なし。わたしは灰になります。ブラックアウト。お疲れさま。
2019-08-28 18:59:21と、油断していたら、追い打ちをかけるようにラストの暴力が襲いかかり、わたしは今度こそ粉砕され、映画館の座席についたまま悶死したのでした。しばらくして復活はできましたが。
2019-08-28 19:01:34あの映画を観て、泣けるとか感動したとか、ましてや批評できるレベルで冷静に視聴できる人を、わたしは尊敬します。そういう人たちは、まともに画面を観ていられたのですから。わたしはそうではなかった。それが全てなのです
2019-08-28 19:07:56ことあるごとに、大藪ヒーローが悪魔の神に祈りを捧げるのを、わたしは長らくわからずにいましたが、今日つくづくそれを理解しました。まさに『天気の子』の眩しさに耐えるために、わたしには悪魔の神の加護が必要だったのです……
2019-08-28 19:23:41