編集部イチオシ

他力を借りた子育て

親にだけは言いたくない、知られたくないことがある。「他人と関係を結ぶ」力が弱いと親に思われるのは、子どもにとって屡々、つらいこと。
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shinshinohara @ShinShinohara

子育てが親だけでは無理、と思う理由。「親にだけは話したくない、知られたくない」悩みがあるから。 私は小学生の時、ある日突然、クラスメートと遊んでもらえなくなったことがある。その日からかなり長い期間。一年だったか、どうだか。休み時間、私一人だけ入れてもらえなかった。いわゆるシカト。

2019-09-03 21:56:57
shinshinohara @ShinShinohara

あとで分かったのだが、その頃、地域で非常に勢力を伸ばしていた宗教団体の人間に父親がにらまれ、ガキ大将がその宗教団体だったため、みんな恐れをなして近寄らなくなったという構図。私はなぜそんなことになったかワケが分からず、大変つらかった。だが、親には言えなかった。

2019-09-03 22:01:48
shinshinohara @ShinShinohara

親にその事実を伝えたのは、数年前。四十歳をとうに過ぎてから。それまで、親に全く話せなかった。なぜか。親には、「この子は学校でうまくやってる、友達もたくさんいる」と思っていてほしいからだ。友達とうまくやれない人間だと親に思われたくないから。

2019-09-03 22:04:40
shinshinohara @ShinShinohara

そうは言っても、親は、私が学校でうまくやれてないことはお見通し。 今でも鮮明に覚えていることがある。近所で年の近い子等が楽しそうに遊んでて、私は「混ぜてほしい」と母親にねだった。「一緒に遊んで、って自分で言えばいいやん」。ビクビクしてるのが原因と思ってたのだろう。

2019-09-03 22:08:52
shinshinohara @ShinShinohara

私は言えなかった。一度拒否された経験があると、「また拒否されるのではないか」と怯えるようになる。しかも、拒否された理由が、当時はさっぱり分からなかったから、理由もなしに拒否されるのでは、という恐怖心があった。親が宗教団体とケンカしてたのが原因だと気づいたのは、高校生になってから。

2019-09-03 22:11:05
shinshinohara @ShinShinohara

「ボクは友達と遊べないんじゃない、本を読みたいからだ」という論理に逃げ込んだ。ところが親から本を読むのを禁止され、家の外で遊んでこい、と。そりゃもう、地獄。ガキ大将が恐くて、私と遊ぶのをみんな嫌がってるのに、「友達と遊んでこい」と親に言われて、もうどうしたものやら。

2019-09-03 22:14:44
shinshinohara @ShinShinohara

団地の中をさまよっても、時間のつぶしようがない。そんなときに見つけた時間のつぶし方が、本屋での立ち読み。学研マンガの「ひみつ」シリーズや、伝記もののマンガは全部読破した。本屋さんにははたきではたかれたが、宗教団体と親との一件を知ってか、あまりやかましく言われなかった。

2019-09-03 22:17:33
shinshinohara @ShinShinohara

友達とうまく遊べなかったこと、本に逃げようとしたこと、本を読むのを禁止されてやむなく団地をさまよい、本屋で立ち読みするようになったこと、それらはすべて、親が宗教団体とケンカしてたのが原因だと高校生なって合点がいってからも、それを親に言うことはためらった。親には知られたくなかった。

2019-09-03 22:20:30
shinshinohara @ShinShinohara

私が四十過ぎてから親にようやく話したのは、親が、自分たちのケンカが子どもに影響与えてないと勘違いしてたことに気がついたから。「そんなわけないやん」と、恨み言としてようやく告げることができた。けれど、あまり親には言いたくない話題。

2019-09-03 22:22:29
shinshinohara @ShinShinohara

子どもは、親には、学校でうまくやってる、みんなと仲良くやれてる、と思っていてほしいと願っている。たとえそれが事実でなくても、誤解であっても、そう思っていてほしい。たとえ親が事実に気づいていたとしても、その建前を崩さないでほしい、と思ってる。

2019-09-03 22:24:35
shinshinohara @ShinShinohara

子どもは、いずれ親元を離れ、一人で社会の中に飛び込まなければならないことを知ってる。そして、親は、子どもが雄々しく巣立っていくのを期待してることを知ってる。なのに、親が「この子は社会に出る力のない子」と思われると、自分の心を立てておくすべを失ってしまう。

2019-09-03 22:27:02
shinshinohara @ShinShinohara

親には、信じていてほしい。この子は、今は苦労していても、いずれ克服できる力のある子、と。 この子は立てるのだろうか、と不安になりながらも待っていてくれた、赤ん坊の頃のように。この子は言葉を話せるんだろうか、と不安ながらも、じっと待っていてくれた頃のように。

2019-09-03 22:29:17
shinshinohara @ShinShinohara

なのに、「この子は社会に出る力のない子、他人とうまくやっていけない子」と親から思われたら、子どもは、自分のアイデンティティを保てなくなる。立ち向かう気力の元を断たれた感じになる。だから、親には、言いたくないし、知ってほしくない。

2019-09-03 22:31:19
shinshinohara @ShinShinohara

だから、親以外の相談相手が大切。親でなければ、そして安心して心のうちを明かせる、信頼できる人がいれば、本当は弱音を吐きたい。助けてほしい。 親にてきることは、そうした存在が子どもにできるよう、アシストすること。そのためには、子育てに他人の力を借りた方がよい。

2019-09-03 22:33:40
shinshinohara @ShinShinohara

親である自分も信頼でき、子どもも信頼していろんな話ができる存在。子どもより少し年長の子どもでもよいし、ご近所の大人でもよいし、おじいちゃんおばあちゃんでも構わない。親には言えない弱音を吐ける存在がほしい。

2019-09-03 22:35:28
shinshinohara @ShinShinohara

「何でも相談できる存在になろう」と親に求める声がある。それができる人は構わないけれど、なかなかそれができかねる場合も多い。親にだけは言えない、知ってほしくない、という性分の子には、弱音を吐ける他人の存在が必要。 子育てを、親だけで完結させるのは難しい。

2019-09-03 22:38:07
shinshinohara @ShinShinohara

もし機会があるなら、「他力を借りる子育て」っていう内容で本を書いてみたい。前に書いた子育て本は、「親にできること」に内容を限定するという編集方針に従ったため、他力による子育て論を全く展開できなかった。あとがきに触れただけ。けれど、親だけでは子育ては相当に無理がある。

2019-09-03 23:01:23
shinshinohara @ShinShinohara

今の子育て論は親に限定されてるか、教育専門家(塾や学校、専門機関)に限定されている。しかし、子どもは学力だけの存在ではない。友達とうまくやれるのか、不安にさいなまれ、心に血を流しながらもんどり打ってるかもしれない、「心」の存在でもある。親とプロは、心の問題にあまりふさわしくない。

2019-09-03 23:05:41
shinshinohara @ShinShinohara

親ではできないが、赤の他人だからこそ心に寄り添えることがある。なぜか。まさに、赤の他人だからだ。赤の他人が寄り添ってくれる。この事実は、やがて社会に出るべき存在、親元を巣立つ人間として、この上なく自信と安心を与えてくれる。

2019-09-03 23:08:17
shinshinohara @ShinShinohara

親は他人じゃない。プロは、お金を払えば寄ってくる人たちだから、他人じゃない。利害も何にもないのが他人。そんな他人に、果たして自分は受け入れられるのか?そんな不安が、子どもたちにはある。もしかしたら、赤の他人には全く受け入れてもらえないかも、と不安を抱えている。

2019-09-03 23:10:39
shinshinohara @ShinShinohara

そんなとき、赤の他人が自分に関心を示し、受け入れてくれたら。自分でも、赤の他人だらけの社会で生きていけるかも、と、希望が持てるようになる。自分でも社会でやってけるかも、と、不安を和らげることができる。これができるのは、赤の他人。

2019-09-03 23:12:52
shinshinohara @ShinShinohara

赤の他人は、子育て論から除外されて論ぜられることが多い。まさに他人は「背景」に押しやられてる。 けれど、社会に出ることが、赤の他人だらけの海に飛び込むことであるならば、どうして赤の他人を子育てから無視することができるだろう?

2019-09-03 23:15:11
shinshinohara @ShinShinohara

もちろん、子どもに悪意で接する大人もいるから、事は簡単ではない。けれど、親も信頼でき、子どもも安心して相談できる他人なら、形成できなくはない。社会という、他人だらけの世界に飛び込む子どもの不安を和らげる橋渡し役として、他人の力は欠かせないように思う。

2019-09-03 23:18:16