【小説】「招かれた者、招き入れた者」 『最弱最強の反比例剣士と3つのしっぽの女悪魔 ~口づけからの始まるレベル1』より
- TTTworks_horsph
- 1213
- 11
- 0
- 0
次にツイッターの方に載せる小説に関しては時系列的にはこのエピソートでは一番初めの発端となるシーンから。ただ、本編ではまだこの存在は臭わす程度も出ていないため、もう少し後のお話にはなる。 我ながら、よく分からないな。
2019-09-04 21:57:20『最弱最強の反比例剣士と3つのしっぽの女悪魔 ~口づけからの始まるレベル1』 ドリームペインター編より「招かれた者、招き入れた者」
2019-09-04 22:00:12異世界転生、転移といえば、今であれば誰にも通用する要素である。ただ、その歴史を語れば、神話、古典にまで遡る王道でもある。そんな話の王道は老若男女、猫も杓子も、読まれ続けられている。
2019-09-04 22:00:42さて、そんな御多分に漏れない展開から物語は始まるのですが、いやはや、そんな異世界転移をする彼は何と、この物語の主人公ではありません。では、彼の行く末とは。さてさて、皆様共々、行く末を見ていくこととしましょう。
2019-09-04 22:01:32見知らぬ場所。彼はここが自分のいる世界でないと知るのには、自身の知識だけでは確信が持てなかった。それでも、前ぶりはあった。不可思議な空間に歩き、ここへとたどり着いたからだ。
2019-09-04 22:02:53それでも目の前の光景は単なる自然。これだけなら、ただワープに似た何らかな現象で別の場所で移動したと考えることもできる。だから、ここは自分のいた世界と違いが分からない。
2019-09-04 22:03:47ここが異世界と知らせてくれる人物がいない限りは、彼にとってはこの自然で覆われた場所はただの自然でしかない。又はここを移動して、異世界と分かる何かを発見、出会いがすぐにあるか。
2019-09-04 22:05:26実際、目の前の自然は森であり、木の種類など大して知らないから判別はつかない。また、彼自身の知る国以外の木となれば、完全に常識外。森である認識から抜け出せない。さて、どうしたものかと彼は悩む。
2019-09-04 22:06:17この自然から抜け出すにしろ、どちらを進んでいいか分からない。山であれば、まだ下れば何かに出会う可能性もある。また、登ることで進むべき方向も分かるかもしれない。しかし、ここは森。前か後ろか、右か左か。人間である以上、最も有効な空という選択肢はない。
2019-09-04 22:07:09「貴方は招かれた者ですね」いきなり、声が聞こえてきた。先ほどまで四方を見回したときには誰もいなかったのに。そして、彼は身構える。声質は幼い子供のようだが、それに見合わない何かを感じたからだ。その何かは分からないが、それでも良くないモノは間違いない。
2019-09-04 22:08:25彼は声の主を探す。ただ、冷静に、静かに。まるで獰猛な動物に襲われないように。おかしな行動だが、彼にはそうせざるならないほど、鬼気迫る状態である。理解できる言葉で語られただけだというのに。
2019-09-04 22:09:00「驚かせたようだね」声の主は突如、彼の目の前に現れていた。見た目は少年である。そして、その背には自身よりも大きい袋を背負っている。その姿で、ようやく彼はこの世界は自分が知る世界ではないと理解した。
2019-09-04 22:10:01何しろ、少年の見た目は綺麗で汚れてはいない。なのに、自身より大きいモノを背負い、この自然を歩いてきたというのなら、すべてがあり得ない。少年の筋力、身なり、そして、現状。すべてがミスマッチだからだ。彼の常識では一つも当てはまらない。
2019-09-04 22:11:20ただ、唯一の情報源である以上、彼は少年に恐る恐る尋ねる、「ここはどこだ」と。少年はためらいもなく「これといった名前はないけれど、リヨ王国近くの森だね」と彼の理解できない国名を出した。少なくとも彼が先までいた国の名前ではない。
2019-09-04 22:12:13よくある都市伝説で、乗っていた電車で見知らぬ無人駅に着くなどの『異界』と呼ばれる類もあるが、この場合は『異世界転移』という言葉が彼の中で思い浮かぶ。ただ、これは創作物の話だ。現実で体験する身ではいささか、現状を説明するには心許ない根拠である。
2019-09-04 22:13:06「それより、貴方はここに招かれた、客人だ。私はそのような客人を持てなすように主人に言われている」そういって、少年は背負っていた大きな袋を下ろした。そのとき、袋からは様々な金属音がした。中身が金属であるのなら、相当な重さである。
2019-09-04 22:14:30そして、少年が袋の中から探し出して取りだしたのは槍であった。その他にも様々な剣や斧、槍が入れられているのが見えた。取り出した槍は柄が少し短く、この少年が使いにはちょうどいいサイズである。その槍を彼の前に差し出す。
2019-09-04 22:15:19「これは命を奪う武器ではない。しかし、命を活かす武器でもない。これは『命、弄ぶ槍』である」と少年は語る。しかし、『弄(もてあそ)ぶ』とは物騒な言葉である。ただ命を奪う方がいっそ清々しい。そもそも、武器である以上、命を奪う以外にはありえない。
2019-09-04 22:15:52そもそも、この槍にもよく見る不思議なオーラを纏っている。いや、オーラなど見て感じされるモノではないが、それでも彼にはこの槍には不思議と魅了される何かか感じ取れた。ただ、それは優しいモノではない。禍々しい類い。この少年と似て。
2019-09-04 22:16:28そう、これを手にしては駄目と、頭が自然と警告している。手にすれば引き返せない、これは異界のモノ。さて、彼が知る世界には、こんな昔話がある。迷い込んだ家より、持ち帰ったモノで幸か、不幸になるという話だ。むしろ、欲によって不幸となるおとぎ話だが。
2019-09-04 22:17:25だが、彼にとって、この槍を手にして何かが変わるのか。彼の時代で名のある槍を手にして、武功を挙げることなど適わない。手にしたところで、欲となることはない。そう、この槍で何も変わらない、はず。たとえ、ここが槍で武功を挙げられる世界であっても、彼の力では無力だ。
2019-09-04 22:18:28少年は微笑んだ。彼が欲した手に対して、後押しするように槍を更に前へと出す。そして、迷いの中で彼は槍を掴んだ。それで何かが変わるはずはなかった。だが、それは違っていた、槍は語り始める、自身の存在意義を。
2019-09-04 22:19:09そう、ここは『異界』。そもそも、彼の常識など当てにはしてはいけなかった。少年が不可解であるように、槍とて喋ることに違和感などないのだ。その常識の違いと槍が語る事実に彼は困惑と驚き、そして、興味を引く。
2019-09-04 22:19:48