五十一。
岩や木の幹、雲などに人の顔や動物などの姿を見いだす錯覚の事をパレイドリアという。 和訳では変像というそうだ。 火星の岩が人の顔のような影を落としていて、人工物ではないかと話題になっていたのも、これだな。 pic.twitter.com/xbpTtfly18
2019-08-24 15:39:20幽霊なんてものの正体も、多くはパレイドリアかもしれない。 「幽霊の正体見たり枯れ尾花」というやつだ。 肉欲に餓えた人は、枯れ草や木にさえも、ある形状を見出して、欲情するだろう。 「浮世を忘れた坊さんも、木魚の割れ目で思い出す」物であるからして。 pic.twitter.com/dWyEi8dUco
2019-08-24 15:55:46部屋にいると、誰かの視線を感じてカーテンが開けられない、という人がいた。 部屋は4階で、窓の向こうは木立だ。覗かれる筈は無いのに。 やがて気がついた。白樺の枝痕が眼に見えたんだ。 なぁんだと安心して窓の外を見ると。 木の幹の眼がまばたきをした。 pic.twitter.com/JCL5DEQh4T
2019-08-24 16:16:53五十二。
以前、餓鬼の話(twitter.com/cha_bo39/statu…)をしてくれた人から聞いた話。 「おつとめ帰りは、見たら直ぐ分かるな」 「なんかが憑いてるとかじゃないよ」 「背筋ピーンと伸ばしてな、兵隊さんの行進みたいに歩いてると、あぁこいつは出てきたばっかりだな、と」
2019-09-07 15:50:42僕はあまりお酒は飲めないのだが、場末のバーの雰囲気は好きで、食事のついでにちょっとだけ飲みに行くこともある。 これは、そんなバーのカウンターで隣になった中年の客の話。 「ここは久しぶりだな。あぁしばらくな長野の別荘にいてな。避暑だな避暑」 避暑地の別荘とは羨ましい。 pic.twitter.com/klqkOUH0DN
2019-08-16 14:35:33「刑務所に居ると、そういう所作が躾けられるんでな」 「言葉遣いでも分かるよ。よろしいでしょうか、なんて敬語で話してたりすると。ヒト殺してそうなイカつい顔して」 「本当にヒト殺してたりするけどな」 「中身は知らないが、外見をそうやって矯正するのが日本の刑務所ってやつだから」
2019-09-07 16:02:36「ヒトを殺したヤツも分かる。全部ではないが」 「誤って殺めてしまったとか、殺った事を後悔しているヤツってのはな。道端歩いてても、そこいらの家族なんかを見るとな。自分は殺した人の市井の幸せを奪ったんだと、ズキッとするのよ」 「何を見てもそうなる。テレビつけても、ヒトの声を聞いても」
2019-09-07 16:17:14「そんで。自分はそういう幸せに、なってはいけないんだと、自分を責め続けるんだ。自分には、もうその資格は無いのだと」 「なぁ、兄さん」 「あんたもそうじゃなかったか?」 「兄さんは何人殺したんだ?」
2019-09-07 16:22:31五十三。
僕は単に根暗なだけなんだけど。たぶん。 「人殺しでも、見た目や暮らしぶりから分からないヤツもいる」 「想像力のないヤツ、自分しか見えてないヤツがそうだ。こいつらは殺ったことを後悔しない」 「支配欲を満たしたいが為、殺人を犯すヤツ。こいつは際限なく殺し続けるぞ」
2019-09-07 16:38:17「征服した相手はもう死んじまってんだからな。こういう輩は、欲求が嵩じたら、すぐまたやらかすぞ」 「だからな。“餓鬼”なんだ。満たされない欲求を常に抱えてるんだ。ヤツらにはこの世が地獄なんだ」 「よく居るだろ。飯屋の店員に横柄なヤツ。ああいうのを見たら、近づかない方がいい」
2019-09-07 16:46:04五十四。
専門の研究家からしたらお寒いレベルだが、僕はいちおう絵画に詳しいということになっているので、「一番怖ろしい絵はなんですか?」とか聞かれて困ることもある。 残虐な絵、不安感を煽る絵、グロテスクな絵などはいくつも思いつくのだけれど、何が一番かと問われると。 pic.twitter.com/S2Kx5F5JFH
2019-09-07 17:42:26宗教画や歴史画はその元になる物語や思想が怖ろしいのであって違うような気もするし、恐怖心を抱かせることが目的でないものを怖ろしいだけで語ってよいものか。 そして、怖ろしいとはなんだろう?と考えてしまう。
2019-09-07 17:46:38直感的に選ぶのならば、ゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」か。プラド美術館まで観に行った。ゴヤが私邸の壁に描いたもので、壁を剥がして展示している為、崩壊しやすく、国外に出されることはない。 ゴヤはこの絵を食堂に描いた。当初は勃起した陰茎が描かれていたという。 pic.twitter.com/E7bEZTSuO6
2019-09-07 17:58:16この絵もギリシア神話を主題とした歴史画ではあるが、聾者となった晩年のゴヤが自分のために描いた絵で、これを観ながら食事をするというのは、どういった心境なんだろうと思うと、薄ら寒いような気分になってくる。
2019-09-07 18:03:12五十五。
現実に影響を及ぼす怖ろしい絵というのは、この世為らざる美しい絵のような気もする。 とっととこっち側には見切りをつけて、そっちに逝ってしまおうか、と思うくらいの。 「もしも生まれ変われるなら 今すぐ君の側に行きたい 誰かこんな臆病な僕に 空を羽ばたく勇気をちょーだい」 (惨事のハニー)
2019-09-07 18:18:03五十六。
恐怖とは何か。生き物には予め備わっている感情だと思うが、それが欠落しているような人もいるよね。何も怖がらない人。 航空機の墜落事故から奇跡的に生還した男が、後天的に恐怖心を無くす「フィアレス」という映画があったけれども、そうじゃなくて先天的に無い人。
2019-09-07 21:09:19最後は滑落死した冒険家のディーン・ポッターやダン・オスマン。 恐怖はあってそれを克服することに喜びを見出していたのかもしれないし、スリルを楽しみ過ぎたのかもしれないけれど。 Dan Osman - Awesome youtu.be/8e0yXMa708Y @YouTubeさんから
2019-09-07 21:19:39@YouTube こうした冒険家とは種類が違うかもしれないが、僕の友達にも、何にも怖がることのない奴が、いた。まだ僕が二十代の頃の話になるが。 最初は物怖じしない奴くらいに思っていたのだが。 仲良くなってみると、例えば、ホラー映画の話をしても、何が怖いのか分からないという。
2019-09-07 21:29:42@YouTube 夜中に奥多摩方面にドライブに出かけ、山頂近くの駐車場で車を降りると辺りは静まり返って、まばらに立つ照明の外は真っ暗だ。そんな時も、ここは見晴らしが悪いといって、山の暗闇にズカズカと分け入って行ってしまう。 喜怒哀楽が無いわけじゃ無い。 ただ、恐怖心というものがないという感じだった。
2019-09-07 21:36:21