東野圭吾「麒麟の翼」

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「親しい人から電話がかかってきて、電話番号が変わったと言われたのではないかと思ったんです。ご本人に確かめたところ、やはりそうでした。大学生になるお孫さんからかかってきて、そのように言われたんだそうです。そこで、登録内容を変更する前に、まずは古い方の電話番号にかけてみて

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下さいと進言しました」「それってもしかして・・・」ええ、と加賀は頷いた。「振り込め詐欺の疑いがあります。よくある手口です。前もって、登録してある電話番号を変更させておく。後日、改めて電話をかける。着信には孫の名前が出ているので、別人だとは思わない」－東野圭吾「麒麟の翼」

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「言っておくがな、松宮、もしお前が結婚して子供を作ったとして、その子供が女の子だった場合には、中学生に上がる時が別れの時だと思っておけ。嫁入りのときなんかじゃない」－東野圭吾「麒麟の翼」

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父親は死んでしまった。いくら犯人が逮捕され、そしてもし死刑になったところで、殺された人間が生き返ることはない。おそらく明日からは、物理的にも精神的にも苦しい日々が始まるだろう。行く末の絶望的な暗さにめまいがしそうだった。－東野圭吾「麒麟の翼」

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「だけどそのインターロックを殺してあるところが結構あるんですよね」「殺す?」「利かないようにしてあるってことです。だって、ちょっとしたことでいちいち止まってたら、仕事にならないじゃないですか。製造ラインみたいにいくつかの機械がつながってる場合だと、他の作業も滞っちゃうわけ

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ですから。だから部品が機械に引っ掛かるとかした場合でも、その機械を動かしたまま、作業員が手でさっと取り除いたりするんです」－東野圭吾「麒麟の翼」

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「上の人間がどう判断するかなんてことは、下のものは考えなくていい。俺たちのすべきことは、事実を明らかにしていくことだ。固定観念や先入観を捨て、事実だけを拾い上げていけば、まったく想像もしていなかったものが見えてくることもある」－東野圭吾「麒麟の翼」

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「後遺症どころか死んでる奴だっているよ。事故を届けないから、現場は危険なままで放置されるでしょ。それでまた事故が起きるってわけ。だけど、全部隠しちゃうんだよ」－東野圭吾「麒麟の翼」

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「マスコミが嗅ぎつけたんじゃなくて、おそらく課長か理事官あたりが情報を流したんだろう。これで八島に万一のことがあった場合でも、被疑者死亡で話を進めやすくなった」－東野圭吾「麒麟の翼」

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奥さん、と加賀が低くいった。「労災隠しは犯罪です。良いことでは決してありません。恨まれることもあり得ます。しかし、殺されても仕方のない人間なんてこの世にはひとりもいません」－東野圭吾「麒麟の翼」

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「こんな中途半端な形で事件を終わらせても、誰も救われない。何としてでも、真相を突き止めるぞ」呟くような小声だが、決意を秘めた口調だった。－東野圭吾「麒麟の翼」

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中原さん、と加賀が落ち着いた口調で呼びかけてきた。「どうか、本当のことを話してください。嘘からは何も生まれない。彼を信じているんでしょう?」－東野圭吾「麒麟の翼」

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「おかげさまでね。恭さん・・・加賀さんが自分で言えばいいのに。どうせ係長は、誰が推理したのか分かってる」「物事には役割というものがある。少しは大人になれ」－東野圭吾「麒麟の翼」

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「殺人事件ってのは、癌細胞みたいなものだ。ひと度冒されたら、苦しみが周囲に広がっていく。犯人がつかまろうが、捜査が終結しようが、その侵蝕を止めることは難しい」－東野圭吾「麒麟の翼」

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「加賀さん、知らないんですか。女っていうのは、少しでも得をするのが大好きなんです。だから試写会の申し込みなんかも、面倒がらずにやっちゃう。その点、男の人って、手間のかかることをするぐらいなら、お金を払ったほうがいいっていう人のほうが多いでしょ」－東野圭吾「麒麟の翼」

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加賀は冷徹そうな眼差しを向けてくる。刑事の目だ、と香織は思った。事実だけを信用し、情などに流されることは断じてないと心に決めている顔だ。今の彼女の主張も、彼の心を揺さぶることはなかっただろう。－東野圭吾「麒麟の翼」

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加賀が彼女の方を向いた。「もし世の中を甘くみているのなら安心だ。どこにも光がないと絶望している方が、よほど心配です」－東野圭吾「麒麟の翼」

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松宮は従兄でもある先輩刑事を見つめた。日本橋署の加賀は切れ者だという評判は捜査一課でも定着している。確かに切れるが、最大の武器は気味が悪いほどの粘り強さだ。改めて、思い知らされた。－東野圭吾「麒麟の翼」

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加賀のいったことは正しい。夢をもたせるようなことを、軽々に口にすべきではない。－東野圭吾「麒麟の翼」

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「元気なころに交わした約束など、何の意味もないといってるんです。加賀さん、あなたは人の死と向き合ったことがありますか」「何度もありますよ。数えきれないほどにね。何しろ、それが仕事ですから」金森登紀子はゆっくりとかぶりをふった。「あなたが見てきたのは死体であって人間ではありません。

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私は、死んでいく人たちを見てきました。何度も。死を間近に迎えたとき、人間は本当の心を取り戻します。プライドや意地と言ったものを捨て、自分の最後の願いと向き合うんです。彼らが発するメッセージを受け止めるのは生きている者の義務です。加賀さん、あなたはその義務を放棄しました」－東野圭吾

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「刑事は、こんなふうに解釈するんですよ。話を聞きたいのに、なかなか話してもらえないときは、本人にとって何か都合の悪いことでもあるのかな、と」－東野圭吾「麒麟の翼」

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「目的を明かせば、質問される側に先入観が生まれます。こちらとしては、そういうものに左右されない答えを聞きたいのです」－東野圭吾「麒麟の翼」

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「公式を覚えれば、いろいろな問題が解けるようになる。ところが最初に間違ったことを覚えてしまうと、何度でも同じ間違いを犯すことになる。そういうことってありますよね」－東野圭吾「麒麟の翼」

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そんなくだらないことは止めようぜ－その一言をいうべきだった。だがいえなかった。空気を読めない奴だと思われるのが嫌だった。もしかしたら杉野も、そしていいだした黒沢でさえもそうだったのかもしれない。－東野圭吾「麒麟の翼」