思いもよらないの恋

よつげ @Eight_os

３５０ 期待して痛い目見ることだから もう吹っ切ったことではあるけど 攻めて傷つくのはもうこりごり。性に合わないって気づいた。 かといって…新しい恋を探す気にもなれなくて この気持ちを埋めてくれるような生徒も、もう居ない。 「…飲むか」 結局お酒に逃げるオチ。 #エイトで妄想

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３５１ 夜、コンビニでお酒を買って ふと…思いついて いつかの公園に向かった。 安田くんと二人で飲んだところだ。 そう思って、ああ、私の中でここは安田くんとの思い出の場所なんだと気づく。 もう大倉先生との場所じゃない。 ベンチに座って、プシュッと缶を開けた #エイトで妄想

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３５２ その時 「梓先生？」 聞き覚えのある声がして振り向くと 「え、藤木さん！？」 「もう大倉なんだなー、これが」 「あ、そっか」 大学生になってちょっと大人びたあの子は、私の隣に腰を下ろす。 「…あ、ごめんね 結婚式行けなくて」 「ほんとですよ」 #エイトで妄想

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３５３ 章ちゃん明らかに元気なかったし、と言われ何とも言えない気持ちになる。 「…もっといい女になるんじゃなかったんですか」 そんなことを言われて、バッと勢いよく振り向く。 「え、何でそれ」 「あー…まあ…ははw てか、質問答えてください！」 「…そうだね」 #エイトで妄想

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３５４ もっといい女になって もっといい男と結婚してやるって 叫んだあの時 ただ隣で笑ってくれていた安田くんが 今までで一番いい男だった。 「これでいいんだよ」 結局何も変われていない私にはもったいないくらい。 「安田くんは…これから色んな人に出会う」 #エイトで妄想

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３５５ 私は、もういつの恋を最後にしようって悩んでるくらいだけど。 安田くんにはまだまだ先がある。 「その中で、私なんかよりずっとずっと素敵な人を見つけるかもしれない その方が…ずっといい」 絞り出すように言った声は、彼女にどう聞こえただろうか。 「…章ちゃんはさ」 #エイトで妄想

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３５６ 藤木さんが、ポツリポツリと話し始める。 「私の親友なんだよ」 「…」 「私が、章ちゃんのことフッても 二年も三年も、ずっと親友で居てくれた。そういう人なんだよ」 彼女は私の方は向かなかった。 「何があったか、詳しくは聞いてないし、聞かないけど」 #エイトで妄想

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３５７ でも 「先生がいい女じゃないとこって、上手くいかない恋愛言い訳にして 前向いてないとこなんじゃないの」 『昼休みくらい他人と関わらな 人間腐るで？』 ストレートな言葉で顔を上げさせるのは 彼女も安田くんも一緒だ。 #エイトで妄想

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３５８ 「今度章ちゃん傷つけたら許しませんからね！元ライバル！」 そんな風に言って笑って、「それでは！」と去っていく。 「…ふぅ」 …隣にもう貴方は居ないけど もう一度、根拠のない希望だけを盾に歩き出してみようか。 周りの景色は、意外と悪いもんじゃない。 「…よし」 #エイトで妄想

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３５９ それからの私は 少なくとも前よりは積極的になったのかな、と思う。 人の誘いにはだいたい乗るようになった。 面白い話なんか何一つ出来ないけど。 仕事も、少しだけ真面目に取り組むようになった、つもり。 それだけでも 下を向いてた視線をちょっと上げただけでも #エイトで妄想

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３６０ 見える世界が変わることもある。 それを教えてくれたのは…安田くんだと思うから。 それは大切にしていきたい。 あれから何人か付き合った人はいたけど 長続きなんかしなくなっちゃうくらい たった一つ忘れられない、恋の相手だから。 #エイトで妄想

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３６１ 今後悔してるのは 安田くんに何も聞けなかったこと。 実を言うと、あれからLINE送ってみたけど 既読もつかなかった。 携帯変えちゃったのかもしれない。 新生活だし、新しい友達も増えるからね。 何はともあれ、完全に手段は消えた。 「…もしかしたら既に忘れられてる？」 #エイトで妄想

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３６２ 今度こそ幸せになりたいんじゃないの？私。 そう思ってまた仕事に集中。 少しは誰かにとって、魅力的に映る女になれてるといいんだけど。 そっと胸ポケットの感覚を確かめる。 安田くんから貰った『予約』がそこにある。 少しだけ、安田くんに力を貰えてる気分になる。 #エイトで妄想

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３６３ あっという間に二年が過ぎた。 「今日から教育実習生何人か来るらしいですよ」 「へー、どこのクラスですか？」 「一年の一～三組までと、二年の選抜クラスですね、確か」 そっか、教育実習生か。 ま、今年も担任持ってない私にはさほど関係ない。 #エイトで妄想

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３６４ 私は私で授業があるので音楽準備室へと急ぐ。 階段の向こうからおぉー！と声が上がってるけど、気にも留めない。 だから職員室の喧騒を、私は知らなかった。 授業の楽譜を取り出して、キーボードに手を置く。 少しは練習しとかなきゃね。 いざ弾こうとしたその時 #エイトで妄想

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３６５ 扉が開く音がした。 ぱっと振り向くと、そこには 「…せーんせ」 私の中からずっと消えてくれなかった人。 今のちょっと頑張れるようになった私を、一番好きになってもらいたかった人。 「安田くん」 昔と変わらない笑顔が、そこにはあった。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/ND93lJKqQR

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３６６ 「もぉ〜、職員室おらんかったから探したわ」 「それはごめん…え、でも何で」 安田くんはニコッと笑って 胸元に下げていた名札を見せる。 「本日より一年二組で教育実習させていただく安田章大です」 「…あ」 え、実習生！？と思ったけど そっか…もう三年生なのか。 #エイトで妄想

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３６７ …いや、え？ 「待って待って、頭が追いつかない」 「あははw よーするに、俺も大人になったってことですよ もう一緒にお酒も飲めるし」 安田くんは眩しそうに目を細めて笑った。 「…やっと大人になれたよ」 「うん」 私もね #エイトで妄想

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３６８ たぶんやっと、安田くんに見合うような大人になれた気がするよ。 「せんせの言う通り…楽しいことばっかりでもないけど」 「うんw」 「でも、充実してる」 …そうだね。 私も、自分が充実してるって、思えるようになったよ。 付き合った人と上手くいかない日は凹むけど。 #エイトで妄想

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３６９ 「…ほんまは、実習終わってからって思っててんけど」 「？」 安田くんが、恥ずかしそうに切り出す。 「梓せんせ、今その…付き合ってる人とか」 「ふふ、いないよ？」 「結婚…とか」 「独身フリーですw」 え、何この質問。 「予約の品…まだ、持ってる？」 「…あ！」 #エイトで妄想

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３７０ 私は胸ポケットから安田くんに貰ったボタンを取り出す。 「これ？」 「それ！ よかったぁ、せんせのことやから無くしてると思ったw」 「どんなイメージなの私w」 笑いながら、ちょっと泣きそうになる。 「…あのね、梓せんせ」 #エイトで妄想

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３７１ ボタンを持つ私の手に、安田くんが自分の手を重ねて、ぎゅっと握りしめる。 「これ、好きな人に贈るやつやねんで」 「…あ！第二ボタンなのこれ！？」 「気づいてへんかったん？ ちゃんと心臓に一番近いやつ言うたやん！」 もぉって、頬を膨らませる安田くん。 #エイトで妄想

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３７２ 「ていうか、一番大事なとこ今さらっと聞き流したやろ」 「へ？」 安田くんをキョトンとした顔で見つめると 安田くんは真剣な顔で私を見つめる。 「ずっと、好きでした」 …一瞬 理解が追いつかなくて 声も上手く出なかった。 何とか咀嚼して そしたら顔が熱くなって #エイトで妄想

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３７３ 涙が、出そうで。 「俺、あの時よりは大人になったと…思うので。 だからこれからは、俺のこともっと頼って欲しいし、誰よりも傍に居たいです」 これって、あの…告白であってる？ 私、今、安田くんに。 「貴女の未来を、一緒に作r」 ｷｰﾝｺｰﾝｶｰﾝｺｰﾝ… え。 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

３７４ 「あぁぁもぉ！！！」 「…ふ」 「嘘やん！普通こんなタイミングでチャイム鳴る！？誰か見とったんちゃう！？」 「はははw」 「ちょっと！何笑てんの！」 いやだって…タイミングの悪さったらないし 安田くんの怒り方も可愛いし 出そうだった涙は引っ込んだ。 #エイトで妄想