ぼくっこ

よつげ @Eight_os

ぼくっこ #エイトで妄想 pic.twitter.com/lt2bzTcvTv

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１ 「おしっ」 おニューの自転車に跨りペダルを漕いだ。 どこか新しさを感じさせる風が僕の耳元を爽快に吹き抜ける。 …この距離チャリ使わずとも１０分くらいなんだけどね。 ちょっとドキドキするな。 あっという間にその…とある男子校の駐輪場に入った。 ｷｨｰｯ #エイトで妄想

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２ 急ブレーキ。 見たところ駐輪場は既に満杯。 「ギャハハハハ！」 「お前まじそれないわｗｗｗ」 さらには数台の自転車に寄りかかって先輩と思われる男子生徒数名がバカ騒ぎしている。 あのー… 一応今日、入学式なんですけど…。 #エイトで妄想

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３ しかもそのうちの一人の足が、僕のチャリを唯一入れ込めそうな隙間を占領していて。 おめぇらほんとに先輩だよな？と言いたくなる。 仕方ない。 …腹を括るしかない。 「あの…」 聞こえていないのか無視。 僕は大きく息を吸った。 「…あのっ！！」 #エイトで妄想

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４ 予想以上、駐輪場いっぱいに響き渡るかと思うような大声が出てしまって。 「あ？」 これは流石に先輩方も振り向いた。（但し柄悪い） 「自転車、入れたいんで 足…どけてもらえませんか」 僕の勇気を振り絞ったその言葉は彼らの中で一瞬の間をもって消化された後 #エイトで妄想

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５ 先刻のようにガハガハと笑い始めた。 何がおかしいんだよ…！ 「ちっせー！女じゃねーの！？」 「君可愛いじゃん、一回どう？w」 「自転車ぁ、入れたいんでぇ♡」 あーうるさい。 そりゃ男に見えないって言われるのは覚悟してたけどさ… けどこれ以上言うわけにもいかない。 #エイトで妄想

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６ いたたまれなくなってその場を去ろうとハンドルを握る手に力を込めた。 その時だった。 耳の横を、自転車とは違った爽やかな風が吹き抜けたのは。 「…普通に迷惑っすよ、先輩」 僕より背の高いその人を見上げると、黒い凛とした双眸が一瞬こちらを捉えた。 #エイトで妄想

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７ そうしてその人は徐に、自転車のサドルに寄りかかったままの彼らの方へ一歩歩み寄ると ｶﾞｯ 「！？」 手を伸ばして先輩の頭を殴…らずにわざと先輩の耳を掠めるようにカゴの中の物を掴んだ。 あのケース… 確か、トランペット。 「お前… ２年の横山…」 #エイトで妄想

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８ …さっきも思ったけど、この人この柄悪い人達の後輩なんだ… 横山と呼ばれたその人は、先輩方をしっかりと睨めつけて、 「これ俺のチャリっすから はよどいてくれんと、ペットぶち当てますよ？ 音変わってもうたらもちろん弁償で」 冷ややかに言い放った。 #エイトで妄想

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９ 僕と、横山さんと、先輩方の間にまた風が吹くのを感じた、気がした。 先輩方は舌打ちしたり何かブツブツ言い残しながらその場を去っていった。 すごい…かっこいい。 改めて横山さんを見上げる。 するとその人もさらさらとした黒い前髪を小さく揺らしつつこちらを向いた。 #エイトで妄想

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１０ 黒く澄んだ瞳の美しさに思わずドキッとする。 「１年？」 「は、はい」 「…ここ、はよ入れたら」 あ。 思い出したようにチャリをスペースに入れる。 「あの、ありがとうございました」 「別に、忘れもん取りに来ただけやし」 手元のトランペットケースを少し持ち上げる。 #エイトで妄想

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１１ あ、そっか。 別に僕が困ってたから助けたわけではないのね。 「あー…でも」 横山さんが口を開く。 その整った顔をちゃんと見上げて次の言葉を待ち受けた。 「…偉かったやん、逃げんで」 その言葉に、息を呑む。 それが、僕が最初に知った、 『横山さん』の衝撃。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/jLS5VmPDGx

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１２ 僕のクラスは１年８組。 一クラス３０人くらいの少人数なクラス。 入学後何日か経って慣れたから言うけど、当初僕は「おはよう！」と言って教室に入っていた。 けど初日ふわっとした髪でメガネの男の子に訝しげな目で見られて、 ようやく他が挨拶なんかしてないのに気づいた。 #エイトで妄想

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１３ みんなは僕にけっこう話しかけてくるけど、何となくその目線も何か探っているような気がしてならない。 そのふわ髪オタクくん（←）が一番露骨だ。 まあしょうがない 他の男の子達に比べたら小柄だし… そして言い忘れてた 横山さんは、あれから見ていない。 #エイトで妄想

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１４ ただ、隣の席で、一番最初に人懐っこい笑顔で話しかけてくれた安田くんが、その詳細を教えてくれた。 「横山先輩は、ここら辺やと有名やで？」 安田くんいわく彼は 現在２年生で 腕っぷしはそこそこ強くて 中学ではバスケ部で 今はシンフォニック部（なんだその部活） #エイトで妄想

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１５ そして、この男子校の生徒にしては珍しく、女子のファンクラブがあるらしい。 「まああれだけ綺麗な顔してるしなぁ、 女子のとは言うたけど、何人か男も入ってるって噂やで」 …男で入ってどうするんだろう…。 しかし色々と情報を聞けたのはかなりの収穫だったと思う。 #エイトで妄想

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１６ 少なくとも安田くんとは友だちになれそうだし なんだかんだ高校生活、上手く行きそう！ と、思っていたのに… 「なぁなぁ真白くん」 例の、ふわ髪メガネの男子がある日話しかけてきた。 いつもの取り巻きっぽい男子はいない。 人気者なのにどうしたんだろ。 #エイトで妄想

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１７ そう思っていたら 「いや…」 その子は、やおら僕の胸倉を掴んで僕を立たせると 顔を近づけてきた や、待って、流石にこれは… 顔が赤くなるのを感じる。 しかしその顔は僕の耳元に寄って 決定的な一言が放たれた。 「…真白『ちゃん』って、呼んだ方がええかな？」 #エイトで妄想

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１８ 前言撤回。 完全に終わった。 さよなら、僕の平和な学校生活。 「君…女の子やろ？」 意地悪く笑ったヲタ系の人気者なそいつは そいつの名は！ 丸山隆平といったのでした。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/vqFJDunO8S

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１９ 丸山隆平。 同じ１年８組の２３番。 「にーさんやでっ！」って周りには言ってる。 恐らくあれが表の顔。 そのおかげで彼の周りには大概男子の取り巻きがいる。要するに人気者。 いや、サブカル男子の星、という言い方の方が正しい。 空き時間はマンガを読んでいる。 #エイトで妄想

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２０ そんな彼を僕は図書館で適当に借りた小説片手に睨みつけている。 当の本人はたまーに僕の目線に気づいては ふっと鼻で笑うだけ。 …あの後、行われた会話を話しておかなければならない。 「女の子やのに『僕』なんて使って 頑張り屋さんやなぁ〜？笑」 「や、僕呼びは元から」 #エイトで妄想

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２１ 「え？じゃあ真白ちゃんもそういう民…いやあかんあかん」 「は？」 「こんなんがぼくっことか夢が壊れる」 なんですと！ 思想と表現の自由は！！ 「お前みたいなんが僕呼びとか許さへん！ 僕呼びしてええのは二次元クラスの可愛い女の子だけや！」 ひ、ひどい(泣) #エイトで妄想

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２２ …まあ、後からこうやって睨みつけるようになって、あの発言は差別とかでなく、単に自分流の強いこだわりだとわかったのだけど。 「…まあとにかく、これからもここにおりたいんやったら…」 「え」 「女やってことバラされたくなかったら…」 「え、え」 #エイトで妄想

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２３ 「お前、明日から僕の子分な？」 「でえええ！？子分！？」 「あ？嫌なら今ここで大声でバラすで」 「…ウケタマワリマシタ」 「あ、あと僕の前では僕呼びも禁止なー？ これ以上夢を壊さんといて」 「…さー、いえっさー」 と、いうわけで #エイトで妄想

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２４ 今日も今日とて丸山くんのお昼のパンを朝イチで買ってきて（パシリ） 睨みつけている。👈今ここ …いつか黒縁メガネかち割ってやる… 絶対子分脱出してやる！！ うー！(泣) #エイトで妄想 pic.twitter.com/larmNprDTi

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