かにまとめ

かにぴ @yamatanokani

寝起きに目の前におっさんの顔があったのでなんとなく撫でたら「な、なんだよォ。出てったんじゃねえのかよ」と口元をもにょもにょさせながら嬉しそうに笑ったので、成り上がりとか使命とかクソどうでもいい…このおっさんを幸せにしたい…と勝手にフラグを立たせた。結婚だ結婚。こんなもん結婚だ。

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「今日からここに住む。これは家賃」と突然大金を押し付けて居座る姿勢の主人公に、この世間知らずっぽいおぼっちゃんは自分みたいな人間がよっぽと珍しかったんだろう。飽きるまで観察するつもりなんだ。と、認識するおっさんであったが、余所者ゆえかこの街の誰よりも優しいので正直嬉しい

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この小汚いおっさんに嫌気がさしていなくなるまでの間くらい、優しくしてくれるのならなんでもお返ししてあげたいと思うくらいには追い詰められていてギリギリ。

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「酒買って来たからこれ飲んで待ってて。つまみもあるからな」と冒険者時代でも飲んだことの無い高級ワインを出されてちびちび飲みながらお留守番していた一日のうちに、大家から土地の権利買ってボロ小屋が即日改修(魔法って便利)され、高そうな家具がドンドコ運ばれる

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高そうな家具の搬入と同時に家にいる小汚いおっさんは放り出されるけど、主人公に「これは俺のだから良いんだ」と回収されて「あれ？俺これ奴隷にされた？金持ちが飼ってるやつか？」と誤認するけど、その日のうちに背中も足も古傷を治されて昔のように動けるようになった

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「一生大事にするから俺のものになってくれ」と指輪を渡されて、誤認は確信へ。なぜならこの世界に誓いの言葉も誓いの指輪もないから。しかし寄る辺なき者だったおっさんには、この絶対的保護者という存在はあまりにも甘美だった。俺の主人だ。俺の飼い主だ。俺を守ってくれる人だ！

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良い服を着せられてｽｺﾞｲ=ﾁｶﾗの余波で現役よりも動ける身体になってこざっぱりしたおっさんと、この国のまわりでしか冒険しない神様異世界トリップ主人公の、あまり平和じゃないけど主人公の意志が強すぎて強制的に平和になるはなし

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『聞こえ…ます…か…いま…貴方の心に…直接…話しかけて…います……勇者よ……世界…を…護る…の…です……』「妻が寝てるので静かにしてください」『せめて…子を成せる…女に……』「うるせえ！！！！俺はこのおっさんを幸せにするって決めたんだよ！！！！一昨日来やがれ！！！！」

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おっさんは魔法が使えないので、主人公がサラッとやらかした古傷を治すのも家を建てるのもやれば出来ることだと思ってるけど、神話級の手腕です。

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うすぎたねえ乞食酔っ払いおっさんの時代を知ってる輩に絡まれても、ｽｺﾞｲ=ﾁｶﾗの余波で能力値がめちゃくちゃ底上げされてるのでシュッと逃げれるし、そもそも昔はちゃんと冒険者が出来ていたので人はどう殴ったら痛いとかのことは理解してる。

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自分の飼い主が「これからこいつはお前らの知らないような美味いものを食べて良い服を着て良い家具に囲まれて面白おかしく愉快に生きていくんだ。うらやめ」と言って手を繋いで家まで一緒に帰ってくれるから、今が人生のピークなんだなあと思ってニコニコしてる。

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ピークが来れば落ちるだけなので、いつか足を潰してからのあの頃よりも酷い目にあってズタボロになって死ぬんだろうなと思いながら、左手の薬指につけたリングを唇でなぞる。これだけは、没収されたくないなあ。

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斥候なのにヘマをした仲間を逃がすために囮になって足を潰し、命からがら逃げ果せたのに「お前がちゃんと索敵しなかったからだ」と言われてチーム離脱させられたまだ若い頃のおっさん

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すぐ死ぬと思われたのにずるずると生き残ってしまったから辛いことばかりだったけど、最後がこれなら良いかなあと満足している。どんなになっても毎日ちゃんと女神様にお祈りしていたから、これはご褒美だ。

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敬虔な女神教徒の家に生まれたので、信仰はしっかりと根付いてるおっさん。飼い主(主観)が毎日女神に中指立てて「うるせえ！！俺はこいつと幸せに生きて死ぬ！世界は他の人に頼んでください！」と喧嘩してるなんて知る由もない。

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最近では女神も『うるさくありません！！二人で幸せになるのは結構ですが、せめて役割はこなして頂きませんと！！』と普通に怒鳴り返してきてる。ちょっと仲良くなってるかんじする。

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左手の薬指の指輪がこの世界に存在しない高魔力保有の金属で出来ていたため、指輪を狙われて指ごと取られそうになった時に「殺せ殺せ殺せ！！殺してくれ！！！早く！！！殺して！！！！」と叫ぶおっさん

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ピークの終わりが来た。その枷が無くなったらもうダメだ。指なんてどうでもいいから、それを取るなら殺してからにしてくれ。死なせてくれ。もう嫌だ。「たすけて、〇」

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「そうだね。それが正解だ」「ぅえ…？」｢あのなぁ、伴侶を助けに来たら殺してくれと叫んでる姿を見た俺の気持ち考えて欲しいなあ｣｢え…おめでとう…？｣｢意思疎通出来てなくない？｣｢いつの間に伴侶なんて出来たんだ、水くせぇなあ｣｢おっとー？｣

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べしょべしょの情けない顔で｢俺だってお祝いの歌くらいうたえるんだぜ｣と震えた声でいうおっさんは、主人公がつくった血溜まりの中心で凄惨な死体に囲まれてるのに主人公しか見ていない。

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｢俺の生まれたところでは、この指にリングを嵌めることが伴侶の証明なんだよね｣｢……へ｣｢一生大事にするから、俺の伴侶になってくれませんか｣千切れた指が光に痛みが吸われるように、元の形に戻っていく。銀の指輪が血塗れの手の中できらきらと輝く。

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二人は幸せなキスをして終了 ※世界の脅威は普通に残ってる

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きちんと髭を剃った日に頬を撫でくり回されながら｢こっちもいいけど、髭がある方が男らしくて好きだなあ｣と言われてから無精髭は残してるおっさん

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たまに昔飲んでいた混ざりものだらけの安い酒を飲む日もある。自分と同じ値段の酒。毒が多くて全部忘れられる液体。痛みを抑える麻酔の一種。

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隣で顰めっ面して｢舌が痛い｣と唸ってる伴侶が可愛いので今日も幸せなおっさん。女神様ありがとう。