まず先回の訂正。3a earfoðhwileを時間を表す与格と解釈したけど、どうもþrowadeの目的語の対格とする解釈が標準らしいです。hwīlは女性・強変化で、単数斜格はすべて-eで終わるので、earfoðhwileを与格とする可能性もあるんですが…
2011-05-30 22:11:46では、6bから逐語訳「þærそこで(there) mec私を(me) oft bigeat捉えた/nearo心配な(narrow) nihtwaco夜警が(night-waker) æt nacan, stefnan舟の舳先で」
2011-05-30 22:17:306bの出だしが小文字で始まっていますが、これは編者(恐らくKrapp & Dobbie)が、1つの文として続いているという解釈をしているためです。SweetやMitchell & Robinson http://amzn.to/jrgZIz は、ここで新しく文を始めています。
2011-05-30 22:22:056b þærは「そこで」としましたが、文が前から続いているとすると、関係詞'where'と解釈したほうがよさそうかも?つまり、5aのin ceoleに対応するという解釈です
2011-05-30 22:28:36mecは1人称単数対格。後に与格のmeと融合して、今のmeになります。ちなみに2人称単数与格もþecでしたが、与格þeと融合し、theeになりました。ただ、対格の-cの形はOEの中でも古いテキストに見られるものとされています。(Quirk & Wrenn p. 38)
2011-05-30 22:32:527a nearoは今のnarrowですが、ここでは比喩的に「心配な」。æt nacan stefnanのnaca 「舟」は男性名詞。次行のheの解釈に関わります
2011-05-30 22:35:418 逐語訳「þonne~の時(then) heそれ(he) be~の側を(by) clifum崖(cliff) cnossað(急ぐ).」
2011-05-30 22:37:518a heを「それ」としましたが、これは7bのnaca(男性名詞)を受けているのでheになっているため。7aのnihtwacoではありません。
2011-05-30 22:39:488b cnossaðが解釈の上で問題となります。まず時制が現在になってる点に注意。習慣を表す現在として解釈しましょう。で、その意味がもっと問題に。Clark Hallでは'hit'の意味しかないのですが、この箇所には目的語となるべきものがないので、それはなさそう。
2011-05-30 22:42:34Gordon http://amzn.to/kU7xy6 は、自動詞で用いられるcnossianはここだけで、この部分は'dashes by the cliffs'と解釈するようにと注釈を付けているので、それに従っておきます。
2011-05-30 22:46:458b-10a「Calde寒さで(cold) geþrungen圧迫され/wæron mine fet私の足は(were my feet), forste霜で(frost) gebunden繋がれ(bind),/caldum clommum, 冷たい枷で」
2011-05-30 22:51:158b geþrungen、9b gebundenは共に過去分詞。9aのwæronと共に、受動態を作っています。8b Calde、9b forste、10a caldum clommumは全て与格。「手段」を表す具格的な用法です。
2011-05-30 22:55:2010b-11a 逐語訳「þærそこでは þa ceare心配事が(care) seofedun嘆いた/hat 熱いものが(hot) ymb heortan;心の周りで(heart)」
2011-05-30 22:58:4510b ceareは強変化女性名詞cearu(caru)の複数主格…なんですが、通常OEの文法書には、複数主格は-aと書いてあります。どうしたものか……
2011-05-30 23:01:34文法書によっては-eで終わる形を載せているものもありますが、Wright & Wright pp. 187-8 http://amzn.to/iY7Y8o の説明によると、-eが本来の形で、-aは他の活用形の類推だとか。ここでは深入りはしません
2011-05-30 23:08:36次のseofedunも問題です。通常、複数形過去の動詞は-onで終わるのですが、ここでは-unで終わっています。これはOE後期の形らしいです。そう言えば…と探してみたら、Beowulf 1280にもswæfunという形があります。
2011-05-30 23:13:0411a hatは、10b ceareに合わせて、本来はhateとなるべきなのですが(実際Sweetはそのように校訂している)、次の前置詞ymbが母音で始まっているので、その影響で語尾の-eが脱落したとすれば(その現象自体は珍しくない)、校訂は不要とのこと(Gordon)。
2011-05-30 23:16:1711b-12a 逐語訳「hungor飢えが(hunger) innan中で slat引き裂いた(slit)/ merewerges海に疲れた者の(-weary) mod気持ちを(mood).」
2011-05-30 23:19:2612a merewergesは、mere「海」とwerig「疲れた」(weary)からなる形容詞。でも、ここでは実質的に名詞として扱われていて、属格の語形になっている。詩では形容詞のこういう用法はいたって普通。
2011-05-30 23:22:47