ab07_tactさんの古英語講義その2

5
なべ @ab07_tact

で、なぜか「その1」になってしまった先回は6行目前半で終わりましたが、その続きを読みます。できれば5行ないし10行を

2011-05-30 22:04:14
なべ @ab07_tact

まず先回の訂正。3a earfoðhwileを時間を表す与格と解釈したけど、どうもþrowadeの目的語の対格とする解釈が標準らしいです。hwīlは女性・強変化で、単数斜格はすべて-eで終わるので、earfoðhwileを与格とする可能性もあるんですが…

2011-05-30 22:11:46
なべ @ab07_tact

では、6bから逐語訳「þærそこで(there) mec私を(me) oft bigeat捉えた/nearo心配な(narrow) nihtwaco夜警が(night-waker) æt nacan, stefnan舟の舳先で」

2011-05-30 22:17:30
なべ @ab07_tact

6bの出だしが小文字で始まっていますが、これは編者(恐らくKrapp & Dobbie)が、1つの文として続いているという解釈をしているためです。SweetやMitchell & Robinson http://amzn.to/jrgZIz は、ここで新しく文を始めています。

2011-05-30 22:22:05
なべ @ab07_tact

この辺、些細な事かも知れませんが、重要な意味を持つ場合もあるので、一応指摘しておきます。

2011-05-30 22:23:01
なべ @ab07_tact

6b þærは「そこで」としましたが、文が前から続いているとすると、関係詞'where'と解釈したほうがよさそうかも?つまり、5aのin ceoleに対応するという解釈です

2011-05-30 22:28:36
なべ @ab07_tact

mecは1人称単数対格。後に与格のmeと融合して、今のmeになります。ちなみに2人称単数与格もþecでしたが、与格þeと融合し、theeになりました。ただ、対格の-cの形はOEの中でも古いテキストに見られるものとされています。(Quirk & Wrenn p. 38)

2011-05-30 22:32:52
なべ @ab07_tact

7a nearoは今のnarrowですが、ここでは比喩的に「心配な」。æt nacan stefnanのnaca 「舟」は男性名詞。次行のheの解釈に関わります

2011-05-30 22:35:41
なべ @ab07_tact

8 逐語訳「þonne~の時(then) heそれ(he) be~の側を(by) clifum崖(cliff) cnossað(急ぐ).」

2011-05-30 22:37:51
なべ @ab07_tact

8a heを「それ」としましたが、これは7bのnaca(男性名詞)を受けているのでheになっているため。7aのnihtwacoではありません。

2011-05-30 22:39:48
なべ @ab07_tact

8b cnossaðが解釈の上で問題となります。まず時制が現在になってる点に注意。習慣を表す現在として解釈しましょう。で、その意味がもっと問題に。Clark Hallでは'hit'の意味しかないのですが、この箇所には目的語となるべきものがないので、それはなさそう。

2011-05-30 22:42:34
なべ @ab07_tact

Gordon http://amzn.to/kU7xy6 は、自動詞で用いられるcnossianはここだけで、この部分は'dashes by the cliffs'と解釈するようにと注釈を付けているので、それに従っておきます。

2011-05-30 22:46:45
なべ @ab07_tact

タヌきゅん『(*´Д`)』 http://t.co/Y4lNdYt (*´Д`) OE読むのも疲れるよねー

2011-05-30 22:48:06
なべ @ab07_tact

8b-10a「Calde寒さで(cold) geþrungen圧迫され/wæron mine fet私の足は(were my feet), forste霜で(frost) gebunden繋がれ(bind),/caldum clommum, 冷たい枷で」

2011-05-30 22:51:15
なべ @ab07_tact

OE詩では、同じ事を複数行にわたって言い換えるという技法が頻繁に用いられますが、この箇所もそのようになっています。

2011-05-30 22:52:29
なべ @ab07_tact

8b geþrungen、9b gebundenは共に過去分詞。9aのwæronと共に、受動態を作っています。8b Calde、9b forste、10a caldum clommumは全て与格。「手段」を表す具格的な用法です。

2011-05-30 22:55:20
なべ @ab07_tact

10b-11a 逐語訳「þærそこでは þa ceare心配事が(care) seofedun嘆いた/hat 熱いものが(hot) ymb heortan;心の周りで(heart)」

2011-05-30 22:58:45
なべ @ab07_tact

10b ceareは強変化女性名詞cearu(caru)の複数主格…なんですが、通常OEの文法書には、複数主格は-aと書いてあります。どうしたものか……

2011-05-30 23:01:34
なべ @ab07_tact

文法書によっては-eで終わる形を載せているものもありますが、Wright & Wright pp. 187-8 http://amzn.to/iY7Y8o の説明によると、-eが本来の形で、-aは他の活用形の類推だとか。ここでは深入りはしません

2011-05-30 23:08:36
なべ @ab07_tact

次のseofedunも問題です。通常、複数形過去の動詞は-onで終わるのですが、ここでは-unで終わっています。これはOE後期の形らしいです。そう言えば…と探してみたら、Beowulf 1280にもswæfunという形があります。

2011-05-30 23:13:04
なべ @ab07_tact

11a hatは、10b ceareに合わせて、本来はhateとなるべきなのですが(実際Sweetはそのように校訂している)、次の前置詞ymbが母音で始まっているので、その影響で語尾の-eが脱落したとすれば(その現象自体は珍しくない)、校訂は不要とのこと(Gordon)。

2011-05-30 23:16:17
なべ @ab07_tact

11b-12a 逐語訳「hungor飢えが(hunger) innan中で slat引き裂いた(slit)/ merewerges海に疲れた者の(-weary) mod気持ちを(mood).」

2011-05-30 23:19:26
なべ @ab07_tact

12a merewergesは、mere「海」とwerig「疲れた」(weary)からなる形容詞。でも、ここでは実質的に名詞として扱われていて、属格の語形になっている。詩では形容詞のこういう用法はいたって普通。

2011-05-30 23:22:47
なべ @ab07_tact

今日はこれくらいに。続きはまたいつか…(てかこのペースでやってたら全部読むのは無理だなw

2011-05-30 23:23:54