【FGO×ZZ】イラストレーション締め切り◯◯ザ◯ 1003話

72の藤丸と世界を救え @njslyr
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Φ @ahiruchan_phi

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2019-11-12 03:27:29
Φ @ahiruchan_phi

俺の名前はリッカ・フジマル。ごくごく平凡な人類最後のマスターだ。だが聞いて驚くな。俺は今、宇宙船の中にいる。窓の外には大小様々な星々。あらゆる国や時代で怪物退治をして骨だとか塵だとかを集めてきた俺でも、さすがに宇宙にまで出たのは初めてだ。

2019-11-12 03:28:05
Φ @ahiruchan_phi

何故こんなことになっているのか説明しよう。簡単に言って、俺は攫われたんだ。後輩との寛ぎのティータイム、優雅なスローライフ……そこに割り込んできたスペースシリカゲルだとかなんとか言う謎のサーヴァント。そいつは俺を生贄にするため宇宙に連れ去った。どうもそういうことらしい。

2019-11-12 03:28:44
Φ @ahiruchan_phi

だが俺は虜囚にしては随分と豪華な待遇が与えられている。広いユニットバス付きの部屋、清潔なベッド。ネットサーフィンのできる端末もあるし、限度額ありとはいえショッピングも自由だ。俺のやること為すことをいちいち見咎めてディスってくるナーサリーライムもいない。実に快適な環境だ。

2019-11-12 03:29:30
Φ @ahiruchan_phi

これで頼れる後輩が居てくれれば言うことはないんだが……。通販で箱買いした缶エーテルを片手に、窓の外を物憂げに見つめる俺。そんな完璧な画に酔っていると、不意に部屋の扉が開いた。「己の境遇を憂いているようですね。良いことです」そう言って部屋に入ってきた彼女こそ、俺の誘拐の実行犯だ。

2019-11-12 03:30:35
Φ @ahiruchan_phi

「随分と買い込みましたね」床に散乱した段ボールを足先で小突きながら、彼女……アシュタレトは呆れた様子で言う。「安物の粗悪エーテルは身体に毒と知らないのですか」「生憎、毒の効かない身体でね。そのせいで満足に酔えもしない」「飲酒制限を設けます。生贄に死なれては迷惑なので」

2019-11-12 03:31:12
Φ @ahiruchan_phi

「健康管理だって?冗談じゃないぜ」俺は腕を大きく振って抗議した。「どうせ俺の命はあと一週間かそこらなんだろ?余生を満喫するのが命に対する敬意ってもんだ」アシュタレトは取り合うつもりもないらしく、露骨に目を逸らした。そして部屋の隅に積まれた未開封の段ボールに目を留めた。「あれは?」

2019-11-12 03:31:49
Φ @ahiruchan_phi

「あー、アレはデジタルで絵を描くための機材だ」カルデアに来る前、俺はイラストレーターを志望していたこともあった。そんなことを思い出してつい注文してしまった、夢の残骸だ。「なぜ描かないのです」「アンタ、レオナルド・ダ・ヴィンチや葛飾北斎と同居しながら絵描きを名乗れるのか?無理だろ」

2019-11-12 03:32:38
Φ @ahiruchan_phi

「……初日にも言いましたが、あなたを助けるサーヴァントは最早いない」アシュタレトは感情を押し殺した声で告げる。「なら、その問題は既に解決したと言えるのでは?」「そう……なのか?」「私を讃える絵を描きなさい、マスター。そうすれば自由な飲酒を認めます」「それは本当だな!?」

2019-11-12 03:33:34
Φ @ahiruchan_phi

そうだ。ここにはダヴィンチも北斎も、ナーサリーライムもいない。俺は空き缶を投げ捨て、段ボール箱を乱暴に開けた。そして数時間後、俺は描きあげたんだ。名画とまではいかないが、会心の出来だ。現代社会の柵から心が解放されていて初めて芸術というものは生まれるのだと、心の底から実感した。

2019-11-12 03:34:25
Φ @ahiruchan_phi

「どうだ、描けたぜ!」俺の絵を見てアシュタレトは満足げに頷いた。俺も気分がいい。「約束通り、これで俺は飲酒自由だな!」「いや、まだだ」「エッ?」「一秒間に60枚のイラストを2時間分、あと42万1999枚のイラストをもって私の壮大なスペースファンタジー映画を完成させるのだ」「エッ?」

2019-11-12 03:36:44
Φ @ahiruchan_phi

困惑して目を向けた俺が見たものは、アシュタレトではなかった!「ビルビルビルビルーッ!」「うわぁぁぁ!」悪鬼の形相で口元に夥しい数の触手を蠢かせた悍ましい怪物!鼻先に開いた第3の目が恐ろしい!「描ケ!描クノダ!」「アアアアーッ!」「ソレガ私トノ契約ダッタハズ!」「アアアアーッ!」

2019-11-12 03:37:56
Φ @ahiruchan_phi

ぬめりを帯びた触手が伸びて俺の顔を撫で回し、気道に侵入してくる!あまりのことにめまいが!「貴様ヲ生贄ニ捧ゲ、私ハコノ蒼輝宇宙デ最強ノ絵パワーヲ手ニ入レルノダーッ!」「アアアアーッ!嫌だーーッ!」「逃ガサンゾーッ!」「アアアアーッ!」その時だった!

2019-11-12 03:41:52
Φ @ahiruchan_phi

ベッドがガタガタと揺れた。そしてベッドの下から妖怪めいた人影がぬるりと這い出した!「絵を描くと約束したのではなかったのですか」「エッ」「約束を破るのか!それはこのヨヒメンが許さぬ!カネデムシヤキニシマス!」「アアアアーッ!!」「正直!」「アアアアーッ!!」だがそのとき!

2019-11-12 03:42:48
Φ @ahiruchan_phi

「宅配!」KRAAASH!マイルームドアを粉砕してアマゾネスCEOがエントリーしてきた!CEOは鉄球を振り回して叫ぶ!「ハンコを寄越せ!或いは潰れて死ね!」「アアアアーッ!」「イノベーション!」「アアアアーッ!」まさに四面楚歌だ。俺の心に絶望が広がる……そして走馬灯めいて過去の記憶が蘇った。

2019-11-12 03:43:32
Φ @ahiruchan_phi

そう、それはエレメンタリースクールの絵画コンテストで努力賞を貰った日……。俺だって昔は、ただ純粋に楽しんで絵を描いていた……技術以前に、心があった。マシュが好いてくれていたのはそんな俺ではなかったのか……だが今ではもう……。三人の怪物が俺に迫る。もはや為すすべは無いのだ……。

2019-11-12 03:44:16
Φ @ahiruchan_phi

だがその瞬間!宇宙船の壁が何者かに食い破られ、外から闖入者が現れた!「姉が助けに来ましたよ!」スペースイルカに乗って宇宙の大海原を往くジャンヌダルクだ!「アアアアーッ!気圧がーーッ!」「弟クン、今助けますからね!」「アアアアアアーッ!」最早事態は混迷を極めていた!その時!

2019-11-12 03:45:16
Φ @ahiruchan_phi

CA-BOOM!突如、部屋の隅に置かれていたエーテル缶が爆発し、怪物たちを怯ませた!「アァァッ!」「ナンダ!」「コンプライアンス!」「ちょっと辛いです!」そして飛散した気体エーテルがひとところに集まり、見知ったある者の姿を形作る!その者とは!

2019-11-12 03:46:13
Φ @ahiruchan_phi

それは長くはためく触手を持ち、ギラギラと輝く宝石の眼が恐ろしい奇怪な存在だった!「イラストレーション締め切りゲイザー、参上!」「バカナー!」「怪しい奴です!」怪物四人は跳び退き、俺は解放された。「アンタ一体」「この宇宙には自然科学や魔術で解明できないことがたくさんある」

2019-11-12 03:47:19
Φ @ahiruchan_phi

「そしてそんな奴らを殲滅するのがこの私だ」ゲイザーは怪物たちに向き直った。「ニガシマセン」「リッカハ私ノ生贄ナノダ!」「弟です!」「エビデンス!」「喰らえ!熱視線!」ゲイザーの眼がビームを放った!「「「「ギャァァァァーッ!!」」」」怪物は光の粒子になって消え、静寂が戻った……。

2019-11-12 03:48:02
Φ @ahiruchan_phi

「あいつらは一体」「おそらくこのユニヴァースの人々が必死に生きてきたことによる歪みのようなものだ。それより忘れていることがあるだろう」俺は頭を捻った。まるで思い当たることがない。「なんのことだ」「このSW2イベントはもうすぐ終了だ。配布鯖が無いとはいえ呼符5枚とかを大切にしろ」

2019-11-12 03:49:31
Φ @ahiruchan_phi

「それはそうとしてイラストを描くのだ!」「アアアアーッ!?」ゲイザーは俺の前に紙とペンや魔術タブレットや粘土板を並べた。「この宇宙にはお前を待っているキャットがいる!それを描くのだ!」「アアアアーッ!!」「締め切りは今日中だぞ!」「アアアアーッ!!」May the ether be with you...

2019-11-12 03:52:16
Φ @ahiruchan_phi

イラストレーション締め切りゲイザー第1003話 〜ゲイザーウォーズ EP4.8〜 おしまい

2019-11-12 03:53:33
Φ @ahiruchan_phi

みんな宇宙のキャットに会いに行こうね キャットはずっと待ってるぞ pic.twitter.com/fQdAGRp16j

2019-11-12 03:56:43
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