核膜ダイナミクスと疾患についての論文紹介

Nature Review Molecular cell biology誌に掲載されたMechanisms and functions of nuclear envelope remodelingという総説について紹介した一連のツイートのまとめです。この十数年で大きく進歩した領域で核膜が小胞体と裏打ちタンパク質で構成されていること、細胞分裂の時の動態、細胞分化との関連がわかりやすく解説されています。
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Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス20」このラミンA:ラミンBの関係はマウスの組織において大まかに当てはまり、培養細胞でも培養皿の基質の剛性によっても変化する。要は細胞はその環境の変化に応じて核膜の固さを調節できるということだ。

2019-11-27 13:03:56
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス21」もちろん、核膜の固さを決めるのはラミンABの比ばかりではない。前述の通り、核内膜のタンパク質と相互作用するヘテロクロマチンも張力への抵抗性に貢献している。

2019-11-27 13:08:01
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス21」そもそも物理的な力をいかに細胞が受信するかを説明するには物理的な力がタンパク質間相互作用やタンパク質修飾をどのように変えるかなどを検討することになる。核の剛性を急速に高めるのに貢献する核内膜に存在するタンパク質の代表がemerinである。

2019-11-27 13:12:27
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス22」これは核のみを単離してから核と細胞骨格のリンカー(LINC)の一部であるnesprin1に物理的に働きかけるとemerinのチロシンがSRCキナーゼでリン酸化される。SRCとは懐かしい。

2019-11-27 14:49:22
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス23」物理的力に誘導されるemerinのリン酸化はLINCとラミンAの相互作用を強化する。さらにラミン自身も抗体への反応性が弱まり、リン酸基が外れるなど変化を起こし、ラミンフィラメントが安定化する。

2019-11-27 14:57:42
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス24」これらの反応は結局核膜の破裂からクロマチンを守るために起こる、核膜関連タンパク質のメッシュワークの強化につながっている。さらにこうした外力がかかり続けることで、外力に対応するための遺伝子発現変化も誘導される。具体例はラミンA遺伝子のポジティブフィードバック。

2019-11-27 15:01:31
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス24」物理的外力とこれらの核膜関連分子の発現制御がヒトの疾病と関連する例としては高血圧時の血管内皮や平滑筋細胞での遺伝子発現制御があるようだ。さらに筋ジストロフィーなどの遺伝病にも関連する。

2019-11-27 15:06:55
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス25」こうした細胞骨格の関与する形での核膜のリモデリングによって、細胞は狙った方向へ動くことが出来るようになる。細胞が細胞外マトリックスを通過するような極めて狭い領域を通過する際には、核膜はしなやかに変形する必要がある一方、破裂を避けるための一定の剛性も必要。

2019-11-27 15:17:29
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス26」核膜の可塑性と剛性のバランスをとるのがラミンA。ラミンAを極力少なくすると狭いところも通れる。ただ、少なすぎるとアポトーシスが誘導されるらしい。一方で、ラミンAに変異のある細胞や、人為的にラミンAの発現を低下させた細胞は細胞運動時に核膜が破裂することも。

2019-11-27 15:21:28
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス27」こうした細胞運動などの、物理的外力の関係した核膜の破綻を修復するのが前にも出てきたESCRT-III複合体。しかしながら、度重なる核膜の破綻はゲノムへの傷害を引き起こすものと予想される。

2019-11-27 15:26:09
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス28」(論文から離れて)実は今を去ること約17年前くらいか、私にとっての海外学会デビューはAACRであった。その時にタイムラプスで腫瘍細胞が細胞間質の狭い隙間を抜けて浸潤していく様子を紹介していたのがこの先生だったと思う。 jcb.rupress.org/content/185/2/…

2019-11-27 15:31:32
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス29」(論文から離れて)この時、Friedl先生は細胞が無理くり狭い空間を通る様子を聖書の「ラクダが針の穴を通るよりも難しい(でも腫瘍細胞は簡単)」というのを引用していたのが印象的だった。

2019-11-27 15:35:19
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス30」ここから有糸分裂。ちょっとお休みします。

2019-11-27 15:39:12

有糸分裂における核膜リモデリング

Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス31」そもそも有糸分裂は紡錘体が核内に存在するclosed mitosisと哺乳類などのような紡錘体が細胞質内に存在し、分裂中期(metaphase)で核膜が崩壊するのはopen mitosisと呼ばれる。closed mitosisはカビなどで認められるとか。

2019-11-28 11:00:53
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス31」酵母(分裂酵母も出芽酵母)も、このclosed mitosisなのだそうだが、中心体が核内に入る過程はNPCが生成される過程とよく似ているのだそうだ。

2019-11-28 11:03:13
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス31-1」哺乳類細胞で中心体=セントロソームにあたるものは酵母では「スピンドル極体」というのが正しい表現でした。訂正します。

2019-11-28 11:07:28
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス32」closed mitosisの場合、当然ながら染色体が分かれていく過程で核膜の表面積が増大していく必要がある。この際、重要な酵素がlipinである。これはホスファチジル酸からダイアシルグリセロールを合成し、脂質や構造リン脂質などの蓄積に貢献するとのこと。

2019-11-28 11:12:04
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス33」出芽酵母では核膜が拡大するためにはCdk1によるlipin活性の抑制が必要だとされており、lipinの抑制によってリン脂質の合成が促進され、核膜ー小胞体の拡張が可能になる。

2019-11-28 11:14:43
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス34」実は生物種を様々比較すると、酵母の一種ではこのlipinの活性制御がないため核膜が崩壊するものもあるようで、進化の過程で様々な選択が可能であったようだ。

2019-11-28 11:17:10
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス35」哺乳類などの有糸分裂では核膜が解体されるのだが、核膜内膜の裏打ちとなっているラミンでできている層やNPCはバラバラになり、核内膜のタンパク質とクロマチンの結合も外れる。

2019-11-28 11:20:18
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス36」有糸分裂のM期の前期における爆発的なタンパク質リン酸化によって、NPCや裏打ちタンパク質、内膜上のタンパク質とクロマチンなどとの相互作用が外れる。NPCについてはまず可溶性のサブユニットが放出され、それと同時に核膜の浸透バリアが消失する。

2019-11-28 11:25:56
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス37」こういった核膜の浸透度の上昇などはCDK1, PKC, AURKB, VRK1などの各種のリン酸化酵素が協調して機能することによる。例えば核膜とクロマチンの相互作用を引き離すような核膜タンパク質のリン酸化を誘導するのがVaccinia-related kinase 1である。

2019-11-28 11:31:35
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス37-1」核膜とクロマチンの相互作用を引き離すような核膜タンパク質のリン酸化を誘導するのがVaccinia-related kinase 1(VRK1)だけではなく、AURKBやCDK1, PKCもそう。例えばラミンAはCDK1, PKCによってリン酸化され、核内膜からはがれる。VRK1の基質はBAF。

2019-11-28 16:42:40
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス37-2」AURKBの基質は様々あるようだが、histone 3もそうらしい。

2019-11-28 16:55:47
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