核膜ダイナミクスと疾患についての論文紹介
温故知新シリーズ第二弾。核膜のダイナミクスについて説明した総説。大変面白い。私自身の勉強不足が露呈するが「核膜は小胞体の一種である」と喝破されていたのには驚いた。 nature.com/articles/nrm.2…
2019-11-21 09:47:15これから自分の不勉強をさらしていく形で、こちらの論文を紹介します。よく勉強されている人はすでに知っていることも多いと思うのですが、お目汚し失礼します。ハッシュタグをつけるほどではないので、「核膜ダイナミクス(番号)」と冒頭につけます
2019-11-22 10:05:07まずは核膜の構造や機能についての概説
「核膜ダイナミクス1」核膜には内膜と外膜(どちらも脂質二重層)がある。内膜側のタンパク質は小胞体上のリボソームで合成されて、小胞体とつながっている外膜を拡散で広がる。外膜と内膜の結合点にあるnuclear pore complexのところを超えて内膜側に入る。
2019-11-22 10:10:36「核膜ダイナミクス2」このNuclear Pore Complexは古いの役割を果たし、分子量60KD以下のものしか通さない。内膜の内側にはLaminA, LaminBが内張りの役割を果たし、角膜の物理的な支えとなっている。この2つのタンパク質のバランスで核の固さが決まってくる。
2019-11-22 10:13:10「核膜ダイナミクス3」このLaminとヘテロクロマチンが結合して、Lamina-associated-domainと呼ばれる構造を作る。これがゲノム構造の統合や遺伝子発現を調整するのみならず、核の物理的なレジリエンスをも提供する。DNAの遺伝情報以外の機能としてはNET以来な気もする。
2019-11-22 10:16:56「核膜ダイナミクス4」核膜はLINKという複合体を介して中間径フィラメントや微小管、アクチンなどと結合し、核と細胞骨格を関連付けている。このように核膜と周囲のオルガネラなどの構造とは密接に結合しているが、実際には生命活動に応じてダイナミックに変化する。
2019-11-22 10:20:36核膜の恒常性の維持(構成成分の取り込みについて)
「核膜ダイナミクス5」核と細胞質の間の物質交換に際し、重要なのがnuclear pore complex(NPC)だが、これがどのようにできるかはまだ諸説があるようだ。この時に内膜と外膜の結合点ができるのだが、先に両膜が結合してからNPCができるのか、NPCが内膜と外膜を結合させてできるのかは未確定(多分)
2019-11-22 10:23:47「核膜ダイナミクス6」NPCは多数のタンパク質の複合体だが、両親媒性のペプチドが複数かかわって生成されているようだ。その中のNUP153というペプチドは大きく屈曲する脂質二重層に親和性があり、内膜と外膜の境界にNPCが生成するのに貢献している可能性がある。
2019-11-22 10:28:56核膜構成成分の分解と品質管理
「核膜ダイナミクス7」核膜の機能を正常に維持するには構成成分の円滑な新陳代謝が重要で、中でもNPCのQCが大事らしい。特に途中までできているけどとまっちゃったようなものをきちんと処理する必要がある。
2019-11-22 10:32:04「核膜ダイナミクス8」そうした半端なNPCの作りかけみたいなものを検出修復する機構がある。Heh2タンパク質がそれを検知し、endosomal sorting complex required for transport III (ESCRT-III)複合体+Vps4をリクルートする。ESCRT-III複合体+Vps4は各種の膜のリモデリングや修復に機能する。
2019-11-22 10:37:19「核膜ダイナミクス9」このESCRTにはらせん形の構造があり、これが脂質二重膜の再構築に有用である様子が2015年のScience誌の論文(電顕写真がある) science.sciencemag.org/content/350/62…
2019-11-22 10:42:17「核膜ダイナミクス10」核膜は小胞体の一部なので、核内膜のタンパク質は小胞体タンパク質品質管理経路の対象となっている。ただし、この説を支持する知見は主として酵母から得られており後生動物ではあまりないようだ(ちょっとお休み)。
2019-11-22 10:47:58「核膜ダイナミクス11」後述することになるが、要は核膜の脂質二重層は有糸分裂の中期で核膜が崩壊する時に亡くなってしまうのではなくERに戻っているだけで、なくなっているのはラミンなどの核膜の内側のタンパク質やNPCなどである。
2019-11-22 14:05:02「核膜ダイナミクス12」これも後述することになるが、昔生化学の業界で一世を風靡していたProtein kinase Cがダイアシルグリセロールで活性化すること、それがどうして細胞増殖に関連していたかもこの論文で了解できた。
2019-11-22 15:35:10「核膜ダイナミクス13」さて、NPCは非常に安定なタンパク質複合体であり、特に中心部分の足場となる領域は半減期で半年程度の寿命があるようだ窒素のアイソトープを活用した研究などで判明。前述の、タンパクのフィルターをするような領域は新陳代謝が早いとのこと。
2019-11-27 12:38:12「核酸ダイナミクス14」この、NPCのコアの部分と辺縁の部分の新陳代謝の違いが、コア部分の交換の難しさ、ひいては酸化ストレスなどでのNPCの機能低下に関連すると考えられる。敷衍して、NPCコアの老化と個体の老化が相関するという考え方すらあるとのこと。
2019-11-27 12:40:41「核酸ダイナミクス15」核膜及びNPCを含む核膜上のタンパク質などはオートファジーの標的となる。酵母で関連が最初に指摘されたが、哺乳類の細胞でも、DNAを標的とするような毒物や発がん誘発などによって核膜上にブレブが出現し、同時にラミンBのオートファジー依存性の分解が起こる。
2019-11-27 12:44:51「核酸ダイナミクス16」こうした、発がん誘発による特異的な核へのオートファジーは傷害を受けた染色体の除去につながるなど、癌抑制の機能を持つと考えられる。
2019-11-27 12:46:20物理的外力への対応のための核膜リモデリング
「核酸ダイナミクス17」ここからは核膜の物理的外力への応答のためのリモデリングの話。組織の剛性は構成する細胞の核膜の固さにも反映される。具体的には固い組織ではラミンA/Cが多く、ラミンBが少なめである。
2019-11-27 12:53:47「核酸ダイナミクス18」(論文から離れて)私がこの業界に入ったころ、転写因子の研究をテーマとしてもらった。タンパク質である転写因子を取ってくるには核抽出液が必要で、その抽出法のプロトコールを教わった(自分ではやってない)。その時上司が「肝臓の核は固い」と。
2019-11-27 12:57:38「核酸ダイナミクス19」(論文から離れて)しかし、今GeneCardで見てみると白血球ではLMNAの発現は低いが(後述)、肝臓はどちらかというとやや低め。動物種が違うからかもしれない。genecards.org/cgi-bin/carddi…
2019-11-27 12:58:59