核膜ダイナミクスと疾患についての論文紹介

Nature Review Molecular cell biology誌に掲載されたMechanisms and functions of nuclear envelope remodelingという総説について紹介した一連のツイートのまとめです。この十数年で大きく進歩した領域で核膜が小胞体と裏打ちタンパク質で構成されていること、細胞分裂の時の動態、細胞分化との関連がわかりやすく解説されています。
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論文そのもののまとめ

Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス84」まとめ。最近の知見として注目されるのは核膜の破綻の後の修復過程、核膜のオートファジー、さらにはRNP顆粒の出芽過程などが重要である(正直この論文読むまで一つも知りませんでした)。NPCの核膜への挿入の機構はいまだ不明な点があるが、ここにも核膜リモデリング過程が必須

2019-12-08 14:01:08
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス85」これらの核膜の動態変化の過程に共通する分子機構にはどんなものがあるのか?例えば有糸分裂の初期に核膜内側のタンパク質のリン酸化による分解過程やESCRT-IIIによる核膜の修復(DNAで言えばトポイソメラーゼのような機能を持っていると理解)は共通して起こっていると思える。

2019-12-08 14:04:01
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス86」もしかしたらNPCの形成にもRNP顆粒やヘルペスウイルスの分泌のような分子過程が関連しているかもしれない。例えば脂質の構成成分の変化がこうしたダイナミックな過程に必要なのかもよくわかっていない。いったいどのようにして脂質膜成分の変形などが制御されるのかも不明。

2019-12-08 14:06:34
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス87」ESCRT-IIIがどのように制御され、ほかの分子の相互作用の有無なども不明である。今後注目なのは細胞系譜特異的な発現を示す核膜タンパク質の機能や制御である。これらの分子機構が解明されれば核内クロマチンの三次元的制御と遺伝子発現、細胞分化などが統合される。

2019-12-08 14:09:17

核膜ダイナミクスと疾患ーChromothripsisまで

Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス88」ここまでで論文本文の紹介は終了。さて、この論文をここまでねちっこく読んできたかだが、実はこの論文のBOX2に記載のある、Chromothripsisについての原著論文を読もうと思って挫折したことが理由。以下、BOX2で端折ってきたこの点について追加記載。

2019-12-08 14:18:57
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス89」核膜タンパク質の遺伝子変異は各種の疾病を引き起こす。Nuclear Emvelopathyと総称される。前述の筋ジストロフィーでは核そのものの剛性に加えて遺伝子のエピジェネティックな変化にも関連していることが示されている。

2019-12-08 14:23:00
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス90」さらにラミンA前駆体がラミンAにプロセッシングされる過程に必須の亜鉛プロテアーゼZMPSTE24の機能欠損はrestrictive dermopathyと呼ばれる病態を起こし、致死的である。

2019-12-08 14:27:10
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス91」また、ラミンAのフェルネシル化が固定化して核膜に蓄積してしまう優性の変異(この変異ラミンAをprogeninと呼ぶが)は早老症候群の一つであるHutchinson-Guilford症候群を起こす。この疾病の患者は機械的ストレスのかかる臓器、例えば心血管系、骨軟骨に異常をきたす。

2019-12-08 14:30:36
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス92」このHutchinson-Guilford症候群の患者の細胞の核の形態、ヘテロクロマチン状態、レドックス恒常性に異常をきたす。これはNRF2の発現がprogeninによって抑制されてしまうことに関連があるとされる。酸化ストレス応答が下がることで、DNA修復過程がより重要になるが(続く)

2019-12-08 14:34:48
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス93」このDNA修復過程もprogeninによるSIRT6の発現抑制によって障害されることが早老の原因である。このラミンAと相互作用する核膜タンパク質BAFの劣性変異のホモ個体は、この疾患と類似の病態を示す。

2019-12-08 14:37:46
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス94」有糸分裂の際に染色体の分離に失敗すると、いわゆるmicronucleusが形成される。このmicronucleusにおける核膜の統合性の破綻はDNA複製が障害されたり、DNA修復が欠損し、癌化の原因になりうる。

2019-12-08 14:41:12
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス95」micronucleiにはNPCが少なく、核からのエクスポートも悪く、DNA複製が遅延し、親核と同期しなくなる。こうしたことが次回の有糸分裂に際し、染色体の破断などを引き起こす。

2019-12-08 14:43:46
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス96」さらにmicronucleusにおいては核膜の再生ができず、DNAが細胞質内にむき出しになることでDouble strand breakなどを引き起こしてさらに状況が悪くなる。この結果DNAがランダムにend joiningする。これがChromothripsisの原因となっている。

2019-12-08 14:45:49
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス97」こうしたカタストロフィックな変化は細胞にとって生存に不利な結果を招くことが多いが、まれに増殖に有利な形質を与え、より悪性化したがん細胞として生まれ変わりうる。

2019-12-08 14:48:02
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