核膜ダイナミクスと疾患についての論文紹介

Nature Review Molecular cell biology誌に掲載されたMechanisms and functions of nuclear envelope remodelingという総説について紹介した一連のツイートのまとめです。この十数年で大きく進歩した領域で核膜が小胞体と裏打ちタンパク質で構成されていること、細胞分裂の時の動態、細胞分化との関連がわかりやすく解説されています。
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Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス60」ウイルス由来のタンパク質がNuclear egress complex(NEC)が6角形にラティス構造を作って取り込まれる。実はその後、核外膜と融合するなどが必要だが、その仕組みはよくわかっていない。

2019-12-01 14:04:15
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス61」実はこのヘルペスウイルスの細胞内への出芽は本来はRNAとタンパク質の複合体を核内に吐き出す機能をハイジャックしている。ショウジョウバエの神経筋接合部の形成に際して後シナプス筋細胞核でのRNP顆粒の分泌の際に使われる機構である。

2019-12-01 14:23:38
Jun Yasuda @jyasuda1

「核酸ダイナミクス62」驚いたのはここからで、シナプス前刺激に際し、WntレセプターであるFrizzled2の一部が核に移行し核内のRNP顆粒に結合する。このRNP顆粒には後シナプスタンパク質をコードするmRNAが含まれており、核の内膜周辺に局在する。ここからちょっとお休み

2019-12-01 14:37:16
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス63」再開します。実はヘルペスウイルスの核外移行とこのRNA-タンパク質複合体の核外移行は共通の分子機構を使っている。torsinと呼ばれるAAA-ATPaseのファミリーである。ただ、RNA-タンパク質複合体の知見はハエでの話であり、ヘルペスは当然ながら哺乳類細胞のはず。

2019-12-06 14:21:31
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス64」TorsinのATPase活性の存在しない変異によって、ハエの核内膜から核膜辺縁の空間(小胞体の内腔)に向かってRNPを含んだ小包が飛び出してきている(=つまりは分泌される途中で止まってしまう)。この小包と核内膜の境目には電顕上電子密度が濃く見える襟みたいな構造がある。

2019-12-06 14:33:11
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス65」ハエでこのTorsinを阻害してやるとこうした核周縁のスペースにRNPが飛び出してきて止まってしまい、後シナプスサイトへの重要なmRNAが配送されないという障害が発生する。つまり、TorsinはRNP顆粒が核を出ていく際に核内膜に小胞として飛び出した後の「切断」に必須ということ。

2019-12-06 14:37:07
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス66」このtorsinタンパク質はヒトでは遺伝性ジストニア(筋肉の不随意運動や硬直、けいれんをきたす疾病)の原因遺伝子であり、脳で発現が高い。この遺伝子のKOマウスでは神経細胞で核膜の小胞体腔にRNPが出芽・蓄積するようだ。

2019-12-06 15:48:49
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス67」TOR1Aの条件付きKOマウスなどで、核膜の陥凹にユビキチン及びユビキチンリガーゼが集積することも知られている。NPCを通り抜けられない大きな複合体が核膜を通過するということが生理的に非常に重要であり、この過程をつかさどるtorsinタンパク質の生理学的役割の解明が待たれる

2019-12-06 15:56:33

核膜リモデリングと細胞分化(筋線維、好中球、精子を例に)

Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス68」細胞分化の過程で、ヘテロクロマチンとユークロマチンの分離が進行し、ヘテロクロマチンは核の辺縁側に集積してくる。このヘテロクロマチンの各辺縁への集積はラミンBレセプター(LBR)及びラミンA/Cという2つの主要な核内膜への係留タンパク質が連続的に発現することが大事。

2019-12-06 16:02:28
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス69」このヘテロクロマチンの核辺縁集積と並行して、領域内にlamina-associated domainsを持つ遺伝子のうち、組織特異的発現を示すものが最終分化の過程で核ラミナから解放され、一方で多能性に関する遺伝子群が発現抑制されlamina-associated domainsに取り込まれていく。

2019-12-06 16:08:23
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス70」このlamina-associated domainsはクロマチンの中の一領域である。この辺の記載が参考になると思う。en.wikipedia.org/wiki/Topologic…

2019-12-06 16:10:07
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス71」この核辺縁でのクロマチンの再編成と核膜上のタンパク質の再編成は調和しながら進行する。例えば夜行性の哺乳類の網膜の杆体細胞では網膜における光の減弱を防ぐためにLBRとラミンA/Cの発現を低下させ、ヘテロクロマチンが核の内側に分布するようになる(と読み取ったが)。

2019-12-06 16:16:57
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス72」ここからは筋分化の話。おじさんにはMyoDという転写因子ですべて決まる、みたいなお話が懐かしいが、一切出てこない。

2019-12-06 16:43:08
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス73」筋分化は核膜に分布するタンパク質の発現亢進によって開始される。LAP2, emerin, MAN1ドメインタンパク質(LEM)の一種であるemerinに加えてLEMD2、筋肉に特異的に発現する複数の核膜タンパク質である。ちょっとお休み

2019-12-06 16:47:22
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス74」筋分化に際してのクロマチン領域の核辺縁部への係留にはユビキタスに発現しているemerinやLEMD2の他に筋肉に特異的に発現するNET39およびTMEM38A, WFS1が関与する。このクロマチン領域の係留と筋細胞前駆体細胞の増殖に関する遺伝子の抑制とが同期する。

2019-12-08 13:16:00
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス75」筋線維は細胞が癒合して合胞体となり、細胞核は合胞体の辺縁に分布する。特に神経筋接合部付近に分布する筋細胞の核は後シナプスで必要なたんぱく質を発現するが、この時に先に説明したRNA-タンパク質複合体が核から小胞輸送で分泌される過程を経る。

2019-12-08 13:20:19
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス76」この、筋分化における核膜タンパク質の役割が注目されたのはこれらをコードする遺伝子が、筋ジストロフィー症の原因遺伝子(例:LMNAやemerin)であったから。emerinはEmery-Dryfuss musclar dystrophyの原因遺伝子。

2019-12-08 13:23:53
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス77」この筋ジストロフィー症状は筋肉組織内にある筋芽細胞(myoblast)が組織損傷を埋めるために増殖後にきちんと筋線維に分化する(この過程をつかさどるのがRBと前述のMYOD)ことが出来ないことによる。

2019-12-08 13:28:08
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス78」ラミンAのKOマウスでは合胞体での核の辺縁への分布、特に神経筋接合部付近への細胞核の分布が阻害される。さらには神経線維の筋肉への供給( innervation)も阻害される。

2019-12-08 13:31:16
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス79」ここからは好中球の話。好中球は核が分葉することが知られている。幼若な好中球は分葉していないが、成熟すると分葉する。好中球は炎症が起こっているところに集合してくるが、その際に細胞外基質のような、固くて狭いところを通過しなければならない。

2019-12-08 13:33:09
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス80」好中球ではラミンA/Cの発現が極端に低く、細胞核が柔軟である。核の分葉もラミンAの低発現とラミンB受容体(LBR)の強発現のメルクマールとなっている。このLBRの発現が低いと核が分葉しないPelger-Huet anormalyという(良性の)病態を示す。

2019-12-08 13:37:59
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス81」ここからは精子形成の話。減数分裂の前期Iでは染色体のテロメア側が核膜内側の一か所に集まってmeiotic bouquetと呼ばれる構造を形成する。テロメアは核内膜のラミンC、SUN1タンパク質を介してKASH5タンパク質と結合し、これが先のdyneinを介して微小管にまで結合する。

2019-12-08 13:48:39
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス82」生殖細胞の核にはラミンAが存在しないそうだ。減数分裂では染色体がスピーディーに動かねばならず(100 nm/s)、固い核だと難しくなるからかもしれない。また、ラミンCの短いisoformが減数分裂時のテロメアのブリッジングには必須らしい。

2019-12-08 13:52:27
Jun Yasuda @jyasuda1

「核膜ダイナミクス83」核の変形の中でも極めて特異なのは精子の形成のステップである。2倍体の細胞の中では丸まって中心に存在するのに、精子では細胞の末端で伸長している。核膜に存在するタンパク質が精子形成に伴って局在を示す。アクロソーム側およびマンチェット側とで異なるタンパク質が集まる

2019-12-08 13:58:20
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