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前回の話
以下本編
◆◆◆◆ この物語はエルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジー。 今は七代目キージャの話。黒の繰り手。影の国の縫匠。 うわべは長躯の美女にしか見えないが男。乳房も大きければ尻も丸く、腰は括れているが男。配下である銀の小蜘蛛は闇の王子と讃える。
2019-12-23 21:11:27麗しき女奴隷に相応しき美服を作り上げんと、故郷にはない技能や素材を求めて時間も空間も飛び越え、ついに仕立屋として一人前の職人になった。 帰還した息子を、父親たる黒の料り手ダウバは嬉し笑いが止まらぬようすで迎えた。 「キージャ!よう帰っただ!オラ嬉しいだ!」
2019-12-23 21:14:22先祖たる東夷の戦士の血を引き、ともにずば抜けた丈の高さを持つ親子は、ひしと抱き合った。 だがキージャが曲線を帯びたしなやかな輪郭を持つのに対しダウバは縦ばかりか横にも広い。腕や脚や胴の太さも倍はありそうだ。 乙女の如き丈夫がせがめば巨漢はたやすく抱き上げる。
2019-12-23 21:16:41「父様のだっこじゃ!」 「んだ!」 「父様の匂いじゃ…父様…こなたがおらぬでさびしかったかや?」 「んだ。寂しかっただ」 「泣いたかや」 「がまんしただ」 「何じゃと!泣かなかったか!生意気じゃ!」 黒の繰り手は黒の料り手の頬をつまんでひっぱる。
2019-12-23 21:18:21「うぇふ…いでぇふぁ…ひゃんへんひてけりぇ」 「いいや勘弁せぬぞ!うりうり!」 「ひりぇぇだきーふぁ」 息子は奔放な女そのものの笑い声を上げて父親の猪首にかじりつき、接吻の雨を降らし、頬ずりをし、すんなりとした脚を樽のような胴にからめて甘える。
2019-12-23 21:20:58傍目には兄妹にも恋人にも見える二人だった。 「ダリュはどこじゃ?」 「湯治さ行っとるだ。火の山の巨人がたさ招待しただ。闇の女王の声だの半戦鬼の女の近衛だのついとるだ」 「あそこにも温泉が沸いたのかや!」 「んだ」 「こなたも行く!ダリュに会うのじゃ!父様も来るのじゃ」 「オラもだか」
2019-12-23 21:23:59影の国唯一の奴隷、囚われの上妖精、森の奥方たるダリューテは今や、独自の扈従を持っていた。 まず闇の女王の声なる称を持つ白子(アルビノ)の巫女の一団。漆黒の夜馬にまたがり、投槍を操り、黒い妖猫を使魔とする。遠く妖精の血を引きながら、闇の地の民と交わった黒い西方人の裔だ。
2019-12-23 21:27:26次に黒ずんだ膚に赤い目を持つ命知らずの半鬼の雌の群。純血の鬼より大柄で、耕作にはほとんど関心を持たず戦技を好み、緑の指ガミガミより古の戦士の太母ダハウを範とする。ダハウは戦士の原父ガウの姉にして妻であり、弟とは異なり黒の乗り手よりもその奴隷たる仙女によく仕えたという。
2019-12-23 21:34:54魔狼や蝙蝠、毒百足を飼い慣らし、純血の鬼より忍耐強く激しく厳しい騎士の修練をものともせず、暗黒語に加えて妖精の言葉で話す。 いずれも雄や繁殖には興味を示さず、ただ仙女の来臨と声掛かりを無上の歓びとする。
2019-12-23 21:38:55ダリューテは、かような取り巻きに何の教えも与えなかったが、しかし時々静かに話しかける上妖精の言葉の一句また一句を、崇拝の徒は貪るようにして覚え込んでいった。 奴隷の主人、影の国の太守たるダウバがいる前では、女達はおおっぴらに敬慕の念をあらわすのは控えていたが、しかし、
2019-12-23 21:43:13黒い西方人が影の国に蘇らせた旧主の称号は、熱烈な忠誠を示す近衛にとどまらず、燎原の火の如く闇の地に住まうさまざまな種族の女の間に広がりつつあった。純血の小鬼にも戦鬼にも巨鬼にも、東夷にも南寇にも、さすらいの民にも。
2019-12-23 21:49:36それはともかくとして火の山の温泉は黒小人やがらんどうの従者達、巨鬼の手によって立派に整えてあった。大雨や噴石にも耐える作りで、岩積みの館がそばに設えてある。霧と霜と火の巨人族の魔法もかかっていた。
2019-12-23 21:55:43妖精の奴隷は、盾持つ侍女等の大半を遠ざけ、一行のまとめ役である闇の女王の声のみを側に硫黄の匂いのする湯に手足を浮かばせていた。 「火の山は冷え行く」 「はい我が君」 「その呼び名はよせ。私はお前達の主ではない」 「お許しを」 「奴隷に過ぎぬのだ」 色素を欠いた乙女は静かに睫を伏せる。
2019-12-23 22:01:37「御心のままに」 儚げな面差しに似合わぬ鴉のようにしわがれた声だった。 だがかたわらの仙女は尖り耳を震わせて快く聞き入る。 「そなたの声は美しい」 「あなた様のお言葉こそ我が誇り」 「…いちいち大仰な娘だ」
2019-12-23 22:05:11不意にまだ幼なさの抜けきらない白猫が一匹、湯気を嫌そうに避けながら近づいてくると、にゃうにゃうと要領を得ない喋り方で、闇の女王の声に何かを伝える。 「ダウバ様が…それにキージャ様もお戻りになられたと。湯治場の外までいらして、拝謁の許しを求めておいでです」
2019-12-23 22:07:39白子の乙女が湯から上がると、妖精の奥方はそっと指を宙に遊ばせて歌うように呪文を唱える。あたりの蒸気が霧の被衣(かつぎ)となって陽射しに傷つきやすい青白い肌をおおった。 「光栄の極み…」 「もとよりここには巨人どもの魔法がかかっているが…そなたの肌は格別弱い故な…ゆけ」
2019-12-23 22:12:50入れ替わりに暗い膚をした親子がやってくる。一方は分厚い胸板を、一方はたわわな乳房を惜しげもなくさらして。 「ダリュ!ダリュ!今帰ったのじゃ!」 「キージャだど!キージャが戻ったど!」
2019-12-23 22:15:12「よく…帰ったな…」 それだけ言葉を絞り出すと、ダリューテは瞼をおろすと、両手で湯をすくって顔にかけるようにしてすっぽりと指で目の上あたりを覆う。 「入ってもよいのか?」 「飛び込んではなんねえだ。おめもだいぶおっきくなっただ」 「解っておるのじゃ!父様こそ入ったら溢れるのじゃ!」
2019-12-23 22:18:26「好きにせよ」 じゃぶじゃぶと漣が立ち、続いて明らかに湯嵩が増える。湯元から流れ込んでは出てゆく湯だまりの一つに漬かっているのだが、そこに巨岩でも落ちてきたかのようだ。 「そら溢れたではないか!」 「だども…オラ…まだ半分も漬かってねえだ…」 「ゆっくりじゃ!ゆっくり!」
2019-12-23 22:20:20