ウェルカム・トゥ・ネオサイタマ #4
「まずは感謝させてもらう、デッドムーン=サン」ニンジャスレイヤーが座敷から身を乗り出した。「だがオヌシはなぜあの場所へ」「決まってるさ……」デッドムーンは口角を少し上げた。「あいつには俺も色々と世話になった。ブザマに死んだと聞いて、どこの誰が殺ったのか見てやろうと思ってな」
2011-06-06 20:03:11彼がダッシュボードの「粗茶」ボタンを押すと助手席と座敷の専用口が開き、それぞれマッチャとオカキが振舞われた。「ゴユックリ」とマイコ音声がもてなす。「ま、そいつが死んでいたら、せいぜい骨でも拾ってやろうとね」
2011-06-06 20:12:17「御用!御用!」マッポ装甲ビークルが脇道から飛び出し、ネズミハヤイの真横につける。応援要請を受けたのだろう。「ああ、忘れてたな」デッドムーンはツマミをいじり、マッポ通信網のハッキングチャネルを開く。そして「ベンハ」ボタンを押した。即座にタイヤホイールに鋭利なスパイクが展開!
2011-06-06 20:19:24「さすがに揺れるからな」デッドムーンは呟く。そして装甲ビークルへタイヤを寄せる。ガリガリガリガリ!工業ダイヤモンド刃が装甲ビークルの側面下部をズタズタに傷つける!「アイエエエ!」装甲ビークルはグリップを失い、スピンしながら道路脇のコケシ看板にぶつかり白煙を吹き上げる!
2011-06-06 20:26:20「ワーオ」ナンシーは肩を竦めて無感情に呟き、マッチャを飲みながら、炎上する装甲ビークルを見送った。ビークルを避けそこなった追跡マッポビークルが一台、そこへ追突して炎上する。「なんでもアリね」「なんでもアリだぜ、オイラン=サン……」
2011-06-06 20:30:47「マッポの無線は」ニンジャスレイヤーが思い出したように訊いた。「何か言っていないか。ネオサイタマは今どうなっている。何が起きているかわかるか」ナンシーもデッドムーンを見た。デッドムーンは顎で遠方に見えるスゴイタカイビルを示す。トーチめいて燃えている「ああいうやつかい」「そうだ」
2011-06-06 20:37:25「さてね……まだ何も」デッドムーンは違法カキノタネを口に放り込み、噛み砕く。「普通に考えれば、ラオモト=サンに対する暴動ってとこか……考え易いのはそれだが、テレビ放送じゃそこまで行かないだろ。ありゃ笑えたがね……」
2011-06-06 20:43:40ナンシーは苦笑した。デッドムーンはそれへ意味ありげな一瞥を送る。ニンジャスレイヤーは低く言った。「ラオモト=サンの死がきっかけではないかと考える」「インガオホーと……フフフ」デッドムーンは暗く笑う。「ま、あんたはリアルタイムで見たわけだしな、その流れを……特等席で……」
2011-06-06 20:48:57ネズミハヤイは滑るように広道を突き進む。前方が夜明けめいて明るい。だが当然それは朝日ではない。炎だ。やがてその正体が、横転して道を塞ぎ炎上するトレーラーとわかる。「……ブッダファック」デッドムーンはダッシュボードの表示を見て毒づく。ロケットエンジン燃料は既にゼロ付近だ。
2011-06-06 21:06:51「ちょいと道を変えるぜ」デッドムーンはネズミハヤイをドリフトさせUターンを試みる。弾丸めいた速度で走行していたネズミハヤイにみるみる前方の横転トレーラーが近づくが、衝突寸前で見事に回避!そしてネズミハヤイは再加速……「ンアーッ!」
2011-06-06 21:12:27吹き飛んだヤモトは急ブレーキをかけた車に叩きつけられた。フロントガラスそしてボンネットにしたたか体を打ちつけ、ボン!と音が鳴るが、クロームシルバーの車体には傷ひとつつかない。ヤモトのニンジャ受け身もある程度ダメージを分散させる事に成功していた。彼女は素早く車両を飛び離れた。
2011-06-06 21:19:39「フーンク!」長大なカタナを打ち振り、ツカツカとインペイルメントが接近する。「この……」ヤモトは再び周囲にオリガミ・スリケンを浮遊させる。左の脇腹に受けた傷が痛む。ほんのかすり傷だが、すんでのところで致命傷となるところだった。オリガミのストックも殆ど残っていないのではなかろうか。
2011-06-06 21:23:58「ウウーン?」トレーラー荷台の上でヤモトとインペイルメントの戦闘を伺っていたモスキートが、突入してきた車両に興味を示した。「随分とまあヤバイ車だこと!武装霊柩車!」
2011-06-06 21:31:16「フーンク!」インペイルメントがカタナで攻撃!なんというリーチか!ヤモトは地面すれすれまでしゃがみ込んで斬撃を回避!「行け!」お返しとばかりに六発のオリガミ・スリケンを発射する。桜色の光がインペイルメントへ殺到!
2011-06-06 21:34:49「フーンク!」インペイルメントは恐るべき跳躍力でオリガミをジャンプ回避!急角度回避によりオリガミは追尾しきれず散開!インペイルメントはそのまま空中でカタナを構え縦回転!殺人風車めいた攻撃がヤモトを襲う!「フーンクッ!」「イヤーッ!」ヤモトは危うく側転してそれを回避!
2011-06-06 21:38:47「インペイルメント=サン!もう一度言うが、その娘はソウカイヤではないから、本来殺害対象ではないんだぞ?」モスキートがインペイルメントに言った。「フーンク!」「……だが君がヤモト=サンを殺るなら、せっかくだからその後で俺は女子高生血液を吸うだけ吸う!」なんたる下劣破廉恥な声援!
2011-06-06 21:44:10「ダメよ」ナンシーは座敷を振り返り先手を打った。「今のあなたじゃ、犬死にがせいぜいよ。関わる義理も無い!」「デッドムーン=サン、後ろのハッチを開けてくれ」「ニンジャスレイヤー=サン!」ナンシーは咎めた。ニンジャスレイヤーは静かに言った。「義理など無いが事態を確かめる機会ではある」
2011-06-06 21:59:26「こんな所でくたばる為にあなたの今までがあったわけじゃ無いでしょう」ナンシーは言った。ニンジャスレイヤーは冷静に、「大丈夫だ。すぐに済ませる」「そりゃ構わんが、俺はそう待たんぜ」デッドムーンが口を挟んだ。「俺の気は済んだ。支払いの話はオイラン=サンとすりゃいいしな」「構わん」
2011-06-06 22:10:56「フーンク!」インペイルメントは長大なカタナを構え、ヤモトをケバブめいて串刺しにすべく突進攻撃をかける!ウォンウォンウォン、その進行方向の武装霊柩車は攻撃の巻き添えを避けてバックした。ヤモトは刺突をかわしつつ身を翻して接近する。カタナ「ウバステ」による横斬撃!「イヤーッ!」
2011-06-06 22:27:30インペイルメントのカタナはその長さゆえ、懐に潜られれば戦力が減退する。オリガミ・スリケンによる攻撃をやめ、あえてカタナで勝負をかけた判断は正しい!「フーンク!」インペイルメントはカタナでの防御ができず、カタナ持たぬ手のブレーサーで受けざるを得ない!
2011-06-06 22:36:47「フーンク!」インペイルメントの左腕のブレーサーは桜色の軌跡を描くウバステの刃を受けて割れ砕けた!刃は骨の側まで達する!「フンーッ!」「イヤーッ!」ヤモトは刃を引き抜き、今度は首を刎ねに行く!
2011-06-06 22:44:49「フーンク!」だがインペイルメントもさる者!咄嗟に繰り出す長身のトーキックがヤモトを蹴り上げる!「ンアーッ!」体をくの字に折り吹き飛ぶヤモト!インペイルメントは両手でカタナを握り直す!そして空中のヤモトへ、振りかぶったカタナを打ち下ろす!回避不能!「フーンク!」サツバツ!
2011-06-06 22:53:17