「血液1滴でがん検査」には極めて重大な問題があります。現時点ではオススメ出来ません。

現時点では「血液1滴でがん検査」はオススメ出来ません。
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前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

何が言いたいかといえば、「検査前確率」(受ける人の何%が癌なのか)が大事ですよ、ということです。全く健康な人にやると「陽性的中率」が下がります。特にこの検査は本当は癌でないのに癌だと判定されるとすごく金銭的、肉体的、精神的に負担になります。

2020-01-15 17:58:22
前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

この点を理解してるなら受けても良いと思いますが、よく考えてください。 この検査を全く健康な若い人が受けることは個人的には全くお勧めしません。

2020-01-15 17:58:23
前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

リキッドバイオプシー自体はすごくポテンシャルのある検査で、病勢推移評価、オーダーメイド医療など応用がすごく期待されるものです。今後の発展を期待したいですね。

2020-01-15 17:58:23
前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

上のツイートの内容を表にしてみました。少しはわかりやすいでしょうか。 pic.twitter.com/qgQPpLQc4y

2020-01-15 21:38:00
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前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

この話、リアルデータで考えるともっと厳しいです。 国立がん研究センターのデータでは癌の粗罹患率は男性で0.8%、女性で0.6%ですね。 ganjoho.jp/reg_stat/stati… twitter.com/ent_univ_/stat…

2020-01-16 11:24:10
前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

尿や血液一滴で癌がわかる、などの検査を「リキッドバイオプシー」と言います。 この検査、健康な方を対象にする場合は注意が必要です。 癌の85%の方で陽性になる、健康な方での85%では陰性になる。 一見良さそうですよね。でも微妙です。続きで解説してみます。少し長いですがお付き合いください。 twitter.com/Yusuke_Tokyo/s…

2020-01-15 17:58:19
前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

悪い方の男性で考えます。 1000人で8人が癌ですね。 癌の人8人のうち、85%で陽性になるから7人は陽性、1人は陰性です。 癌でない人992人のうち、陽性(15%)が149人、陰性(85%)は843人です。

2020-01-16 11:24:18
前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

そうすると陽性の方が1000人のうち156人です。そのうち癌の人はわずかに7人。残りの149人は「癌の疑い」ですが癌ではありません。こんな検査を受けてみたいでしょうか?少なくとも僕は普通に健康な方には勧めませんね。

2020-01-16 11:24:19
前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

要するに全くランダムに健康な方が検査したら陽性(癌の疑い)と出ても実際に癌である確率は7/156、つまり4.5%です。残りの95.5%の方は胃カメラや大腸ファイバー、PET-CTなどいくら受けてもガンはありません。もちろんこれらの検査の合併症で健康を損なうことがあります。

2020-01-16 11:24:19
前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

ちなみに高齢になるともう少し癌の粗罹患率が上がりますが、そうなると「その癌で死なない癌」の診断が増えるということになりますのでその影響を考える必要も出てきます。ここの話までするとさらに難しくなるのでまたの機会に。。

2020-01-16 11:24:20
前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

ちなみにがんセンターのページは家庭医ゆ〜先生@yusukeo_1229 に教えていただきました。

2020-01-16 11:28:28
前田陽平👂ひまみみ👃耳鼻科 @ent_univ_

リアルデータでは粗罹患率が男性0.8%、女性0.6%ですので、陽性的中率(陽性のうち実際にがんである確率)は4.5%程度と思われます。 別でツイートしましたので良ければご覧ください。 twitter.com/ent_univ_/stat…

2020-01-16 11:30:40
名取宏(なとろむ) @NATROM

尿一滴、血液一滴で行うがん検査を「リキッドバイオプシー」と言います。現時点ではリキッドバイオプシーによるがん検診はおすすめしません。以下で解説しています[ toyokeizai.net/articles/-/296… ]。 pic.twitter.com/u3g1AeaOL3

2020-01-16 12:39:27
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名取宏(なとろむ) @NATROM

リキッドバイオプシーの欠点は、偽陽性が挙げられることが多いけど、検診の害は偽陽性だけではありません。技術革新で偽陽性をゼロにできたとしても(ゼロにはできないけど、仮にできたとして)、それでもリキッドバイオプシーによる検診の利益よりも害のほうが大きいなんてこともありえます。

2020-01-16 13:10:25
名取宏(なとろむ) @NATROM

そもそも、リキッドバイオプシーによるがん検診に利益があるかどうかは現段階では不明です(害は確実にある)。「偽陽性という害があるとしても、早期発見という利益も確かにある」という主張は誤りです。早期発見そのものは利益ではない。がん死亡率低下を伴わない「早期発見」はむしろ有害です。

2020-01-16 13:10:46
名取宏(なとろむ) @NATROM

本気で利益があるかどうかを検証したいのなら、ランダム化比較試験を行うべきです。検診を受けた群と受けない群で、がん死亡率に差があるかを調べるのです(もしくは、がん死亡に相当する重大かつ有害なアウトカムの発症率)。生存率や発見率ではだめです。

2020-01-16 13:11:23
名取宏(なとろむ) @NATROM

たぶん、今後、「○○の検査を受けて、がんの早期発見され、早めに治療を受けることができました。○○の検査に助けられました」という体験談が出てくるでしょう。一般の方々からの発信もあるでしょうし、もしかすると有名人のステマっぽいものもあるかもしれません。

2020-01-16 13:11:59
名取宏(なとろむ) @NATROM

そういう体験談は、○○の検査によるがん検診の有効性の証明にはなりません。むしろ、○○の検査のせいでひどい目にあった(不要な治療を受けた、がんの病悩期間が延びた、など)という可能性すらあります。気づかれていないだけで。

2020-01-16 13:12:19
名取宏(なとろむ) @NATROM

体験談に対しては批判しにくいので、業者・研究者がお金儲けをしたいだけのなら、「早期発見できてよかった」という体験談をたくさん出すようにして、費用がかかるわりにヤブヘビで否定的な結果が出かねないランダム化比較試験に消極的になります。そのへん注目。

2020-01-16 13:13:55