ノーホーマー・ノーサヴァイヴ #2(2020年再放送版)

公式note https://diehardtales.com/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サブスティテュートは闘志の炉に屈辱の火種をくべ続ける。野球試合での暗殺行為において彼以上に長けるニンジャはいない。真の暗殺とは、人々にそれを暗殺と悟らせぬものだ。八百長試合に応じない年俸5億超のプレイヤー、桟敷席の政府要人、アイドル、審判。彼の暗殺歴はネオサイタマ野球史だ。  23

2020-02-12 22:07:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼の名はサブスティテュート(代理選手)。スタジアムに上がる時、彼の名は、背格好は、その都度違う。偽装に守られた彼の正体を知るものは非常に少ない。闇社会の、さらに深淵、ニンジャの世界だ。彼はプロフェッショナルであり、無慈悲なチャンピオンであり、天才的プレイヤーであった。  24

2020-02-12 22:10:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

意図的な暴投球、ドライブ回転をかけたファールボール、選手や審判がターゲットであれば、殺人スライディング、ビーンボール……過失致死の罪を被るのは、すり替わりの元となる選手達。カネで黙らせ、人質で黙らせ、臭い飯を食わせる。あるいはドラム缶と共に深海魚の友達になってもらう。  25

2020-02-12 22:13:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、そんな彼のニューロンに、ここ数ヶ月で翳りが見えてきた。数値情報にはのぼらない、彼自身にのみわかる兆候だ。薬物、サイバネティクスの酷使。疑うべき要因は幾らもある。(潮時だ)暗殺対象のピッチャーがピッチャー返しで即死せず、二日間の昏睡状態を要した時、彼はそう結論づけた。 26

2020-02-12 22:16:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

仮にナラク・ニンジャが彼についてコメントを求められれば、その能力減退を、カラテ鍛錬に依らず安易なブーストに頼った為であると断じ、粗末な未熟者と罵る事だろう。ともあれ、サブスティテュートは引退に際し、十分な財産を確保しておかねばならぬと考えた。何らかのビッグディールの報酬を。  27

2020-02-12 22:19:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤクザコネクションを通じて顔見知りであった闇金融ニンジャのクルーエルが遺した予備データが、巡り巡ってサブスティテュートの元に流れて来たのは、まさに僥倖であった。ニンジャスレイヤーはアマクダリ・セクトの大敵。しかも並のニンジャでは歯が立たぬ巨大なキンボシだ。殺せる。野球ならば。 28

2020-02-12 22:22:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

計画は二重三重の確実性を備えていた。当初の予定では、そもそも彼は投球を行う必要すらなかった。一回表はアマクダリ。守備のニンジャスレイヤーにはキャッチャーがおらず、自動的に全投球が暴投となり敗北……楽な引退試合だ。しかし何らかのUNIXハッキング不具合により、その目論見は崩れた。  29

2020-02-12 22:25:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

次にビーンボールによる殺害。だが逆襲され兵隊が死んだ。ならば敬遠作戦。逆に彼自身が負傷する結果となった。名も知らぬ暗殺野球の運命神は、彼に安直な小細工を許さず、最後まで楽をさせまいとしているのであろう。それならば、それでよい。圧倒的優位の状況は変わらぬ。全力で叩き潰すのみだ。 30

2020-02-12 22:28:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「血流ブースト重点!」「ハートアタックします!」「エレクトリック・キック重点!」「3.2.1.キック!」「ウヌーッ!」ドクン!心臓の鼓動音が医療室に響き渡る。視界がホワイトアウトし、再び戻る。霞む視界を通して、彼は左のモニタを見た。天高く翔んだ打球を。  31

2020-02-12 22:31:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

パワリオワー!薄暗い球場に鳴り響くUNIXファンファーレ!彼は跳ね起きた。「俺は何分寝ていた!」首を傾げるヤクザ達に挟まれ、ドクターが息を呑む。「アイエッ!そんなでもありません」ドクターが後ずさった。「我々は換装作業を一生懸命滞りなく……」「馬鹿めが!状況を報告しろと言っている!」32

2020-02-12 22:34:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

進捗イメージ図画が示すのは「83%」!「言え!何点だッ!」「アイエエッ!我々のせいではありません!」「ダマラッシェー!クチゴタエスルナ!」「アイエエエエ!」ドクターは失禁!「何……点……なんだと……」パワリオワー!更にファンファーレ!……パワリオワー!……パワリオワー!  33

2020-02-12 22:37:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

飛翔する打球!ベースを順々に踏んでゆくニンジャスレイヤー!ピッチャーヤクザはこめかみから熱蒸気を発し、高速フォークボール(手前で落下する変化球)を投げる。ニンジャスレイヤーが地面のきわを掬い上げるようにバットを振り上げると、再び打球は天高く……パワリオワー!「108点……だと?」 34

2020-02-12 22:40:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「とにかく私のせいじゃありません!」ドクターが繰り返した。明らかにこの弁明は蛇足であり、サブスティテュートを激昂させるに十分であった。「イヤーッ!」「ア、アバーッ!?」調整中のサイバネアームがドクターの喉笛を捉え、アルミ缶を握るように容易く捻じり殺した。「早くしろ!貴様ら!」 35

2020-02-12 22:43:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「ハイヨロコンデー!」」白衣のクローンヤクザ達が一斉にドスの効いた応答を返し、高速タイピングを継続する。ドライバのインストール進捗がグングン進む。進む速度にはバラつきがあり、91%地点で長く止まった。サブスティテュートは苛立たしげに拳を握り、開く。感覚が徐々に鋭敏になる。 36

2020-02-12 22:46:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

身体感覚が噛み合うにつれ、彼の精神はクールダウンしてゆく。好ましいアトモスフィアだ。「結局、一度でも取りこぼせば奴の敗けだ。クローンヤクザ相手にイキがったところで、所詮は仮初めの快進撃よ」92%。「勝利条件すら見出せぬまま、コツコツ無駄な足掻きを積み上げておれ」94%……! 37

2020-02-12 22:49:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「ハァーッ……ハァーッ」ニンジャスレイヤーはボックス上でバットを地面に立て、寄りかかるように片膝をついた。彼は肩で息をしていた。いかなニンジャといえど、容赦なきフルスイング、あるいはランニングホームランの全力疾走を休みなく重ねていれば、ニンジャ持久力に綻びも生まれる。 38

2020-02-12 22:52:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ!」マウンド上ではピッチャーヤクザがセプクした。フォートレスの指示だ。「やれやれ、これで何人目だ?十五人?二十人?どうでもいいぜ、まったく話にならねえ。そう思うだろ、ニンジャスレイヤー=サン」「ハァーッ……ハァーッ……」「キツいか?キツいだろうなァ。独りだもんなァ」 39

2020-02-12 22:55:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マウンドに新たなピッチャーヤクザが立つ。「プレイ!」アマクダリ審判が胸の前で両手をクルクルと回し、無慈悲にニンジャスレイヤーに促した。「ヌゥーッ……」「ホラホラ。最初の威勢はどうしたよ?早くバットを構えろ。反則負けになっちまうぜ。俺はこうしてミットを構えているだけだがな……!」40

2020-02-12 22:58:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ナムサン!独りで野球するとはルール上の不利ばかりではない。ニンジャスレイヤーのスタミナはじわじわ削られつつあった。果たして打開策はあるのか?次回は明日9PMから!)

2020-02-12 23:02:00