鴨川沿いで友人が「をんなありけり」と語り出した…京大医学部を受けるはずが対岸の京都府立医科大に着いてしまい「心がはりて川をば徒にて渡りけり」

かちにて渡った話も最高ですが、靴底の話が気になって気になって
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bao @baobabustroll

大した勢力ではありません。出発時点の予報では、登山する2日目に西日本は台風の影響下で大荒れですが、我々の目的地の予報は晴れ時々曇り。協議の結果、我々はギリギリいけそうだと結論しました。ロープウェイの麓まで行こうそこで動かなければ雨の諏訪観光なり甲府観光でいいじゃないか。 pic.twitter.com/SKD11oE12c

2020-02-13 18:09:21
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友人は知らなかったのです。 私の渾名が「気象兵器」である事を。

2020-02-13 18:11:23
bao @baobabustroll

物心ついて以来大抵の夏イベントを台風でぶち壊して来た私にとってはこれしきの台風なぞ想定の範囲内、なんなら台風を見込んで飛行機での移動を避けたくらいなので余裕のよっちゃんです。直撃以外はかすり傷です。

2020-02-13 18:29:52
bao @baobabustroll

ちょっとした雨(豪雨)の中の山歩きを想定し、学部学生時代の趣味だったキノコ探しの為の低山徘徊で揃えたフルゴアテックス装備一式で臨んだ私に対し、友人の装備は…なんというか貧弱でした。特に足元が。登山靴というより…「運動靴?」「うん、私運動できる靴これしか持ってない」

2020-02-13 21:44:54
bao @baobabustroll

気象兵器とシティガールの不穏な旅の幕開けです。

2020-02-13 21:44:55
bao @baobabustroll

不安そうな私に友人は微笑みました「大丈夫、この靴で高校の時に富士山も登ったもの」つまり信頼と安心の15年モノです。 オッケー大丈夫、我々の目的は雲海であって山ではない。旅程の一番しんどいところはロープウェイという文明の利器がなんとかしてくれる大丈夫大丈夫。

2020-02-13 21:51:57
bao @baobabustroll

初日は中央線から山梨に入り、甲府に立ち寄り昼ご飯と信玄餅を食べて鹿皮印伝の店を覗き、更に茅野へと向かいました。甲府盆地の薄曇りのじっとりした暑さから一転、茅野は爽やかに晴れ、我々はロープウェイ行きのバスを待つまでの時間で茅野の街を見て歩く事にしました。

2020-02-13 22:02:22
bao @baobabustroll

御柱祭の柱を見ることができる公園で「これ乗って斜面を下るとか死しか感じない」的な感想を述べながらフラフラと歩いていたら、友人がふと立ち止まりました。 「靴底が剥がれた」 左の靴底の滑り止めのゴム層がクッションウレタン層からペロリと剥離して、哀れにも爪先部分で僅かに繋がる状態でした。

2020-02-13 22:02:23
bao @baobabustroll

爆笑です。爆笑しかありえません。 とりあえず2人で腹筋が崩壊するほど笑いました。知らない人が見たら気が違ったと思われたでしょう。

2020-02-13 22:04:05
bao @baobabustroll

ひとしきり笑い、我に返りました。「明日の山どうしよう」 そうです我々には明日山歩きが控えているのです、しかも多分雨天。 この時点で明日の天気予報は蓼科で曇りのち午後雨、山梨は朝から雨。 「茅野の駅で靴屋を探そう」

2020-02-13 22:07:38
bao @baobabustroll

結論から言うと靴屋は見つかりませんでした。茅野を舐めていました。日曜日の茅野はゴーストタウン(在住の方申し訳ありません)で、ショッピングモールらしきものに人影はなく、僅かに残る店も本日休店の文字。友人が歩くたびに「ペタンコペタンコ」と、ほぼ剥がれた靴底が滑稽な音を立てます。

2020-02-13 22:11:28
bao @baobabustroll

茅野駅前の小売業はなぜこれほど崩壊してしまったのか。おそらく郊外の大型ショッピングセンターに顧客を奪われて衰退したのでしょう。行きずりの観光客が無責任にものを申すことは出来ませんがこれが「均一化する地方都市」の現状が…などとぼんやり考えながら、ピンチです。

2020-02-13 22:17:54
bao @baobabustroll

途方にくれる我々がとりあえずバス停に向かおうと行く道に、なんということでしょう小さな雑貨店が。小学校が近いことを鑑みるに、おそらくこの店は子供達の文具や雑多な学用品、駄菓子などを扱うことで時代の波に取り残されながら生き延びているのだ!などと思いつつ

2020-02-13 22:26:53
bao @baobabustroll

天の助けと店に入ればそこは昭和でした。元々は手芸用品であったようで、吊り下げられた雑貨の奥にいつから置いてあるのかわからないボタンや刺繍糸の見本が貼り付けられた紙箱が所狭しと並んでいます。 店にふさわしい昭和感溢れる店主に接着剤があるかと訊ねると、多目的ボンドを出してくれました。

2020-02-13 22:26:54
bao @baobabustroll

友人はその多目的ボンドを手に取り裏書きされた接着剤できる対象素材などを改めると、頷きました。 「ドイツ製だ、これでいこう」 ドイツのぉぉ!科学力はぁぁ!世界一イイ! 謎の信頼です。何が友人にそこまでドイツを信じさせるのか全くわかりませんがオッケー大丈夫。ドイツ製だもん大丈夫大丈夫。 pic.twitter.com/FQsCV4J062

2020-02-13 22:33:56
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おそらくこの旅のキーアイテムであろう接着剤を手に入れ、我々はバス停にペタンコペタンコとたどり着きました。予定通りのバスに乗り「うおお!マジで長野には穀物は蕎麦しかないんだね!(失礼)」「レタス!レタスあるよ!」と車窓から見える畑に異郷を感じながら標高はどんどん上がって行きます。

2020-02-13 22:41:24
bao @baobabustroll

思い出すままにつらつら書いてるんですけど、これは果たして需要があるのか不安です。しかし私が楽しいので続けます。

2020-02-13 22:44:24
bao @baobabustroll

息子氏が寝ながら何やらウニャウニャ言い始めたので中断しますが続きます。

2020-02-13 22:54:55
bao @baobabustroll

我々以外に客の居ないバスの車内ではしゃぎながら、意識はやはり靴底に向かいます。「宿に着いたらまず靴底をどうにかしよう」2人の心は完全にシンクロしていました。 霧の中を1時間近く揺られてたどり着いた山麓駅はしっとり濡れ、眼下には夕陽に染まる壮麗な雲海が広がっていました。

2020-02-13 23:15:44
bao @baobabustroll

我々は霧ではなく雲の中を進んでいたのです。 つづら折りに登ってきた路は橙と白の柔らかな重なりの中に消え、遥か山々すら届かない高みに台風のもたらす紫が見えたと思います。 我々はしばらく無言で陽が傾くのを眺めていました。 「明日登れなくてももういいや」 本心からそう思いました。

2020-02-13 23:15:45
bao @baobabustroll

予約していたロッジは閑散としていました。明日入山予定だったチームがキャンセルしたのだそうで、急にできた暇を持て余したのか宿のご主人は我々に八ヶ岳への篤く深い愛と明日の天気が許すなら見てほしい見所を語ってくれましたが、靴底が気になって耳に入ってきません。

2020-02-13 23:20:02
bao @baobabustroll

ご主人に譲ってもらった新聞紙で霧と雲に濡れた靴をよく拭き、ドライヤーで乾かしドイツ製の接着剤を左の靴底にたっぷり塗り貼り付けて、念の為と右も確かめるとそちらも剥がれかけていました。 (この靴…ヤベェ) 見合わせるお互いの目がそう語っていました。

2020-02-13 23:24:05
bao @baobabustroll

右の靴にも処置を施し、より一層の圧着を期待してペットボトルを重石にしました。部屋に溢れる有機溶剤の臭いが不安を掻き立てます。夕飯を頂き、風呂を済ませ、祈りながら床につきました。 泊まった部屋に備え付けられた天窓は雲で塞がれて、星はチラとも見えませんでした。

2020-02-13 23:33:42
bao @baobabustroll

翌朝は不思議なほど晴れていました。 天気予報では富士山側の山梨での大雨を告げていますが、とにかく青空が見えました。昨日念入りに接着した靴底を引っ張ってみましたが、ぐらつく様子はありません。 「いける」 いくしかない。

2020-02-13 23:40:17
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