鴨川沿いで友人が「をんなありけり」と語り出した…京大医学部を受けるはずが対岸の京都府立医科大に着いてしまい「心がはりて川をば徒にて渡りけり」

かちにて渡った話も最高ですが、靴底の話が気になって気になって
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bao @baobabustroll

今日はここまで。 読んでくださってありがとうございます。続きます。大抵の伏線が回収されますご安心下さい。

2020-02-13 23:46:29
bao @baobabustroll

「やっぱり茶臼山に登って欲しいけど天気を見て無理をしないでね」ご主人の八ヶ岳愛に送り出された我々の泊まったロッジから山麓駅までのんびりと歩いて10分の登り坂、友人は一歩一歩確かめるように靴底に意識を集中しています。 「大丈夫、いけそう」 今、我々にはドイツの科学力がついています。

2020-02-14 08:32:37
bao @baobabustroll

空は雲がちですが隙間から覗く青空は深く、夏山にしか許されないたっぷり水を含んだのに清々しい朝の空気を胸いっぱいに吸い込みました。我々はこれから始発に乗り込み、標高2000m超まで一気にロープウェイで運ばれるのです。なんという楽で楽しい旅路でしょう。

2020-02-14 08:36:21
bao @baobabustroll

「人…居ないね」 期待にパンパンになりながら山麓駅に到着した我々に一抹の不安がよぎりました。 観光バスがずらりと並べるであろう広大な駐車場はがらんとして、その向こうに見えるロープウェイの駅に人影はありません。 運行状況を確認してから出かけたものの、ロープウェイまさかの運休?

2020-02-14 08:40:15
bao @baobabustroll

幸いなことにロープウェイは動いていました。人が居ないのはやはり天候がこれから下り坂である為でしょう。券売所で「てことはもしや貸切?貸切?」と、ぴょんぴょん飛び跳ねてはしゃぎ、意気揚々と乗り込んだロープウェイは本当に貸し切りでした。私と、友人と、係員さん、3人。 …3人。

2020-02-14 08:44:01
bao @baobabustroll

我々は2人ともATフィールドが強固なので、その場に1人でも知らない人が居ると借りて来た猫よりもおしとやかになります。若干がっかりしながら車内を見回すと、定員100人のロープウェイの床には奇妙なものが点々と積まれていました。コンクリートブロックをひと回り大きくしたようなものが3個1組。

2020-02-14 08:52:03
bao @baobabustroll

ATフィールド全開な我々と係員さんを載せたロープウェイの行先はいかに⁈ 床に積まれた塊の正体は⁈ 続きは昼休み(あれば)にお届けします。

2020-02-14 09:04:39
bao @baobabustroll

係員さんは快く教えてくれました。「ブロック1個で20Kg、全部で300Kg、このゴンドラは大きいから人があまり乗っていない時はこうやって重りを載せてバランスをとるんだよ」 なるほど、大人1人60Kgとして50人分の重りかと見回す私の隣で友人がぽつりと言いました。 「成る程、清盛公の身代わり石…」

2020-02-14 17:25:50
bao @baobabustroll

ここ経ヶ島と違うから! たしかに人の代わりに石を載せてる訳だけど、そうじゃないから! 積み上げたブロックが陰を深め、空気が一気に古びた黴気を帯びたように感じられます。 凄いぞ想像力。 微妙な空気を孕んで、ゴンドラは山肌を滑るように登って行きます。

2020-02-14 17:25:54
bao @baobabustroll

賽の積み石もとい重石ブロックを避けて進行方向の窓に寄り、ガラスに張り付けば、ダケカンバやブナでに覆われた明るい緑の林が惜しい程軽々と過ぎ去って行きます。 並び立つロープウェイの支柱のほど近く、木々の隙間に遊歩道と思しき道が見えました。

2020-02-14 17:39:34
bao @baobabustroll

みるみるうちに林は針葉樹へと様相を変え、山頂駅に到着しました。薄暗い駅舎を出ると、坪庭と名付けられた広々とした砂利と岩がちの平地が開け、その先にこんもりと緑の山々が佇んでいました。正面が2300m級の穏やかな山容、雨池山、右が2400mの縞枯山、後はよくわかりません。

2020-02-14 18:54:19
bao @baobabustroll

さてこれからどうすべきか。行く道に雲は僅かです。しかし、南の峰の更に向こうに紫がかった暗雲の気配が素人目にもわかりました。退くかゆくか。 「かえろ!雲海も見たし!」 我々の欲しいのは雲海なので、雨池山に未練などありません、まして宿のご主人推しの茶臼山などどれなのかすらわかりません。

2020-02-14 21:36:04
bao @baobabustroll

坪庭と呼ばれる一周30分ほどの平地をぐるりと巡り、徒歩で下山することにしました。先程ゴンドラの窓からちらりと見えたあの遊歩道が下山ルートだとわかりました。道迷いは勿論、滑落の心配もなさそうなルートです。これなら多少雨に振り込められても大丈夫でしょう。 そう、靴底さえ無事なら。

2020-02-14 21:44:14
bao @baobabustroll

標高2200mの眺望貸し切りにはしゃいだ我々の脳裏に靴底の事などもはや僅かも残っていません。意気揚々と坪庭の砂利道を歩み、小さな岩をよじ上って記念撮影をし、高山植物を眺め、朝ごはんにと持たされていたおにぎりを食べてから下山ルートに入りました。

2020-02-14 21:52:06
bao @baobabustroll

下山道は所々軽くぬかるみ、真新しい足跡がいくつもついていました。 どうやら、昨夜を山で過ごした人たちが一足先に下山したようです。しかも複数のグループです。縦走登山だとしても、下山には早い時間帯です。天候悪化を避けたのでしょう。やはり登らなくて正解だったと我々はうなずき合いました。

2020-02-14 22:02:33
bao @baobabustroll

徐々に道幅が狭くなったため、山路に慣れない友人を前にし、そのペースに合わせて私が追従することにしました。おしゃべりに花咲かせ、鳥を指差し野草に足を止める、気ままで楽しい下山です。シティガールながら友人の足取りに危なげはありません。 30分ほど下った頃だったと思います。

2020-02-14 22:12:12
bao @baobabustroll

靴底が落ちていました。

2020-02-14 22:12:30
bao @baobabustroll

正直に言いますと気にも留めませんでした。私にとっては靴底が道端に落ちていることはあまりに日常でした。先行する下山者の誰かの靴底だろうと。ああ、何故私はあの時友人に声を掛けなかったのか。 更に10分ほど下った岩場で、友人が突如立ち止まりました。 「靴底落とした」

2020-02-14 22:17:36
bao @baobabustroll

友人の足の裏から、まるっとつるっと靴底は消え失せていました。しかも左右。昨日あんなにたっぷり塗ったのに。ドイツの科学力、完全敗北です。

2020-02-14 22:21:09
bao @baobabustroll

爆笑です。とりあえず爆笑しかありえません。我々はひとしきり腹筋が割れんばかりに笑いました。 「友よ!さっきくっ靴底!落ちてたのお前のか!ブフォ!」「何故その時言わない⁉︎ブフォ!」「だって靴底ってよく落ちてるじゃん!ドゥフ!」「ブグフ!bao、君は落ちている靴底に慣れすぎだブフォ!」

2020-02-14 22:25:50
bao @baobabustroll

笑い過ぎて息が切れ、我に帰りました。 「下山、どうしよう」 どうしようもありません。今更取りに戻ったところで見つかる筈もなく、よしんば有ったところでこの状況では再接着はかないません。 「おりよう」 おりるしかない。

2020-02-14 22:30:55
bao @baobabustroll

靴底といっても、失ったのは滑り止めのラバー層だけです。ウレタン層はまだ残っており、友人の足は貧乏っちゃまの例のあの靴みたいになっているわけではありません。オッケー大丈夫、裸足じゃないならなんとかなる、大丈夫大丈夫。

2020-02-14 22:35:00
bao @baobabustroll

この話、この時点でまだ序盤ですが、眠気に耐え切れなくなったので今日はここまで。 おやすみなさい。良い夢を。

2020-02-14 22:46:03
bao @baobabustroll

なだらかな岩場のくだりを滑らないよう慎重に進みます。なにせもう滑り止めのラバーはないのです、どこでどう滑るのか全く予想がつきません。

2020-02-15 20:13:39
bao @baobabustroll

「ねぇ…」友人が不安げな声を上げました。「私の足音、変じゃない?」気がついてました、友人が足を踏みしめるたびに「プギューッポンッ!」という謎の音がするのです。

2020-02-15 20:46:50
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