鴨川沿いで友人が「をんなありけり」と語り出した…京大医学部を受けるはずが対岸の京都府立医科大に着いてしまい「心がはりて川をば徒にて渡りけり」
- elizabethoage
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友人は「カリカリしたキイロイモモ」を見つけたようで、実家への配送手続きをしています。一緒に学会に行くと必ず実家へのお土産配送を欠かさないマメな人間です。そういえば札幌の学会では「エンスイウニ…ミョウバンフシヨウ…」と呟きながら千歳空港を徘徊していました。
2020-02-21 19:15:29予定通りの時間内に希望するお土産をお互い全て調達し、我々は土産物で膨らんだ荷物を抱えて八王子行き特急あずさに乗り込んだのです。さようなら甲府、懐深い街、次こそは必ず堪能し切ってみせる‼︎
2020-02-21 19:21:36もう安心です、終わってしまえば旅のハプニングなど思い出の素敵なスパイス、車窓をますます激しく打つ雨音すら空調の効いた車内では名残の旅情です。 予定よりも3時間近く早く帰宅できる見込みなので、明日休み明けの仕事もバッチリです。 お喋り弾む我々を乗せたあずさは笹子駅に到着しました。
2020-02-21 19:47:09笹子が正式な停車駅なのかはわかりませんがいくらなんでも長過ぎる停車時間に車内がざわつき始めた頃、車内放送が流れました。 「猿橋駅の雨量計が基準値を超えたのでこの列車は運転を見合わせております」 MA★JI★DE⁉︎
2020-02-21 22:11:43暴風や大雪で電車を止めたり高波でフェリーを止めたことはありますが、豪雨で電車を止めるのは初体験です。電車って雨でも止まるんだ!新しい学びです。 むべなるかな、車外は視界を遮るほどの土砂降りです。 当然ですが、この雨が収まるまで運転再開の見込みもへったくれもありません。
2020-02-21 22:11:44空席が目立つとはいえ、車両内の20名を下らない人々がどよめきました。当然我々も不安でいっぱいです。まさか夜までこのまま?夜明かしもありえるのでしょうか? 「動かなかったら、明日の仕事どうしよう…」流石真面目な友人、発想が社畜です。私は(電車の床で寝るのは無理だ)とか考えていました。
2020-02-21 22:18:50使い慣れないスマホを繰って代替交通手段を検索し、笹子から新宿への高速バスをみつけました。今から頑張ればギリギリ間に合う時刻です。が、そもそも電車も止まろうかという雨の中で中央道が動いているのかどうかが未知数です。 「無理だ、座して待とう」
2020-02-21 22:25:22幸い笹子駅周辺にはホテルがいくつかあるようです。我々は相談して目安を設定しました。本日22時までに帰宅出来ない程運行停止が長引くようなら、ホテルに宿を取ろう。およそ17時がリミットです。 あと3時間弱。それまでは車内で籠城です。
2020-02-21 22:32:42最初のうちこそ、ホームに出てみたりもしましたが、雨に閉口して車内に逃げ戻ります。残念ながらトランプのひとつも持ち合わせていないため、我々は暇を持て余し始めました。
2020-02-21 23:09:37疲労と不安でお喋りも自然とトーンダウンです。何か娯楽は無いかと探し、旅の前夜に買ったばかりのiphone4sにお気に入りの曲をいくつか入れてきたことを思い出しました。 「平沢進で良ければ聴くかい?」 私は高校からの友人をひとり平沢沼に引き摺り込んだ事もあるお気に入りフォルダを解放しました。
2020-02-22 08:47:43冒頭の白虎野の娘の時点で既に友人の顔色はふるいません。庭師King、橋大工、夢の島思念公園、Nurse cafe と続き、Paradeの途中で友人はそっとイヤホンを外しました。「半音と転調と予測不可能なメロディラインが多すぎて吐きそうだ」バイオリンを嗜む人間には、この混沌宗教音楽は辛いようです。
2020-02-22 08:50:57一説によると、強い疲労と不安下に置かれた人間は判断力が鈍り、洗脳されやすくなるそうなのですが、今回はまだ落ち切っていなかったのか、友人の判断力が強靭なのか…
2020-02-22 09:27:34「すまん、君好みそうなミュージカルはまだ入れてないんだ」(今ならイケると思ったのに)という内心を秘めて白々しく慰める私に友人は微笑みます「もうちょっとメジャーなのはないかね?」この場合のメジャーは、人口に膾炙しているという意味ではなく長三和音を主として構成された曲という意味です。
2020-02-22 09:30:04長三和音を中学音楽の知識としては学びましたが、楽器を嗜まない私には判断しかねます。「コードがメジャーかどうかは私にはわからないが、少なくとも平沢進よりもメロディラインがシンプルな歌手ならあるよ」そう言って、私は谷山浩子詰め合わせフォルダを再生しました。
2020-02-22 09:35:17このフォルダは、前述した平沢沼に沈んだ友人からそのお返しとして贈られた選りすぐりです。 「谷山浩子、知らない人だ」「テルーの唄の作曲者だ」毛の一筋も嘘は言っていません。
2020-02-22 09:35:18まずは公約通りテルーの唄です、友人は「手蔦葵よりもこちらの歌い方の方が好みだ」と好感触です。続いて小さな魚は「こういう感じの人なんだね」笛吹きでは「ファンタジー調でこれはこれで」、偉大なる作曲家は「歌詞に引っかかるものを感じるが馴染みのある名前が嬉しいラフマニノフとか」
2020-02-22 16:56:06と笑っていましたが、途中から「語りが始まった…」とこちらを猜疑の目で見はじめました。よその子「暗い」まもるくん「待て」だんだん無言になります。 そして、伝説の谷山浩子滅亡三部作に入ったところで友人はそっとイヤホンを外しました。
2020-02-22 16:56:11「色々言いたいことはあるが」右手で目頭を押さえていいます。「君はどこからこういうものを見つけてくるんだ」 尤もな感想です。あからさまに何かの意図を感じさせる選曲と並べ方です。しかし、選んだのも並べたのも私ではありません。
2020-02-22 16:56:12高校からの友人に平沢進のお返しに貰ったのだという私の説明を聞きながら、友人はおもむろに両手で顔を覆いました。「それはお返しではなく仕返しだ、類は友を呼ぶとはこの事だ」 まったく、言葉には気をつけたまえ友よ、その言い方だと君もこっち側だぞ。
2020-02-22 16:56:13残念ながら谷山浩子布教も失敗しましたが、友人と音楽ユニットを組むと音楽性の違いで秒速空中分解することがわかったのは大変意義深い収穫です。友人はげっそりしています。新たな出会いとは時に自我を足したり削ったりする行為なのだなぁとその横顔を見ながら思いました。
2020-02-22 17:02:49