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前回の話
以下本編
◆◆◆◆ この物語はエルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジー。 略して #えるどれ ↑こちらのハッシュタグで元ネタになった各種ファンタジー雑談や、皆さんの描いて下さったイラストが見られますよ! ↓過去のまとめはこちらをどうぞ! togetter.com/t/%E3%81%88%E3…
2020-02-23 15:01:36さて、どんなものにも終わりはある。 家系の八代目はついに一族で可愛がっていたエルフの女奴隷を解放した。お礼参りをされないように覚めぬ眠りの魔法をかけて。 汚い。さすが影の国の黒の乗り手汚い。
2020-02-23 15:03:12しかしいささか遅きに失した。 奴隷制は悪。許されない習慣。 たとえ中世ファンタジー世界の社会が許しても、正義を司る神々が見逃すはずはない。 西の果ての至福の地を治める光の諸王は、エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系を成敗するために動き出していた。
2020-02-23 15:06:02光の諸王は「狭(はざま)の大地」と呼ぶ世界の中で、唯一正義が栄える北西域の各種族に呼びかけた。すなわち白い肌をした善き人間こと西方人、美しく気高い妖精すなわちエルフ、堅忍不抜の小人すなわちドワーフなどに。 今こそ野蛮にして邪悪な東方と南方の盟主、影の国を討つべき時と。
2020-02-23 15:14:05西方人の三大勢力はすぐさま招集に応じた。 古き王朝の血を引く海の都と寂し野の諸公。 他国の盛衰をよそに長きに渡り繁栄を保ってきた南朝。 新興の騎馬の国。 いずれも昔からの強敵である影の国を滅ぼす望みに燃えていた。
2020-02-23 15:16:58ドワーフは、以前影の国に領土を追われた山の下の国の君主が、亡命先である青き峰々から、精鋭たる「王の鉄鎚」を連れ、捲土重来を果たそうとしていた。 山の下の国の廃墟に跋扈する小鬼は、折悪しく強い統領を失ったばかりで、小人の軍勢の接近を知ると一匹残らず故郷を捨て、影の国に逃げ込んだ。
2020-02-23 15:21:48エルフもまた光の軍勢に参じようとしていた。 悠久の過去から、優雅にして不死なる種族こそが、神々の最も忠実なる使徒であり、恐れを知らぬ武勇と玄妙の魔法を以て、闇の軍勢との対決に先陣を切る戦士であったから。
2020-02-23 15:24:38だが尖り耳に高い鼻、切れ長の瞳をした民は、上古の頃に比べると数を減じていた。 多くが光の諸王のための戦いに倦み疲れ、安らぎを求めて西の果ての至福の地へと船出していったのだ。 最盛期には地上の星々の如く各地に栄えていた妖精郷もはや十指に収まるほどとなり、邑々をまとめる上王は不在。
2020-02-23 15:28:02光の諸王のために軍を興すには、妖精郷の長が合議してあらためて総大将を選ぶしかなかった。 かくして狭の大地に残るエルフ随一の博識と声望高き深き谷の主ロンドーのもとへ、ほかの妖精郷を治める貴顕と貴婦人とが集まってきた。
2020-02-23 15:30:56ロンドーは諸侯と鷹文でのやりとりを重ねたあと、深き谷の祭りの原に、太古に朽ちた巨樹の切り株を彫り上げた大円卓をしつらえ、同胞の訪れを待った。 最初に大鷲に乗って空からおりてきたのは、竜殺しのスラール。光の軍将として経験豊かな古つわもの。ロンドーとは旧友でもある。
2020-02-23 15:33:41「あなたが最初だと思っていましたよ。我が友」 「如何にも自分は緑の森のスラールである」 風の司(つかさ)と異名を持つ学哲は、雷の統(おさめ)とも呼ばれる戦士を迎える。
2020-02-23 15:38:00ロンドーはアキハヤテとあざなのある通り、万国を吹き渡るが如く巡っては見聞を広め、歴史と医療にも精通した多才の士であり、所領たる深き谷は小さくとも、内には西の果てより来た上妖精や、滅びた金銀細工の街である柊の郷から移り住んだ職人を抱え、豊かにして強い。
2020-02-23 15:45:54スラールはヤマオロシとあざなのある通り剛勇の士。世界の北西の背骨と言うべき霧けぶる峰々に修験を重ねる山妖精と、東の裾野に広がる緑の森に住む森妖精をいずれも束ねる王である。 ともに在りし日の光と闇の戦いには風の黄玉、雷の紫玉を帯びて加わり、それぞれ鬼屠り、竜殺しと敵から恐れられた。
2020-02-23 15:46:21スラールの治める緑の森は、先々王の御代に影の国との戦いで最前線となり、多くの犠牲を出したが、おかげで妖精族の間では声望高く、地位も武勲も総大将にふさわしい人物ではあった。 「緑の森に光の旗手があらわれた。この深き谷にも来たか」 「来ました。再び光の諸王が狭の大地に戻られるとか」
2020-02-23 15:48:57若かりし頃、一度神々に拝謁する栄誉に浴し、軍将としての働きに褒章を賜って晴れがましさに震えた二人ではあったが、なぜか今度は再臨を心から嘉(よみ)する風ではなかった。 「かくなっては…影の国の滅びは避けがたいぞ」 「はい。私もそう思います」
2020-02-23 15:51:41「戦こそは自分の喜び。だがよいのかロンドー。お主にとっては」 「私はいずれにせよ光の軍勢には加わりません」 「何と…」 「黒の料り手ダウバ、黒の渡り手オズロウの息子の禁があります。二度と影の国に足を踏み入れるなかれと」 「滅びた魔国の君主、魔王のか。従うのか」 「ええ」
2020-02-23 15:54:05続いて金の森の主ガラデナがやってきた。 緑の狩衣をまとい弓と剣を携え、とうてい領主とは思えぬ質素な軽装で。 さらに全身から精気を発する、赤みがかった膚の人間族らしき老剣豪と、同じ色の肌をしているが妖精族らしき少年少女が随伴している。 「よ。先生」 翁が若者のように気さくに挨拶する。
2020-02-23 15:59:17「アルソラ。それにアルゴルにアルカイン…皆さんも帰って来たのですね」 「先生ただいま!」 「ただいま!」 「おさるはどこ?」 尖り耳の子等はわっと先生と呼ぶ深き谷の主を囲む。
2020-02-23 16:01:10騒ぎを聞きつけたように、木々の間から、騎士のいでたちをした猿猴があらわれ、少年少女にちょっかいをかけ、たちまち武芸試合ごっこを始める。ふざけているが動きは鋭い。 「シルム。遊ぶなら向こうで」 毛むくじゃらのもののふは牙を剥いて笑うと、笑いさざめく尖り耳の仲間を連れ森の奥へ消える。
2020-02-23 16:03:50アルソラは子等が遠ざかるのを見守ってから、ゆっくり首を回すと尋ねる。 「で?俺はここにいていいのか?」 「ガラデナ様の後ろでおとなしくしているのであれば」 ロンドーが半ば瞼を伏せて応じる。 「へいへい。約束するぜ」 「よろしい」
2020-02-23 16:05:04金の森の主ガラデナはあざなをミドリユミとある通り、狭の大地随一の弓の名手であり、最も新しい妖精郷を拓いた人物。また小人を親友とし、人間を伴侶とする型破りさでも知られる。 「ロンドー。私ももはや会議で何かを訴えるつもりはありません。あなたの判断に委ねます」
2020-02-23 16:07:47