ドラゴン・ドージョー・リライズ:始動編 前編
その日以降、彼らの陣取りは、タブラ奏者の演奏の横になった。二人はサカンナ広場の一角で連日カラテを行った。細かな近接カラテのなかに差し挟まれる大掛かりなムーヴ。その静と動のダイナミズムが、素養の無い者にも真新しいものとして受け止められていた。 47
2020-02-28 23:20:00「やはり組手は良いものですね!」ユカノは正座して息を整えながら、表情を輝かせた。「相手が居る事で、出来る事の幅が広がりました」「うむ」フジキドは頷いた。「だが、まだ何も成し遂げておらぬ」彼は急ごしらえのチラシを持参してきた。 48
2020-02-28 23:23:00チラシには、「ドラゴン・ドージョー出張。サカンナ広場にて週3度。健康になり、精神が強くなる。気軽に参加できます」と書かれている。山の上のドージョー本陣は用いず、教えの場を広場に移し、厳しい修行についてもトーンを弱めた書き方である。ユカノはやや抵抗を感じたが、背に腹は代えられぬ。49
2020-02-28 23:26:00まずは門下生を。ニンジャにならずとも、教えの一端に触れてもらえれば、それは前進だ。「調子はどうだね」モチのおやじが差し入れを持ってきた。皆で談笑しながら食べた。タブラ奏者はネイサンといい、察しの通りバックパッカー旅行者で、出身はカナダ。磁気嵐の消滅によって海を越えてきたという。50
2020-02-28 23:29:00「やはり岡山県は神秘的な場所ですね。あなた方のようなカラテに出会えた」ネイサンは感心した。ユカノは答えた。「私達も昔からここに居たわけではなくて、ネオサイタマから……いえ、昔の私には……ええと……複雑な話なのです」苦笑し、「とにかく、かつてありし教えを蘇らせることができればと」51
2020-02-28 23:32:00「素敵ですね。とてもミスティックな……おや?」ネイサンは近づいて来る者に気づいた。大股でズカズカと向かってくる、背の高い若者だった。「ドケヨ!」「アイエエッ!」広場の市民を荒っぽく押し退けながら、若者はユカノたちのもとに至った。「ヨォ、アンタら最近、目立ってンじゃねえか!」 52
2020-02-28 23:35:00(後編は翌々日、日曜日のお昼、正午12:00から!早速あなたのスケジュール帳にニンジャオン!)
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