謎の叙情派エロマンガ家・室井至誠とは誰か

70年代末にアリス出版の自販機本(成人向の自動販売機専門雑誌)をはじめ『プレイコミック』(秋田書店)や『漫画サンデー』(実業之日本社)などのメジャー誌でも活動していた幻の叙情漫画家・室井至誠の足跡を追う。
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妖奇七郎・一休ちゃんでありんす @ikkyujapan

確かに中高生時代、こっそり自販機で買ったエロ本に室井至誠のマンガがよく出ていて不思議でした。 室井至誠のマンガはプレコミ等で知っていたけど、西岸良平が売れてきてその路線が出来なくなってエロ本で描いているのかなぁと当時思った物です。 x.com/pareorogas/sta…

2024-06-08 23:22:56
虫塚虫蔵@迷路'24 @pareorogas

室井至誠作品を単行本にするため集めているわけですが、今回は土曜出版新社(Do企画)の非シリーズ系グラフ誌に、なぜか合本形式でねじ込まれていた。自販機本の漫画は、読者のリビドーに訴えかける、いいかげんなバイオレンス劇画が多いのだが、室井至誠の漫画を読むと賢者タイムになってしまいそう。 pic.twitter.com/0TnJpowzeR

2024-06-08 11:29:05
劇画狂介 @sanryugekiga

実話誌や自販機本での埋め草のような作品群って、それを面白いとか世に知らしめたい等の再発見した人の熱意によって掘り起こされている側面がある。 三流劇画と比べても同時代的に注目されたり評価されたという痕跡は極めて少ない。

2024-06-10 15:40:12

素朴なタッチと色っぽさ! 謎のマンガ家・室井至誠の情報を求む!

叙情派エロマンガ家「室井至誠」を知る人は少ない。すでに40年以上消息が途絶えており、その活動期間も6年ほど。単行本も未刊で、読める機会も皆無だから当然だろう。誰からも見向きもされない幻の無名作家だが、色気と叙情性に富んだ作風は注目に値する。

室井は1976年に『漫画サンデー』でメジャーデビュー後、メジャー劇画誌『プレイコミック』などで活動したが、食いつめたのか自動販売機専門のエロ本(自販機本)に活動の場を移す。同時に作中の舞台を都市部から田舎に変更し、そこで自由に、伸びやかに、市井の人々の哀歓に満ちた情景を真正面から描き出した。そこで彼は数々の傑作を残したが、ほどなく業界を去った。

そんな室井至誠の作風についてざっくり説明すると、日本の風土に根ざした、ほんのりとした土着エロの香りが漂うものである。凡百のエロ劇画とも一線を画しており、かなり異質な部類だろう。第一印象は滝田ゆう・西岸良平・つげ義春のパチモン。第二印象は土の匂いがする田舎臭いマンガ。情緒あふれる滋味豊かな雰囲気だが、背景には国鉄の「ディスカバージャパン」キャンペーンの影響があることは明白だし、絵だけ切り取れば西岸良平に似てなくもない(その傾向は初期ほど顕著になる)。その意味で「独創性のない亜流作家(エピゴーネン)」と言われたらそれまでだ。某マンガ評論家からも「トカイ者がでっちあげた民話」(青林堂『ガロ』1979年10月号「読者サロン」所載)と一蹴されている。そもそも論、刺激だけを求める若い読者にとって印象に残らない作風だったことは想像に難くない。

だが、その素朴なタッチと独特の色っぽさは、いま見ても鮮烈かつ新鮮だ。没個性的、ないしエピゴーネン的ですらあるオールドスタイルだったからこそ、実に40年近い歳月をかけ、ある種の普遍性を獲得したようにも思える。「出版業界の最底辺」と呼ばれた自動販売機の片隅で、彼が描き出した、または信じようとした世界は、当時からしても過去のものであり、もはや影も形もない。完全なる幻想郷だ。しかし、それゆえに心に響く何かがある。

室井至誠の作品群が再評価され、いずれは単行本として出版されることを望んでいる。


【P.S.】これまで自販機本を数百冊集めてきたが、めったに、室井至誠に遭遇することはない。アリス出版、Do企画(=土曜出版新社)、八月書房(=群雄社出版)などの自販機本を手当たり次第にチェックすれば、ごくまれに室井至誠を見つけることができるが、それはほとんどガチャ同然だ。

なぜ遭遇しにくいかというと、室井は自販機本でもエロ写真主体の「グラフ誌」に作品を描いていたからだ。読み物やマンガが主体の「実話誌」に作品を描いた形跡は確認されていない。グラフ誌はエロ写真集のようなもので、マンガは添え物に過ぎない(もちろん、作者名表記も表紙に一切なく、すごく見つけにくい)。そもそもグラフ誌にマンガは本来不要なはずで、脈絡なく挿入される法則性もいまいちよくわからないのだが「雑誌の重量を調整するため」と目にした憶えがある。室井のマンガもその程度の扱いなのだ。もっとも、白黒ページは制約がなく、編集者の好みでユニークなタッチとセンスを持つマンガが掲載されることもあった。蛭子能収、桜沢エリカ、岡崎京子など後に著名になる漫画家がアリス出版でキャリアをスタートさせたことはよく知られているが、その中でも室井は地味で異質な存在だった。


【告知】現在、室井至誠作品の単行本化を自費出版で計画中です。彼の消息をご存知の方、掲載誌をお貸していただける方がいれば、虫塚虫蔵(@pareorogas)のDMまでご連絡ください。

リンク note(ノート) 自販機本のつげ義春? 室井至誠作品一覧|ナンブ寛永|note 古物市場で自販機本や実話誌を150冊ほど購入。おそらく同じ出どころで、これほどの量を買えたのは初めてだった。検品をしていくと、アリス出版(豊島区東池袋1-22-5 サンケエビル2F)、Do企画(千代田区神田駿河台2-1)、八月書房(新宿区高田馬場1-1-15)の自販機本のに室井至誠作品の掲載を確認できたので、ついでに記録も残しておこうと思う。 室井至誠に関しては2018年にアリス出版の自販機本(季節風Vol.3)で掲載を確認したのが初めての遭遇だった。単なるエロ写真ばかり掲載されている自販機本に、突如とし 1 user

室井至誠大発見(2018)

ナンブ寛永(南部堂) @kan_ei_sen

室井至誠「虹子街道⑨」「夏雷」 アリス出版 季節風Vol.4(自販機本のため発行年不明)掲載 pic.twitter.com/ucznRi4Or8

2018-09-30 23:54:28
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ナンブ寛永(南部堂) @kan_ei_sen

室井至誠って70後半か80頃の自販機本とかでも見たことあるような・・・ エロ特化の漫画ばかりの中でなぜかガロっぽい牧歌的な作風で浮いてるやつ、いやすごくいい雰囲気なんだけど

2018-01-30 23:02:26

(注)呉智英は『月刊漫画ガロ』1979年10月号「読者サロン」で「ビックコミック新人賞系の原田武明『藍島絵日記シリーズ』、漫画サンデー新人賞系の室井至誠の諸作品などは、トカイ者がでっちあげた民話である」と、わずかながら室井至誠について言及している(室井について直接言及がある記事は、これだけでした)。

事実、室井は『漫画サンデー』で1976年頃にプロデビューしており(漫画専門のデータベース「まんがseek」参照)その後は『プレイコミック』など秋田書店系列の青年誌でも活動するも、満足のいく仕事が出来なかったのか、金銭面の都合で仕事の軸足を他にも移そうとしたのか、吾妻ひでおと同様にアリス出版の自動販売機本に活動の場を移した。その後、自販機本業界は1980年をピークに衰退することになるが、その前後に室井は単行本を残すこともなく姿を消してしまい、その行方は未だ判然としていない。なお本人かは不明だが、埼玉県加須市に同姓同名の住人がいることがネットの電話帳「住所でポン!」で確認されている。

Guguガンギブソン @GG_Dragon_Head

#室井至誠 #ビニ本漫画 #偽薬 #あの人は今 読者欄での某評論家評は『〜でっちあげ〜』であり、劣化的後発作品としての『ジェネリック』扱いは不当だ。 一般読者がそう思ったかはさて置き、『偽薬』が妥当だ。 虫岡虫蔵氏の復刻活動は、「生薬の寄せ集めにスパイスとして魔味を見出す」様なモノかも… x.com/segawashin/sta…

2024-06-10 12:00:42
瀬川深 Segawa Shin @segawashin

>室井至誠作品を単行本にするため集めているわけですが 数ある復刻漫画の中でもさすがにコレは仰天してしまった。権利者にリーチできるんだろうか……とそれだけが心配。しかし、当時から既に「ジェネリック田舎情緒」みたいな評価はされてたのね。読者鋭いな。 x.com/pareorogas/sta…

2024-06-09 12:13:32
ナンブ寛永(南部堂) @kan_ei_sen

アリス出版の自販機本で見かける室井至誠なる漫画家 エロ成分強めなつげ義春っぽい、淡々とした田舎の痴話を描く作家だけど詳細は不明 pic.twitter.com/NDTXeHfhR1

2018-03-26 23:25:03
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ナンブ寛永(南部堂) @kan_ei_sen

アリス出版のどうみてもエロ写真集みたいな自販機本で唐突に載ってんだよねー 記事や写真に漫画もごっちゃまぜな雑誌に載ってりゃまだ探しやすそうなんだけど

2018-03-26 23:36:27
ナンブ寛永(南部堂) @kan_ei_sen

ググったら某オクに出品されてた劇画雑誌とかが引っ掛かるので、いちおうその手の雑誌にも載ってたのか

2018-03-26 23:52:29
RankerAC @ranker_ac

@kan_ei_sen 「畑中純」と「はるき悦巳」を足して二で割ったみたいな感じですね

2018-03-27 08:09:40
虫塚虫蔵@迷路'24 MGM2-41 日曜 1/14 板橋区立グリーンホール・6階601会議室 @pareorogas

@kan_ei_sen この方の漫画、読んでみたいですね。宜しければ、画像の自販機本の名前をお教え頂けないでしょうか?

2018-03-27 11:59:08
ナンブ寛永(南部堂) @kan_ei_sen

@dougasetumei こちらです アリス出版 少女のかほり 第四集 BD-セ0 pic.twitter.com/pHYlbr7SrL

2018-03-27 21:55:16
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虫塚虫蔵@迷路'24 MGM2-41 日曜 1/14 板橋区立グリーンホール・6階601会議室 @pareorogas

@kan_ei_sen 表紙ありがとうございます! 表紙からして、こんな漫画が載ってるとは到底想像出来ませんね(笑)これが自販機本クオリティなのでしょうが、そこが面白い所でもあります。

2018-03-27 22:02:05

※本筋とは関係ないですが、表紙モデルの小川恵子は寺山久美・篠塚ひろ美と並ぶ伝説的なビニ本アイドルです。

なぢ @nadhirin

グラビアページに掲載されている、この手の雑誌形式で発行された物はどれくらいあるのか、実は全く把握出来ていない。活動が終わった後の1981年春以後にも散発的に発行され続けていた可能性は高い…。 #小川恵子 #ビニ本 pic.twitter.com/PNI7qOjsPT

2016-07-28 12:13:06
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なぢ @nadhirin

こんな写真が掲載されてるんだけど、他では全く見たことがないのよね。未使用ネガからの転用だと思うんだよなぁ、一連の別写真は使われてるのを見たことがあるから #小川恵子 #ビニ本 pic.twitter.com/eQGiaKbvSp

2016-07-28 12:44:30
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なぢ @nadhirin

これが1980年12月末に発売された自販機本。撮影時期は11月末~12月初旬と推定。この時には吹き出物が無いんです。#ビニ本 #小川恵子 pic.twitter.com/OOkBjGMIgD

2019-08-13 21:56:58
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なぢ @nadhirin

この二冊が極初期、最初の撮影セッション(撮影した本人からお聞きした話なので間違いないw) ZOOM IN!が荒川土手、少女アリスが横浜の外人墓地だったとのこと。#ビニ本 #小川恵子 pic.twitter.com/gQ591oIaWT

2019-08-13 22:14:58
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