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ウジコ様は告げる 1章 ロスとロフィット

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【ウジコ様は告げる】1章★72  そんな思惑を知ってか知らずか少女は柔和に微笑み、僕の左手をやんわりと握り返した。 「はい! 不肖この私、”ウジコ様”を全力でフォローさせていただきます」  頼もしい限りと言うか、助けられっぱなしと言うか。おっと、そういえば。

2020-03-11 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★73 「考えてみれば、今まで君の名前を聞いてなかったね」 「そう言えば、自己紹介が遅れましたね……礼儀がなっていませんでした。大変申し訳ございません。深くお詫びいたします」 「いや。僕が自分の事ばかり気にしてたから、気にしなくてもいいんじゃないかな」

2020-03-11 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★74  だからそんなに腰を曲げないでほしい。こちらこそ申し訳ない気持ちになってくる。少女は僕をまっすぐに見つめて、自身の名前を告げた。 「私はディアーリと申します。呼び捨てにしてもらっても問題はありません」

2020-03-11 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★75  ……。 「どうかなさいましたか?」 「……それって、本名?」 「ええ。それが何か?」  僕の中で、失礼な疑問が浮かび始める。

2020-03-11 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★76 「……ここ、日本だよね?」 「はい」 「君、外人さん?」 「そうですね。土着か異邦かと聞かれましたら、私は異邦の地の生まれです」  そんな回りくどい聞き方をしたつもりはないのだけれど……。

2020-03-12 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★77 「ひょっとして、君は」 「ディアーリと仰ってください。余所余所しいと悲しくなってしまいます」 「……」  若干、遊ばれている気がした。 「……ディアーリはアルバイトで、補佐長ってのをやっているの? 確かに君みたいな人がやれば話題性はあるだろうし……」

2020-03-12 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★78  麗しのブロンドの髪を靡かせる着物姿の少女が補佐長として商店街を回るとなれば、客引きとしては申し分ないだろう。  しかし、そんな僕の疑問に珍しくディアーリは呆気にとられた表情をした。それほど的外れだったのだろうか。

2020-03-12 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★79 「何を仰るかと思えば。私と貴方様は片時も離れずに共に歩んできたではないですか。この祭事も、毎年恒例の行事です」 「え、えええええ!?」  的外れどころですむレベルではなかった。

2020-03-12 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★80  なんだ? なんなんだ? 記憶をなくした僕は絹のような美しい金髪を靡かせる美少女を常に侍らせていたというのか? 俄かに信じがたいぞ。

2020-03-13 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★81 「お口がポカリと開いてらっしゃいますね」 「あんまりにもショーゲキ的だったもので、つい。と、ところで仕事って一体、どんなことをするんだい?」  やや裏返った声で仕事の話をするしかできないほど冷静じゃなかったし、過去の自分がやや遠くに感じた。

2020-03-13 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★82 「仕事に関する話ですよね。これは先に内容を説明しようかと思いましたが、少し気が変わりました。ずっと座ってただ会話するだけというのも、お疲れになるでしょうしね」 「うむ?」 「あちらをご覧下さいませ」

2020-03-13 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★83  左手を向けた方向には一人の少年が立ち止まっていた。何か悩み事をしているようにみえる。これだけだったら僕はディアーリが指し示すものが何かは分からなかっただろう。最初、僕もソレを見たが気付かずに視線を流していた。

2020-03-13 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★84  しかし、ソレに気付いて視線をソレに戻し、異様な光景だと理解できたとき、ただただ目を見開くしかなかった。 「あ、あれは一体……」 「ウジコ様」  ディアーリはニッコリと微笑む。

2020-03-14 00:00:01
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【ウジコ様は告げる】1章★85 「仕事は実践して覚えるもの。物事は"実践"あるのみです。考えるよりも先にまず手を動かしましょうか」  とんだスパルタな付き人のようだった。実践も何も、これからどうするのかも分かっていないというのに手を動かせって、土台無理だろう。

2020-03-14 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★86 「……それにしたって、一体……アレは、なんなんだ?」  僕は乾いた声でそう呟くしか出来ず、その少年を遠巻きで眺めていた。  別にその少年自体はさして目を引く出で立ちではない。他の子供たちと同様に法被を身に纏っている、一参加者と言った具合だ。

2020-03-14 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★87  服装に関して特徴的なところを挙げるとすれば、緑色の法被だということぐらいだろうか。だが、あの少年の他に緑色の法被は勿論、極彩色な法被を着ている子供もいるので、どうやらファッションの違いというレベルで収まりそうである。彼たらしめる特徴とは言い難い。

2020-03-14 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★88  しかし、彼は違和感と異様さを文字通り纏っていた。巻き付いているというべきか。彼の周りにはグルグルと白黒の紐がウネウネと蠢いていて絡みついていたのだ。そして周りの客や店員は誰一人としてそれに気が付いている様子が無い。恐らく見えているのは僕らだけだ。

2020-03-15 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★89  一方、ディアーリはと言うと、場数を踏んでいると言わんばかりの物腰穏やかな振る舞いで、少年に近づこうとしていた。 「とにかく、まずは話しかけなければ始まりません。ウジコ様、参りましょうか」 「ちょ、ちょっと! 大丈夫なの!?」

2020-03-15 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★90  遠目から見ても紐状のモノはウネウネと怪しく動いている。正直、進んで近づきたいとは思わない。 「心配いりません。あの絡みついたものは"罪の意識"を目視化したものです。見えるだけで直接的な害はありません」

2020-03-15 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★91  そう言って、ディアーリはズイズイと少年のもとに近づいていく。多少警戒しつつも、僕もその後を追う。 「そこの貴方。少々よろしいでしょうか?」 「……ん? オレの事言ってるの?」  先ほどから俯いたままだった少年はディアーリの方へと顔を向けた。

2020-03-15 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★92  ブラウン色の髪を短く丸めている活発そうな少年だ。顔立ちから見るに十歳少し前ぐらいに思わせる幼さを帯びており、放課後に元気いっぱいに公園を跳ね回っていそうな小学生男児を彷彿とさせた。少々、生意気そうな性格にも見えてしまうが。

2020-03-16 00:00:01
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【ウジコ様は告げる】1章★93  そして遠巻きからは"罪の意識"に目が行きがちで分からなかったけれど、幼児向けの絵柄ではあるが、凛々しい犬のキャラクターがプリントされたシャツを法被の下に着こなしていた。  そんな彼は現在、眉間にシワを寄せて僕らをねめつけていた。

2020-03-16 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★94 「えーと、アンタ達ダレ? オレに何の用? 今忙しいんだけど」  子供ながらにして、随分と威圧感のある声音だった。明らかに僕らは警戒されていた。 「私はディアーリと申します。この方、”ウジコ様”の補佐をしています」

2020-03-16 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★95 「”ウジコ様”……? マジかよ、遂にオレのところにも来たのか!」  ウジコ様と聞いた途端、少年の表情は好転した。先ほどの剣呑とした雰囲気はどこへやら、目をキラキラさせてこちらを見上げてくる。なんとも分かり易い少年だ。

2020-03-16 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★96 「オレ、ロスっていうんだ! 早く"いつもの"やってくれよ! はやくはやく!」 「あー、"いつもの"ね。分かった分かった」  ……こちらとしては、その"いつもの"が分からないから、苦しい状況に置かれているわけだけど。

2020-03-17 00:00:00
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