- uchida_kawasaki
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「五輪チケット、規約上払い戻しは不可 コロナで中止なら」というニュースですが、掲載されている通りの規約なら払い戻し請求できるのが原則です。騙されないように。 headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200318-…
2020-03-18 11:49:47掲載されている規約は次の通りです。 「当法人が東京2020チケット規約に定められた義務を履行できなかった場合に、その原因が不可抗力による場合には、当法人はその不履行について責任を負いません」
2020-03-18 11:51:39まずこの規約のうち、「義務を履行できなかった‥原因が不可抗力による場合」については、コロナなので当てはまります。
2020-03-18 11:59:12次に「当法人はその不履行について責任を負いません」の意味ですが、義務を履行できなかったことについて、民法415条の債務不履行責任を負わない、という趣旨です。
2020-03-18 12:01:37民法415条は次の通り。 「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」
2020-03-18 12:04:21この条文は少しわかりにくいのですが、要するに相手の不注意による契約違反の場合には、相手方は契約違反から生じた損害の賠償を請求できるというものです。
2020-03-18 12:06:36先の記事は、上記の事を前提として、主催者には不注意がないので責任を負わないと述べていた訳です。
2020-03-18 12:08:11しかし、ここで問題になっているのは契約違反による損害です。具体的には、観戦のためホテル を予約していたが観戦できなくなったのでキャンセル料がかかったという場合です。この不利益については、先の規約からすれば確かに主催者には責任を追及できません。
2020-03-18 12:11:10しかし、チケット料の払い戻しは全く別です。これは、効力を失った契約の精算関係だからです。この場合には、民法536条(債務者主義の危険負担)が適用されます。
2020-03-18 12:16:00民法536条1項 「‥当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。」
2020-03-18 12:17:38この条文から分かる様に、契約当事者の双方に責任のない理由で義務を履行できなくなったとき(コロナはこれに当たりますよね)には、履行できなくなった義務の債務者(すなわち主催者)は、反対給付(すなわちチケット料)をもらう権利を有しないのです。
2020-03-18 12:21:09チケット料をもらう権利がないのに受けとっているのですから、当然に返還義務が生じます(根拠条文は民法703条以下の不当利得)。
2020-03-18 12:24:15もし主催者がチケット料を払い戻さないと強弁するとすれば、「確かに受け取ったけどもう手元に利益は何も残ってません、だから返せません。」と主張するしかありませんが(民法703条の「利益の存する限度」)、契約の精算の場合にはこの様な解釈は認めないのが通説です。
2020-03-18 12:31:29以上をまとめると、規約と民法の条文からは当然に返還義務が生じます。わかりやすく言えば、お互いのせいでない理由で義務を履行できなくなったんだから契約は無効、無効な契約に基づいて払ったお金は返してね、というだけの話です。
2020-03-18 12:38:03なお、付言しておきますと、大会組織委員会は法人ですので、消費者を相手方とするチケットの売買は、消費者契約法の適用を受ける消費者契約でもあります。チケット料の不返還は同法10条にも違反していると解されます。
2020-03-18 14:36:05