魔法少女めるら☆メラルダInsanity!!『極めて近く、限りなく遠い欲望に』

チャアリィ@ツクフェスID：8280 @char_jyuusan

１人と１匹の口論を遮るように響く、合成樹脂タイヤの摩擦音。 めるらの前に立ち塞がる形で、数台の車両が止まる。 白黒の塗装が施され、横長の赤ランプが外付けされた、公安仕様の民製大型改造バン。 ポリゼイ・ハイエースだ。 22

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ポリゼイ・ハイエースの側面ドアがスライドし、３人のアメフト装備警官が飛び出す。 そして３人がかりでめるらを有無を言わさず担ぎ上げ、ポリゼイ・ハイエースへ運び込む。 側面ドアが閉まり、急発進してその場を去る。 そして、辺りは市街の喧騒だけが残された。 23

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「チミが協力的で実に助かる」 「いやこれ拉致でしょ！」 後方座席にてアメフト装備警官３人に圧迫される姿勢で、助手席の署長を罵倒するめるら。 運転手は署長お付きの秘書だ。 24

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「しかし、我々にはあなたの力が必要なのです」 「知らないわよ！　あたしの平穏を返して！」 もがくめるらの傍らで、ペルぴょんは振動する携帯端末を見つめている。 「スマホの振動が止まらなくてバッテリーがやば……」 端末の振動が止み、バッテリー切れを示すビープ音が鳴る。 25

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「死んだペル。めるら、予備バッテリーを出すペル」 めるらはスティック状の予備バッテリーを握り、ペルぴょんの臀部のアビス目がけて突き出す。 「あっぶねぇペル！　めるらの私物ってこと忘れてないでペルか！？」 「うっさい！」 26

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空を切る拳の先に映る窓越しの風景。 そこに見えるのは、ピエロと数名の女子中学生。 「止まって」 めるらの一言に察した秘書はブレーキペダルを踏み込む。 急停車したポリゼイ・ハイエースのドアが開かれるなり、めるらは座席の側面を蹴り、飛び出していった。 27

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「……とまァ、トイプードルはこんな感じで出来上がりですな」 沸き上がる女子中学生達の黄色い歓声。中学校の校門前にて、ピエロによるバルーン・アート教室が行われているのだ。 「次はキミたちが作ってみようか。誰がやるかい？」 女子中学生達がこぞって手を上げる。 28

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「キミが早かったね。それではこれを」 ピエロはツイストバルーンをバックパックから伸びたチューブを差し込み、軽く膨らませてから手渡す。 女子中学生はピエロの指導に従い、ツイストバルーンをねじっていく。 それを見ていたピエロは突如小針を手にし、ツイストバルーンに向けた！ 29

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その時、辺りにめるらの声が響き渡った！ 「メルメラ・メラルダ・メラメラルー！」 "ＯＫ！　クマサン＝パンツ　ベストフィット！！" 30

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31 pic.twitter.com/TYsJQev903

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「ファー・ウィンド！」 女子中学生からピエロを遮るように、突風が駆ける。 ツイストバルーンは女子中学生の手を離れ、飛んでいく。 そしてピエロは突風を顔面に受け……マスクが剥ぎ取られた！ 32

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剥がされたピエロマスクの下から現れたのは、金髪のオールバック・ヘアーの男の顔。 「だ、誰だ、無礼者ッ！」 オールバック男は、電話ボックスの上にいる人影を睨みつける。 33

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それは、神無月めるらのもう一つの姿。 葉加内町の平和を守るため、怪人ジ・アーンに正義の鉄槌を下す、宿命の魔法少女。 「……魔法少女　めるら・メラルダ」 スカートの中のくまさんパンツがオーラを放ち輝く。 34

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「め　る　らッ……！」 オールバック男はこめかみに青筋を浮かべ、叫ぶ。 男の意識がめるらに向かっている間に、女子中学生達は物陰に隠れる。 35

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その時、数羽のカラスがしゃがれ声を上げ、路上に転がるツイストバルーンに群がった。 ツメやクチバシが食い込み、バルーンが弾ける！ すると……なんという事だろうか。 ツイストバルーンに群がった不運なカラス達は、痙攣して倒れたではないか！ 36

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「これは……風船を膨らますのにしびれガスを使っているペル！？」 「それであのコ達を動けなくして、誘拐するつもりだったんじゃない？」 オールバック男は図星を突かれたのか、歯ぎしりする。 37

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「破廉恥な悪行を企むジ・アーンめ！　その狼藉、読者が許しても、このあたしは許さないぞ！」 めるらは電話ボックスから校門の塀へと飛び駆け、メラルダ・ステックを手にピエロに飛びかかる。 オールバック男はＪ型ロッドで応戦し、打ち合う。 38

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「このバルンバイアン伯爵の理想を阻んだ罪は重いぞ、ガキが！」 「どうせロクでもない理想とかブッ潰すわそんなん！」 １合、２合、３合…… 空間を駆け、多方面から打ち込むめるらに対し、バルンバイアン伯爵はその場でロッドを振るう。 39

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「わたくしの！　理想を！　ロクでもないと！　言ったかッ！」 バルンバイアン伯爵は叫びと共にロッドを強振する。 これを躱せばチャンスだ……が、振りが早い！ めるらはやむを得ずステックでロッドを受け、つば競り合いとなる。 40

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交差する得物と得物の均衡のブレが火花を生み出す。 「女の子、だからって、力の押し合いでは、負けないんだから！」 メラルダ・ステックを握る手に力が入る。 41

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突如、バルンバイアン伯爵が不敵に笑う。 バックパックから伸びたチューブがうねり、めるらの顔面に切先を向ける！ 「危ないペル！」 チューブの先から魔合成パラライズ・ガスが噴出される！ 42

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しかし、めるらがステックを振り抜き、その反動で距離を取る方が早かった！ 「くそッ！　バレていたか！」 地団駄を踏むバルンバイアン伯爵に対し、めるらはすかさず呪文を唱える！ 「ファー・ウィンド！」 メラルダ・ステックが翠に輝き、バルンバイアン伯爵に向けて突風が襲う！ 43

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風そのものに殺傷力はない。しかし…… 「……グッ！」 突風に流された魔合成パラライズ・ガスを自ら吸引し、バルンバイアン伯爵は僅かに動きを鈍らせる。 それをめるらは見逃さない。 メラルダ・ステックに魔力が注ぎ込まれ、一段と輝きを強めていく。 44

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そして、メラルダ・ステックの輝きが最高潮に達し……めるらは叫ぶ！ 「メラルダ・イノセント・バースト！」 ジ・アーン目がけて、巨大な魔力の閃光が放たれる！ 45

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中学校校門前で起こる大きな爆発。一帯が黒い煙で包まれる。 やがて煙が散り、爆心地には……ビニール・フロートの残骸が残されていた。 「……逃げられた」 めるらは歯ぎしりする。 46