魔法少女めるら☆メラルダInsanity!!『極めて近く、限りなく遠い欲望に』

チャアリィ@ツクフェスID：8280 @char_jyuusan

🍃めるらからのお願い🩹 「世界に危機が訪れている今、そこのキミにお願いがあるの！ うがい、手洗いをしっかりやる！　不必要な外出を我慢する！ あたしと一緒に、怪人ジ・アーンをやっつけよう！」 「ジ・アーンと戦う、みんなが魔法少女ペル！」

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「わたくしの求める理想はね、近くにあるようで、どこにもない。 だから、わたくし自身がそれに至るしかない。 それをきっと導いてくれるのが、あなた方の痛み、そして恍惚。 さあ、ショータイムです。共に祈りましょう」 1

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魔法少女めるら☆メラルダInsanity!! 極めて近く、限りなく遠い欲望に -So Close, Yet So Far-

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薄暗い空に朱がにじみ、部活を終えた学生らが帰路につく頃。 そんな彼らを見下ろすかのような位置にある、葉加内町郊外の丘の上。 そこにぽつりと佇む屋敷の前に、十数名ほどの警官達が集まっている。 2

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警官達を取りまとめているのは、なんと赤子の男児だ。 警官の一人がその赤子に向かって敬礼し、状況を伝える。 「報告ありがとう。後は突入の合図まで待機だ」 指示を受けた警官は赤子に最敬礼し、他の警官達にハンドサインを送る。 3

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「この屋敷から、くぐもった破裂音と女性と思わしき悲鳴が、ねェ」 「署長、行方不明の女子中学生が相次いでいる事件にも関係あるかと」 「ま、そうだろうな」 署長と呼ばれた赤子の男児は、女性秘書の見立てに柔らかなアゴを上げる。4

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彼こそが葉加内町警察の署長だ。なお、れっきとした成年である。 『オレのマンマの乳はカルーア・ミルクってね』 それが、パブで嬢を誘う殺し文句だ。 5

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「んじゃ、突入すっぞ」 おしゃぶりの代わりに咥えた笛から、ハイオクターブの湿った音が乾いた空に鳴り響く。 呼吸が３つ終わらぬ間に屋敷の大扉がこじ開けられ、一団が雪崩れ込む。 6

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「ビンゴってやつか」 警官らは息を飲む。屋敷の広間には、行方不明になっていた女子中学生達が横たわっていたのだ。 すすり泣く者、放心状態の者、失禁し、意識を失っている者がいたが、命に別条がある者はいないようだ。 女子中学生以外に人の気配はない。屋敷の主は既に逃げたようである。 7

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だが、その現場は奇妙であった。 女子中学生らは大柄ではないにも関わらず、生地が広がったXXLサイズのTシャツを着用している。 そのうち何名かは負傷し、上半身にミミズ腫れができていた。 しかし、それ以外に暴行を受けた形跡はない。 8

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何より不可解なのが、床やTシャツの内側に散らばるタフテクス・バルーンの破片だ。 「もしかして、パノレがまた……？」 甲冑姿の警官が署長に問う。 この警官は"パルソニと馬事件"で共に事件を追い、投獄された仲だ。 9

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「いや、それはない」 署長は即座に否定する。「何故？」と驚く甲冑の警官。 あの事件はとある事情で有耶無耶となり、パノレは逮捕されていない。しかし…… 「ヤツの仕業なら、ここに居るのは小学生か幼稚園児だろうよ」 甲冑の警官は納得した。 10

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「それに、ヤツは今政治家として多忙だからな、こんなのにかまけてる暇はないはずだ。 『１年に最低１クール、"騎士槍とマスクス"の新作を作る事を義務付ける』という条例を通すとかなんとか」 「誰だ選挙でコイツを通した奴らは」 聞いた警官が思わず毒づく。 11

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「ジ・アーン」秘書がぽつりと呟く。署長の顔が瞬時に強張った。 「まさか、そんなはずはない！　アレは……」 驚く署長に、秘書は更に言葉で刺す。 「署長も分かっているはず。ジ・アーンの脅威は、決して消えてなどいないという事を」 12

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"ジ・アーン"とは、かつて葉加内町を震撼させた、人の深き欲望が呪いとなり変異した怪人の総称である。 だが、数ヶ月前にジ・アーンを統べる存在である"魔王ドゥゲーツ"が倒されて以降、ジ・アーンの出没は途絶えていた。 13

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「だが、我々には未だにあの怪人をどうにかする手段がないんだぞ」 怪人たるジ・アーンには、一般的な兵器の類が通用しない。 かつては対怪人兵器の研究が進められていたが、有効打が見出せぬまま凍結と相成ったのだ。 14

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ここで一つ疑問が浮かぶ。誰が葉加内町の平和を守っていたのか？ 「だから必要なのです。魔法少女の……彼女の力が」 聡明たる読者なら、既にお気づきではないだろうか？ 「度し難い奴をどうにかするには、度し難い奴ということか……」 15

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夕日を撫でるように轟く、女子中学生らを護送する公安車両のサイレン音。 そこに割り裂くように、町中のスピーカーから電子メロディによる童謡が鳴り響く。 『カラスが鳴くから帰りましょう』 16

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「ネオ新体操　Ｋ地区選考会女子中学生の部　次は選手番号１９番、神無月めるらの演技です」 肩あたりまで伸びたショートツインテールの少女が演技スペースの中央に立ち、 Ｊ－ＰＯＰのmidiアレンジをバックに舞い始める。 17

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「ここで色即是空スライド、大変綺麗な仕上がりです。素晴らしい！」 「鎌ヶ谷アカシック4連スピン！　女子中学生ながらこの技を決めてくるとは、信じられません！」 めるらが難度の高い運動をミスなくこなし、決めポーズを取るたびに会場が歓声に包まれる。 18

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曲もクライマックスに入り、会場の興奮も最高潮。 すると一転、めるらは不具合を起こしたポリゴンモデルじみた、非現実的な挙動を始める。 「あーっとゲッダンに逃げてしまった！　これはいけません！」 「振り付けに窮したのでしょうか。残念ですが大幅減点は免れられないでしょう」 19

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「なんであそこでゲッダンしたんでペルか」 「迸る熱いパトスに従ったら、つい」 閉会式が終わらぬ間に会場を去るめるらに呆れた声で問い詰めるのは、宙に浮いた兎のような生物だ。 20

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「いやでもね聞いてペルぴょん、あたしは界隈に変革をもたらそうと」 「物理法則を無視した動きをしてもドン引きされるだけペル！」 「それはアレよ、人類には早すぎるとかいう」 キキィキィィーーーーーーッ！ 21