【偶然の遠足】福間健二 #k2fact252

3月20日から29日まで。天沼陸橋のことは、太宰治が天沼周辺にいたころは、まだできていなくて、できると間もなく空襲で破壊され、戦後になって作りなおされた、ということを最近知り、それが頭にあった。ぼくは、一九五八年から一九六二年までいまは上荻となった関根町に住み、そのあとも中学と高校は杉並区内だったので、荻窪周辺には土地カンがある。で、その空間を、時間を行ったり来たりしながら、歩いてみたいと思った。『パラダイス・ロスト』公開の日から書いた。なかなか実際に行くことができず、8を書いてからようやく荻窪に行き、駅から四面道までを歩いた。 音楽は、半端に懐かしいTaffy McElroy の「The Heartbreak Kid」。 https://www.youtube.com/watch?v=st3RfivBuX0
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福間健二 @acasaazul

天沼陸橋。いいか、うそをつかない約束。ゆうぐれに見る力を突き刺す人に誘拐されながら成長して、彫刻刀を使った。空襲の夜も、心中の夏も、荻窪文化の座席で恋をすることそれは見ることそして叩くことだと知った午後も。清潔なタオル。とくに必要じゃない夢も見たけれど。(偶然の遠足1)#k2fact252

2020-03-20 12:36:34
福間健二 @acasaazul

関根橋。関根町はもうなくなった。ポケットの爆弾は使いそこなった。月明かりとわずかなお金で切り抜けた難局もいまは笑い話。きみは死ぬことにして待った。もう流れださない時間の化学変化。だれかがワンダフルワールド歌ってる。代わりはあるさ。ゼンプクジ川の機能など。(偶然の遠足2)#k2fact252

2020-03-21 15:15:11
福間健二 @acasaazul

宿町もいまは桃井四丁目。秀の湯、まだあるか。あるよ、炭酸泉の露天風呂があって昼間は青空、夜は星空を眺めることができる。銭湯大好きな人が楽しそうに教えてくれた。中島飛行機荻窪工場は、富士精密になり、プリンスになり、日産になり、いまは原っぱ公園。防災公園だ。(偶然の遠足3)#k2fact252

2020-03-22 13:08:41
福間健二 @acasaazul

富士精密の工場。裏手は雨が降るとぬかるむ荒地。埋まっている戦争を掘りかえす白い手が怖かった。空想の翼、だれかがくれるものだと思って、進まない幼年時代と少年時代。何まみれ、だとしたいのか。絵の具を混ぜるだけじゃなかったきみの写生。からみつく根っこを描いた。(偶然の遠足4)#k2fact252

2020-03-23 14:44:34
福間健二 @acasaazul

螺旋状に。なにかをきれいにする機械は自分が汚れていく。洗濯機とかね。片目の商人も、かな。病気を治す。自分が不調になっていく。ほら、この可愛い石。お守りにしたいけれど、何も書いてないカードに読む霊術の話。首吊る人が最後のやさしさを発揮する荻窪八幡の境内で。(偶然の遠足5)#k2fact252

2020-03-24 09:37:07
福間健二 @acasaazul

いい天気だけど、風がつめたい。幸運を呼ぶスカートはいてきたお姉さんたち、抗議しないのか。天使性だけでは通りぬけられない鉄条網による囲い込みに。日産になってからの、労働条件。どこかよりはマシだとか言っても、飲み込みたくなるなんてとんでもない話の、この石。(偶然の遠足6)#k2fact252

2020-03-25 12:06:08
福間健二 @acasaazul

ほんとうはどこを歩いているのか。新潟鉄工所の社宅がない。サカモトくんちのお菓子屋さんもチャー坊んちの運送屋さんもない。少年サンデーのスポーツマン金太郎は完全版で読めるけど、人と家は消える。消えても、八丁。どこから数えてなのかわからなくなっても、だ。(偶然の遠足7)#k2fact252

2020-03-26 18:28:03
福間健二 @acasaazul

いまは青い鳥クリーニングがある。書店タイトルもある。そこでオージさんとテンヨーさんとトークしたのは三年前。テンヨーさんの大きな文字は残っているが、彼はもういない。杉並公会堂で劉三姐を一緒に見た友もいない。なのに、四面道には二十六歳のダザイが立っている。(偶然の遠足8)#k2fact252

2020-03-27 09:17:02
福間健二 @acasaazul

運命なんて、ない。心中、盲腸炎、鎮痛剤中毒。隠したい過去の迷路に似た行く手も、つみかさなった偶然の産物だ。関根町の社宅から青木パン屋さんのある坂をのぼって西荻窪駅方面へ。駅をはさんで、西荻セントラル、西荻銀星。どっちが懐かしくても、晩年はこれからだ。(偶然の遠足9)#k2fact252

2020-03-28 12:07:38
福間健二 @acasaazul

西荻から吉祥寺方向に。店主が区議選に落ちた帽子屋さんは消えて忘日舎はまだない。一九五一年三月、朝鮮半島でアメリカが原爆を使いそうだというニュースが流れる夜空の下、鉄路に身を横たえる人。鳥になって飛んでいくお姉さんたちにやさしかった。脇役の鉄道員たちにも。(偶然の遠足10)#k2fact252

2020-03-29 10:19:51